1-1=扉
海に囲まれた閑静な住宅街の端にある少し大きめな公園
その更に端の方にお店はあります
猫の看板が可愛らしいお店で
あなたも一時の不思議を味わってみませんか?
~初めの1歩~
茶色くしっかりとしたドアを開けると
カランカランという落ち着いたベルがお出迎え。
「いらっしゃいませ」
これまた落ち着いた優しい声がお客さんの到来を歓迎してくれる。
「何名でしょうか?」
「1人ですが・・・大丈夫ですか?」
「もちろん」
マスター?だろうか、若めの男性と短くやり取りを行う。
マスターというにはいささか若すぎるようにも感じるが、
清楚な髪型、黒いベストにしっかりとアイロンが行き届いた白いシャツが良く似合う。
目を細めたような笑顔が気になるはするものの、
接客業としてのマスター?の精一杯の笑顔なのかもしれないと思うと、あまり気にならなくなった。
「こちらのお席へどうぞ」
案内されたのはカウンターの左から3番目。
そこまで大きくないお店だが、カウンター越しにコーヒー用のブレンダーや抽出する機会?のようなものが見受けられる。
メニューが作られていくのを見ることが好きならば、ここは特等席だ。
「メニューでございます」
席に着くとスッとメニュー、おしぼりが置かれる。
私はメニューを手に取りパラパラとめくる・・・
メニューを見ていて驚くことがひとつある。
それは多さである。
都心でもなければ大きなお店という訳でもない。
しかし、メニューの量が多い。多すぎる。
コーヒーの種類だけでなく、紅茶、緑茶・・・海外のお茶まである。
それに加え、お茶に合わせたお菓子なんかもあるので、選ぶまで一苦労といった感じだ。
「いかがなさいましたか?」
しばらくメニューとにらめっこをしていると先程のマスター?さんが話しかけてきた。
「ここのお店、メニューがとっても・・・いえ、すごく多いんですね」
「あぁ、うちは色々そろえてますから。
よろしければお客様に合う品を私が見繕いましょうか?」
決めかねていたのを見られていたのか親切心からかマスター?さんが提案をしてきた。
初めて会う人、初めて来たお客さんにどのようなものを提供するのか興味はあるが、
本当に任せて大丈夫か?という疑問も残る・・・
「少しだけ、心の疲れが取れるお飲み物をご用意いたしますよ」
???
マスター?さんの言っている意味がよく分からなかったが少しだけ気になる言葉を信じ、
「では・・・おまかせで」と言っている私がいた。
フッと小さい笑顔を浮かべて一言。
「かしこまりました。お待ちください。」
告げるとマスター?さんは席から離れていった。