12-4=方向
試合が終わり、更衣室・・・兼、選手控え室にて
「残念だったね」
「次頑張ろう」
「相手のチーム強かったね」
そんな声を各々が口にする。
そんな中、ミキは動けない。
顔を上げれないでいた。
「・・・ミキ」
「・・・あ、ごめん。ほんと、残念だったよね!
相手も凄く強かった!」
無理やり作り出す笑顔。
引きつった笑顔でメンバーに返す。
「うん・・・残念だった。
でも、きっと次があるよ!
また頑張ろう」
チームメンバーも泣きそうな顔をぐっと堪え、笑顔を見せる。
「じゃあ、私たち先に行くね。
ミキも着替えたら来なよ?」
「・・・うん」
他のメンバーは着替えを終え、更衣室を出る。
そこに残ったのはミキ1人。
ベンチに腰を掛け、頭からタオルを被せ、
俯いている。
「・・・もう・・・次なんてないのに・・・」
シクシクと泣き出すミキ。
必死で堪えていた涙だったが、メンバーがいなくなったことで溢れだしていた。
シクシク
シクシク
シクシク
シクシク
外のメンバーに聞こえないように。
小さく・・・小さく泣くミキ。
「君はなんで泣いているんだい?」
「・・・えっ?」
更衣室の中は1人だった・・・1人のはずだった。
それなのに幼い男の子のような声が話しかけてきた。
「・・・だれ?」
「だれだって?目の前にいるじゃないか!
君の目の前!」
キョロキョロと周囲を見渡すが、声の主はどこにもいない。
「だれよ!ここは女子更衣室よ!
男の子は入っちゃダメなんだから!」
「そんな小さいことを言っているのかい?
ほら、君のそばだよ!
・・・違う違う!もうちょっと上!」
言われるがままに視線を上に上げる。
ミキの視線はロッカーを目指し、更に上に・・・
ちょうど、ロッカーの上の辺りを見た時、1匹の黒猫に気が付いた。