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猫カフェ ~ブバルディアの花影~  作者: ことの。
~双子~
123/167

9-20=患部

「おやおや、やりすぎましたかね」


不意に現れる黒い影。

フライヤは姉を抱きしめながら声のする方向へ顔を向ける。


そこには姉妹を離れ離れにし、

姉を亡きものにした張本人。

八雲の姿があった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぉぁぁぁ!!

お姉ちゃんの仇!!!」


八雲の顔を見るやフライヤは勢いよく掴みかかった。

しかし、それをヒラリと交わすと倒れている姉。

レイヤの元へと近づいた。


「やめて!

お姉ちゃんに何するの!!」


敵意剥き出しでフライヤは大きな声で叫ぶ。

八雲はそんなフライヤの方へ顔を向けると人差し指を口元に当て、まるで子供をあやすかのようにシーっと動かす。


先程まで極悪だと思っていた人物の無邪気な行動。

その行動をみてフライヤはポカンとしてしまう。


「あまり騒がないでください。

傷に触ります。

大丈夫ですよ。

怪我こそ酷いが魔女・・・ましてや神はこの位じゃ死にません」


レイヤの横に膝をつき、患部を確認する。

やはりと言うべきか・・・思惑通りだった。

流血こそ酷いが現状、命には問題ない。


あくまでも現状だが・・・。


八雲はどこから取り出したのか、ナイフを手に持つとおもむろにレイヤの服に刃を入れ、脱がし始めた。


「キャーーーーー!!!!

なにしてるんですか!!!」


フライヤが八雲の手にしがみつく。

しかし、八雲は気にせず手も止めずに服を脱がし続ける。


意識がないレイヤはもちろんだが、フライヤの抵抗はまるでなかったかのようにあしらわれ、

レイヤの肌が露見してしまった。


可愛らしい水色の下着が露わになる。

そんな状況でもレイヤはぐったりとし、身動きひとつしない。


「お姉ちゃんに触らないで!

やめて!!」


しがみつくのでは効果がないと分かったのか、フライヤは八雲を叩き始める。

しかし、八雲はその手をパシッと受け止めた。


「やめてください。

治療が出来ません。

服を脱がさないと患部がしっかり見えないでしょう?

それともあなたはレイヤ様をこのまま死なせてしまってもいいのですか?」


治療・・・?

八雲の発言に力が抜け、ペタリと座り込むフライヤ。


「ま、見てなって!

八雲の施術は凄いんだから!

むしろ、こんな所で見れるなんて君は運がいい!

八雲は普段、滅多に他人を治療したりしないから!」


「ルル、余計なことを言わないでください。

わたしが治療しないのは“ しない ”ではなく、

“ 出来ない ”という方が大きいんですから。

出来ないというよりも“ する意味がない ”と言った方が正確な気もしますが・・・」


そこからは早かった。

例に限らず扉を出現させる。

今度は牙など着いていない普通の扉だ。

そこから次々と道具を取り出すと治療を開始した。


それはまるで手に神が宿ったような早業だった。

次々と調合される薬品にレイヤの体を触診する滑らかな手。

生物のどこをどう触れば壊れ、どこをどう触れば回復に向かうのか・・・それを熟知している。

迷いのない動きは見ているフライヤでさえ、安心させるほどだった。


時には体を押し、時には薬を傷口へ塗り込む。

そうしているうちに無数に開いていた傷口はみるみるうちに塞がっていく。

それはまるで魔法のように。


感心して見ていると、そう経たないうちに八雲の動きが止まった。

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