9-8=戦場
圧倒的にして圧巻。
巨大にして豪快。
大きな氷の刀に勇ましい兜を携え、まさに将軍というに相応しい姿がそこにあった。
「八雲!
ねぇ八雲!
サムライだよサムライ!
僕、本物を見るのは初めてだよ!!」
興奮冷めやまぬという勢いで八雲にしがみつくルル。
「さてはて・・・あれを本物と言っていいものか・・・私には分かりかねますね・・・」
額に手をやり残念そうに首を振る。
「あれが本物じゃなかったらなんなのさ!」
「ルル・・・本当に見たことがないのですね・・・いえ、見る見ないと言うよりももう少し勉学を重ねた方が良いように思えます」
あっちも残念。
こっちも残念。
八雲は頭をかかえることしか出来なかった。
「あれの原動力は一体なんでしょうね?
・・・一見、ゴーレムのように見えますが・・・それにしては造形がやたらマニアックですね・・・」
「マニアックとは何よ!」
しげしげと鎧武者を眺める八雲に対し反論の声が上がった。
ルルではない誰かの声。
それを確認するために声のする方へ顔を向ける。
遠目ではあるが確かに鎧武者の肩に人が立っている。
そこに居たのは黒いマントでにとんがり帽子を被った人物。
背格好や声から察するに少女だろうか。
「おやおや・・・なんですか?そのthe魔女といった格好は・・・」
八雲の頭痛が益々酷くなる。
全身を黒で覆い、帽子の下から見える顔には仮面を付けている。
「帰れ!今すぐ立ち去れ!さもなくば殺す!!」
少女は威勢よく鎧武者の上で仁王立ちをする。
「殺す?わたしを・・・?」
「えぇ!殺すわ!
今までだってそうしてきたんだから!
早く立ち去りなさい!
私の気が変わらないうちに!!」
尚も勢いよく叫ぶ少女。
その声は焦っているようにも八雲には感じることが出来た。
「・・・と申してますがいかがしますか?ルル」
「いかがしますか?って聞かれても・・・僕はイヤイヤ着いてきただけだからね!
八雲1人で勝手にやってよ!」
「いやはや・・・連れないですね・・・」
ルルはプイッとそっぽを向いてしまう。
そんなルルを横目に置き、少女・・・もとい、魔女へと向き直す八雲。
「な・・・なによ!やるの?
やるなら容赦しないわよ!!」
そのセリフを聞き、深い溜息をつく。
「わたしは出来れば戦いたくないのですが・・・争いは好みではありません。
やるにしてもこちらは手加減しなけれはならないでしょうし・・・」
さらに溜息をつく。
「な・・・っ!あんた、魔女が怖くないの!?」
「えぇ、全く」
一般的に魔女という存在。
希少な存在。
特殊な力を持ち、命を狙われる存在。
強力な力は自身を守るために生まれたとも言われている。
勿論、一般人が叶う訳もなく普通であれば避けて通るみちなのだろう。
しかし、今魔女の目の前にいる人物は一般人のそれとは幾つも別の次元に存在する男と猫である。
「ふ・・・ふざけるなーーー!!!」
おちょくっていると思われたのか、
あまりにも八雲が冷静だったので逆鱗に触れてしまったのか。
魔女は一声叫ぶと頭上に巨大な表情は氷塊を作り上げた。
「これでもくらえーーーーーーー!!!」
頭上に掲げた手を勢いよく振り下ろす。
それと共に氷塊は一直線に八雲、それとルルの頭上へと降り注いできた。