1-4=目覚め
「なんてこと!!!」
ガタッという大きな音と共に座っていた椅子が倒れる。
辺りを見回すと
落ち着いた木をベースにした店内。
少しだけ高い椅子にしっかりとした作りのカウンター。
その奥には薄い目に笑みを浮かべた青年が立っていた。
「おはようございます」
青年が話しかけてくる。
「おはようございます」
咄嗟に返事をする私。
社会人としてのマナーである。
「よく寝れましたか?」
青年の問いかけにハッとなる。
寝ていた?
いつから?
なにか嫌な夢を見ていた気がするが・・・
うまく思い出せない。
「すごく嫌な夢を見ていた気がするわ」
確かに嫌な夢・・・という認識はあるのだが、、、
思いのほか気分は良好である。
「それはそれは・・・大変でしたね」
細い不気味な笑顔が少しだけ癪につく。
「あなた・・・私に何かした?」
「なにもしてませんよ?わたしはただ、お茶とお菓子・・・それと一時の時間を提供したに過ぎません」
私は小さく頷くと言葉を飲み込んだ。
「嫌な夢を見たはずなのに気分は落ち込んでないの・・・むしろ、少し清々しい感じもする」
「それはそれは・・・不思議なこともあるものですね」
「私ね・・・・・・」
不意に言葉を紡ぎ始めた私。
他人にしかも今日会ったばかりの人間に身のうち話をするなんて思っていなかった。
でも、話さずにはいられない。
そんな気すらしてしまった。