11-15=反逆
アンディは動けない。
もしも動いたならば張り巡らされたピアノ線は容赦なく襲いかかり肉塊となるだろう。
「フハハハハハ!!
これでクリスは俺のものだ!
誰にも渡さん!!」
男はアンディの首に縄を巻き付ける。
その縄へジリジリと力を込めていく・・・
「苦しいか?
苦しいだろう!
もがき、苦しみ、お前は死んでいくのだ!!」
ジリジリ
ジリジリ
ジリジリ
ゆっくりと
しかし、確実にアンディの首を締め上げていく。
それと共にアンディの脳への酸素供給は絶たれ、命の灯火が途切れようとしていた。
その時
「やめて!!!」
クリスが叫んだ。
「やめろだと?こいつが死ねば邪魔者はいなくなる!
お前は私と永遠に・・・!!」
男の言葉が途中で途切れる。
何が起きたのか一瞬分からなくなる男。
体はカタカタと震え始め、血の気が引くのはわかった。
男がクリスの方へ向いた時、さらに驚くことが起こった。
「んぐ・・・っ!!」
男の唇に触れる暖かいもの。
そう、男の唇にクリスの唇が重なっていた。
真っ赤なクリスの両手が男の顔を掴み、男は自らの血で顔を染め上げる。
「ごめんなさい・・・」
クリスはその一言だけを発すると男の元から距離をとる。
「ふふふ・・・そろそろ、この物語も幕引きですかね」
「え?なに?
どういうこと?
何が起きたの??」
「女を手に入れようと躍起になった男と女を守ろうとした男。
そして、亡霊と一緒になることは出来ないが、
あなたは1人ではないと体で示した女・・・
皆さん生きるのが上手くない・・・
とても下手くそですね。
しかし、下手くそだからこそ見ていて面白い」
「じゃあ、今回はこれでお終い?
もう帰れる??」
「そうですね・・・最後に少しだけ、ちょっかいを出そうかと思います」
パチン
八雲が指を鳴らすとハラハラとピアノ線が解けていく。
それに気付いたのかクリスがアンディの元に駆け寄る。
「アンディ!あぁ、アンディ!」
「クリス!大丈夫か?怪我はないか!」
「大丈夫よ!助けに来てくれてありがとう!」
抱きしめ合う二人。
ひとしきり互いの存在を確認した後、亡霊を置いてその場を立ち去る。
立ち去り際、クリスが岩陰に隠れている八雲の方を見てお辞儀をした。
「やれやれ、気付かれていましたか・・・」
「そりゃ、あれだけやればね!」
「ま、いいでしょう」
2人は去った。
手負いの亡霊。八雲とルルだけがその場に残ることとなった。