11-9=宣言
誰もが仮面舞踏会を楽しんでいる。
もちろん、スクープを狙う記者もいるため、
ピリピリとした空気は拭えないが、
それでも皆の口元は素敵な笑顔を浮かべている。
「仮面の下はどうなってるか見物だね!」
「そうですね・・・もちろん、喜びを浮かべている人もいるかと思いますが、欲望に嫉妬、妬みや憎悪・・・そんな負の感情を浮かべている人も少なからずいるでしょう。
そう、あの男の様に悪巧みしている人も・・・」
八雲の視線の先には例の男。
階段を登り、上へ上へと目指している。
男は階段の上に立つと大勢の者達へ振り返る。
「良い日だ!あぁ、今日はなんていい日だろう!
皆が笑い、賑わっている!
なんといい日なのだろう!!
今宵!
クリスを貰い受ける!
誰であろうと阻止することは不可能だろう!
クリスは私のものだ!
止めれるものなら止めてみろ!
貴様らにそれが出来ることならな!
ワハハハハハハハハハハ!!」
男は宣言する。
民衆の前で声高らかに。
それに反応する人々や記者逹。
皆口々に騒ぎ立てている。
男は横に垂れているロープを掴むとロープは意思があるかのように男を引っ張りあげた。
「まるで台風の様だね・・・」
「えぇ、あの男の行動力には尊敬出来るところがあります」
「けど、周りは見えていないと」
「と、言うと?」
「ほら、見てみなよ!クリスのこと!
そばに控えて闘志を燃やしてる彼を!」
「ほう・・・あれは?」
「この歌劇場の持ち主・・・その息子だね!
名前なんて言ったかな?
アンディ?たしか、そんな感じ!」
「なるほど・・・ただの側近にしては距離が近い気もしますね・・・」
「八雲も大概、恋愛感情ってものを知らないよね!」
「すみません。他人の恋愛というのを読むことが苦手なもので」
「ま、いいけどね・・・」
「ルルが言っていることが確かならば、今夜、何か起きそうですね」
「何か起きると思うよ!僕も楽しみになってきた!」
「楽しい夜になるといいですね」
そして八雲、ルルのふたりも姿を隠す。
暗闇に浮かぶ不気味な笑みだけを残して。