9-18=分離
姉妹はとても強く繋がっていた。
互いの手を取り、しっかりと握り、
絶対に外れないように。
しかし、絶対などないのだ。
暗闇の中、どちらが上か下か分からなくなり、
仕舞いには重力すらも迷い始める。
もみくちゃになり、体が上に下にと振り回される。
そんな中、強く握られていた手は力が落ちた瞬間を狙っていたかのようにスルリと離れ離れになる。
「お姉ちゃん!!お姉ちゃーーーん!!!」
「フライヤ!行かないでフライヤ!!!」
互いの叫びが暗闇へと消えていき、姿も一瞬で闇が飲み込む。
「あんのペテン師!騙したわね!!
次にあったら冷凍してヘラの所に送り付けてやるんだから!!」
精一杯の虚勢を張り、レイヤは大きな声をあげる。
しかし、その言葉は誰にも届かず、
声という振動でさえ闇は飲み込んで行った。
叫ぶのをやめたころ、
次第に闇が精神すらをも侵食し始める。
相変わらず上下左右へと体が動き回るのは分かる。
しかし、いつまで続くのだろうか。
もしかしたらいつまでも、永遠にこの状況が続くのではないだろうか。
そんな気すら起きてくるほどに永遠と感じられる時間。
そのうちにレイヤの瞳には涙が溢れる、
頬を伝って落ち始める。
「やめて・・・もう、やめてよ・・・これ以上はやめて・・・もう・・・」
精神の限界であった。
体に力は入らず、大きな声ももう出ない。
抵抗するだけの力はレイヤにはなかった。
「もう・・・やめて・・・
妹に・・・妹にまで・・・
妹にまでこんなことしてたらただじゃすまないから!!」
それは狼の咆哮のように辺りに響き渡る。
負け犬の遠吠えとは違う。
妹を心配する強い想い。
自分が挫けてはいけないという強固な意思が込められていた。
普通であれば自分の心配をするだろう。
しかし、レイヤは違った。
何よりも先に妹。
自分が壊れ、ボロボロになったとしても最優先は妹なのだ。
それは歪んでいたとしても愛情。
壊れていたとしても愛情。
誰かが誰かを想い、それをどの感情よりも優先させる。
それこそが愛情なのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
レイヤが最後の力を振り絞る。
動かそうとする体を不思議な力が肉を切り、
切られた部分は血を流す。
瞳は見開き、氷の魔女の面影はない。