2-12=告白
「それで飛び込んだのですか?」
長い間話を聞くだけだった青年が言葉を発した。
それに対して私はコクッと頷く。
電車の急ブレーキの音
間に合うわけがない
慌てふためく観客
何もしていないのに騒がしい
電車のライトはやたら明るく感じた。
轢かれる瞬間を私は鮮明に思えている。
激しい衝撃
体をバラバラにされる感じ
思い出したら涙が溢れてきた。
「私・・・死んじゃったんだ・・・」
「そうかも知れませんね」
「なんで・・・だろう・・・死にたいって・・・思ってた・・・はずなのに・・・なんで・・・こんなに・・・涙が・・・」
涙と戸惑いで上手く言葉が出てこない。
「死にたいと思うということはあなたが心のどこかでまだ生きたいと思っているということですよ」
青年は続けて言う。
「まだ、死にたいして抗っているからこそ[死にたい]という言葉が出でくるのではないかと、わたしは思います」
頭の中がぐちゃぐちゃで
涙が次から次へと溢れてきて
顔も頭もぐちゃぐちゃ
記憶の整理が追い付かない
「私は・・・死にたくない・・・」
かろうじて振り絞って出た一言であった。
視界が少しだけ歪んだ気がした。
青年がフフッと笑うと私の視界は完全にノイズに包まれていった。
最後に「またのお越しをお待ちしております」と言われたような気がしたが、しっかりと聞き取れた訳では無い。
ザザ
ザザーザ、ザザ
気がつくと駅のホームで膝を立てている私。
周りを取り囲む見知らぬ人々
各々「大丈夫?」とか「痛いところはない?」とか聞いてくる。
話を聞いてみると私は線路にフラフラと歩いていき、
線路の前で崩れ落ち、そのまま暫く動かなかったそうだ。
なぜそんなことになっているか分からない。
痛いところも特にない。
思い当たる節はない。
私は一体何をしていたのだろう?
改めて周りを見渡すとかなりの人が私を見ていた。
私はいたたまれない雰囲気になってしまい、
その場を全速力で逃げ出した。
«にゃー»という猫の鳴き声が聞こえた気がしたが、
構わず走り続けた。