12-7=気泡
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
無数の泡の1つ。
その中に映し出されたものを見てミキは悲鳴を上げる。
「こんなものを見せて私をどうするつもりよ!!」
ミキの発狂は更に度を越していく。
「やめて!
やめろ!!
やめろって言ってるだろ!!
そんなものを見せるな!!」
手をブンブンと振り、泡を消そうとするが
泡は一瞬、形を歪めるだけですぐに元に戻る。
「やめろ・・・こんなのを見せるな!!」
無数の泡に映し出されていたもの。
それはミキの過去だった。
そこには幼い頃の楽しかった記憶。
両親の離婚。再婚。
馴染めない家庭。
荒んでいく心。
崩壊していく感情。
作り出された気持ち。
今のミキを作り上げた全てが映し出されていた。
「それが君の記憶。
過去と今の記憶。
そして、今ここにいるのが本心の君。
ありのままの君だ。
ほら、それが最後の記憶だよ。
いや、願望と言ってもいいかな」
ふわりとミキの目の前に漂ってきた泡。
その中にあったもの。
“ 転校 ”
父親の仕事の都合で転校しなければならなくなったこと。
それは決定事項で変えられないもの。
親の再婚から“ いい子 ”を演じてきたミキには否定できなかったこと。
だからこそ、この大会で優勝し思い出を残したかったこと。
試合に勝って、自分はなんでも出来ると認めたかった。
認められたかった。
自己満足かもしれないが、全てを忘れて没頭できるものがミキにはそれしか無かった。
そんな思いが映し出されていた。
しかし、自分で決めたことのはずだが、
それすらもミキを圧迫していた。
「どうだい?自分の記憶は」
「こんなの見てどうなる!
こんなの見せてどうする!
私の心を弄んで、壊して楽しいか!!」
「君は何か勘違いしてないかい?
ここまでは前座。
試合で言うなら前哨戦。
ここからが本線だよ!」
再び眉間に皺を寄せるミキ。
その表情は更に険しいものとなっていた。