13-6=黒刀
2人は思いのほか早く見つかった。
しかし、見つかった場所は普段、子供が出入りするような場所ではなかった。
そこは切り立った崖の先。
海の真ん中にポツリと存在する大きな岩。
その中に作られた祠の前だった。
「こんな所があるとは・・・どうやってここまで?」
「「クスス・・・クスス・・・」」
そう、子供がこんな所に来れるわけがないのだ。
崖からこの岩までは少し太いロープが〆縄のように括られているだけで道という道はない。
八雲のような力がなければ船でも出さない限り来ることは不可能なのだ。
「さあ、帰りましょう。
あなたがたのいる場所はここじゃない」
手を差し出す八雲。
しかし、2人はクスクスと笑い続け、
差し出された手を取る気配はない。
「来る気がないのであれば無理矢理にでも・・・」
「クスクス・・・クスクス・・・ろしてやる・・・」
少年が小さく呟く。
「殺してやる・・・みんな、殺してやる!!」
「・・・!!」
八雲が発言するよりも前に切りかかる少年。
その手には日本刀が握られていた。
「それは・・・黒刀?」
「こくとう?随分甘そうな名前だね!」
「名前は甘くても甘くない刀ですよ。
なんせ、天羽々斬と同じくらい神格は高いですから・・・」
「なんでそんなのがこんな所にあるのさ!?」
「それはわたしにも分かりません。
きっと、あの祠を調べれば分かるのでは?
嫌な感じはあそこから漂ってきますから」
「なるほど・・・じゃあ、やっちゃっていいんだね?」
「ダメです。
少年を傷つけずに黒刀だけを破壊しなければなりません。
それが、絶対条件です」
「なんでさ!」
「少年は操られてるだけ・・・そのように感じます」
「えぇ~!じゃあ、僕の方が分が悪いよ!」
「そうだと思います・・・ですので、今回はわたしがやりますよ」
「八雲が!?珍しい!」
「そうでしょうか?
ともかく、ルルはサポートに徹してください!
少女の方がなにかしてくる可能性も大いにあります」
「りょーかい!」
「では、行きますよ。
目の前に集中です!」
八雲も臨戦態勢に入る。
少年の目は赤く光り、歯を剥き出しにし、
まるで獣のようだ。