11-5=生立ち
「貴様、今、狂っていると思っただろう」
「いえ、そんなことは・・・」
「思っただろう!
俺を見た奴はみんなそう言う!
狂っていると!
子供の頃からそうだ!
悪魔が取り憑いていると珍しがられ、
蹴られ、殴られ、罵られ生きてきた!!
全部この顔のせいだ!!
こんな顔で生まれて来なければ!
いっその事生まれて来なければ!
私は蔑まれなくて済んだのに!
憎い!
この顔が憎い!
私を傷付けるこの世界が憎い!!」
「あなたが腐っているのはその顔のせいだけではないように思えますが・・・」
「何か言ったか!!」
「いえ、何も」
八雲の呟きに過剰に反応する。
「まあ、いいだろう。
私はあの娘を・・・クリスを手に入れる!
貴様に手伝う意思はあるか?
あるならば私に着いてこい!
ないのならばここから去れ!
一刻も早くだ!!」
「ありませんよ?
あなたを手伝う理由がわたしたちにはありません。
しかし、あなたの指示通りここを去る理由もありません。
わたしたちは勝手にさせてもらいます」
「貴様・・・私の言うことが聞けんというのか!!」
「えぇ、聞きません。
先程も言ったようにあなたに従うつもりはありません。
あ、そうそう。
これを返しておきますよ」
男に向かってオルゴールを投げ返す。
男はそれを手に取る。
受け取った手はカタカタと震えていた。
「貴様を寄越したのは間違いだったようだな!
去れ!今すぐに!
私の目が届かぬ所へ!!」
男は癇癪を起こしていた。
八雲はそんな男を気にする素振りすらしない。
「それを決めることでさえ、わたしの勝手です。
ま、あなたのそばにいても面白くなさそうですし・・・ここは言う通りにさせてもらいますけれど・・・」
そういうと八雲はその場を立ち去った。
暗い小さな小部屋に男を1人残して。