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猫カフェ ~ブバルディアの花影~  作者: ことの。
~亡霊~
131/167

11-4=情熱

「着いてこい」


男は歩き出す。

歌劇場の階段を登り、上へ上へ・・・。

男が連れてきた場所。

そこは舞台の上部。

幕が垂れ下がっている所だ。


「貴様、あそこの女性が見えるか?」


男は指さす。

舞台の上にいる女性を。


「あの真ん中で歌ってる女性ですか?」


「違う!!

そいつではない・・・もっと舞台の後ろ・・・あそこで踊っている女だ!」


再度強く指を指す。


その指の先に確かに女性が踊っている。


透き通るような白い肌。

ふわふわの茶色の髪。

とても綺麗な女性だった。


「どうだ!美しいだろう!!」


「確かに・・・綺麗な方ですね」


「そうだろう!あの娘はクリスという。

私はあれが小さい頃から知っている!

名家の産まれだったあいつが幼い頃より両親を亡くし、ここに引き取られた頃から知っている!

こっちに来てみろ!」


男はズカズカと歩き始める。

舞台裏の見えない部分を通り、

歌劇場の裏の道へ。

細い通路を進み進む。


次に案内されたのは歌劇場の屋根裏。

その更に裏にある小さな小部屋だった。


「ここを見てみろ!」


小部屋の端に小さな穴が空いている。

一目見ただけでは気づかないくらい小さな穴だ。

言われるがままに八雲は穴を覗き込む。


そこから見えるのは小部屋と同じか、少し大きいくらいの部屋だった。

部屋には蝋燭が灯され、窓にはマリア象が映し出された綺麗なステンドグラスが見える。


「どうだ!」


「そうですね・・・とても・・・不思議な部屋です」


「ここは秘密の部屋なのだ!

普通の者は立ち入らぬ!

“ 亡霊の住む部屋 ”と言われている。

あの娘は毎日ここに訪れては祈りを捧げるのだ。

私が彼女に出会ったのもここだ!

気まぐれで私が夜に歌っていた時、その声を聞いた彼女がここに来た。

そして、祈りをささげた!

彼女は私のことを亡き父親が寄こした妖精か何かと勘違いしている。

私はそこにつけ込んだ。

私は妖精のフリをして彼女に歌を教えたのだ!

彼女の才能は素晴らしい!

今、舞台で歌っているあの汚らわしい女優なんかとは比べ物にならない!」


「なぜ歌を・・・?」


「彼女にこの歌劇場いちの歌姫になってもらいたいからだ・・・。

彼女は私から離れることが出来ない。

そんな彼女を歌姫にし、私がいただく。

こんなに素敵なことはないだろう!」



狂っていた。

男は狂っているのだ。

自らの欲望を垂れ流し、女を手に入れる。

その為にはなんでもすると目が語っている。


この歌劇場の裏道や秘密の小部屋。

その全てが彼女を手に入れる、彼女を見続ける為に男が用意したもう1つの舞台だったのだ。


もはや、歌劇場を網羅している男から誰一人として逃げ延びることなど出来ない。


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