3-10=帰還
--うまい。
目を閉じ、コーヒーの味を噛み締める。
比較的、飲み慣れた飲み物のはずなのに
どこか新しい飲み慣れない雰囲気もある。
それはきっとあの器のせいなのかもしれない。
--しかし、悪くない。
目を閉じたまま器をコトリと置き、
その横にあるチョコレートを一欠片だけ手に取り、口に運ぶ。
--これまたうまい。
口の中に残るコーヒーの苦味にチョコレートの甘みが程よく溶けてお互いの味を引き立てている。
--ふう
一息ついて目を開ける。
そこに広がっていたの今はなき村の風景だった。
「--ありえない」
さっきまで私はコーヒーを飲んで一息ついていたところのはずだ。
それなのに何故?
土砂災害に合い、全て流されてしまった村の風景が鮮明に記憶と一切違わない状態で目の前に広がっていた。
「--そんなわけあるか!ありえない!!」
目の前の現実を受け入れられず、
私は歩き回った。
「家も駄菓子屋もバス停も全部元通りだ」
一通り見て回って分かったことは
頬に触れる風の心地良さ
手に触れる木々や家の壁、土
全てがリアルであるということ。
「--学校まで元通り」
私が最後に確認しに来たのは学校だった。
ボロボロの校舎に鉄棒やサッカーゴール
今にも崩れてしまいそうだがずっと使い続けている木造の朝礼台
全部が全部そのまんまだったのだ。
ただ一つおかしい事があった。
--どこを探しても村人が1人も見当たらないのだ




