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ダークReローデット  作者: 神蔵悠介
12/12

12話 反乱軍総督

 ジェスター達は町の地下での戦闘を終え、先にある通路を通った。

 通路を歩き抜けると森へ出る。辺りを見渡すジェスター。

 

「……ここは、ライアットの森だな、多分だが」

「なら、あと少しでライヘルツの町へ着きますね!」

 

 嬉しそうにいうアティ。だが、ジェスターは考え込んでいた。

 明らかにおかしい点が1つ。ジェスターのいた町ベルナウと現在、町のちかくに森のあるライヘルツの町。

 この区間の距離は馬を使えば1日半、徒歩であれば3日掛かる位置にいた。

 

「……この通路に魔法でも掛けられているのか……いや、魔法でもこれは厳しいぞ……」

 

 魔法でなく、自身の力だとしとたら、相手は相当厄介な物を使えると言うことになる。

 黙って出口を見ているジェスターに、心配になったリュミエルが近付く。

 

「旦那さま……? お気分でも悪いのですか……?」

 

 リュミエルの方を見ると、今にも泣き出しそうな表情でジェスターを見ていた。

 ジェスターはリュミエルの頭に手をのせ、優しく撫でる。

 

「……大丈夫だ。気になったことがあっただけだ」

「そうですか……それは良かったです」

「……ああ、いくぞ」

「はい」

 

 頭を撫でられたリュミエルは嬉しそうな笑みを浮かべて、ジェスターの後を追う。

 少し先に歩いていたアティ木に背中を預けて、ジェスター達を待っていた。

 

「早く行きましょうー!」

「……元気だな」

「この町は反乱軍の拠点が近いので!」

「……で?」

「で?」

 

 ジェスターの反応にアティは首を横に傾げる。

 

「……なんでアティが元気なのか理由になってないが?」

「あー……そういう……まぁ、その……」

 

 アティは先程の戦闘の事を思いだし、表情が暗くなっていく。

 ジェスターはため息をついてから、

 

「……空元気もほどほどにしとけ、持たなくなるぞ」

 

 ジェスターに優しく頭を2回叩かれ、驚くアティ。

 

「は、はい……」

「……いくぞ。とりあえず、情報収集だ」

 

 アティより先に歩くジェスター。自分の頭に手をのせて驚く。

 何故か嬉しくなり、口元が緩む。すると、ジェスターの後ろにいたリュミエルが人を殺す位の眼力でアティを睨んだ。

 

「リュ、リュミエル怖いよ……?」

「死ね、です……!」

「……お、おぉ……う……」

 

 それからジェスター達は森を難なく抜けて街道へ出る。

 出た瞬間にジェスターは足を止めた。

 

「どうしたんですか?」

「……!」

 

 リュミエルは何かを感じ、直ぐにアティの前に立つ。

 ジェスターはナイフを1本手から出して、背後にある木へ投げる。

 木へ投げるが途中で刺さることなくら空中で止まった。

 すると、姿を表す。全身真っ黒のローブに奇妙なヘルムで顔を隠す存在。

 

「……」

「……ほう? 止めるか……」

「……ッ‼ アティ‼ 下がりますので掴まって下さい‼」

「え、あ、はい!」

 

 リュミエルは相手から危険な気配を感じとり、アティはリュミエルに掴まり後方へ跳んだ。

 念のためリュミエルはジェスターの後ろの位置ぐらいにした。

 

「……」

「……どうした?」

「……」

 

 無言のまま、全身真っ黒のローブの存在は1枚の紙をジェスターに投げる。

 ジェスターはそれを受け取った。一瞬目を離した隙に姿が消える。

 だが、後ろに行ったのであれば直ぐに分かるジェスターは振り向かず正面を見続けて辺りを探す。

 完全に気配を消している存在は何処かへ消えたと考えた。

 

「……厄介な奴がいるな」

 

 ジェスターは振り返り2人を見る。

 

「……安心しろ、もういない」

 

 ジェスターに言われ、2人はゆっくりと近付く。

 近付いてからリュミエルはジェスターの手に持つ紙を見る。

 

「旦那さま……それは……」

「……ただの手紙だ」

 

 ジェスターは手紙の封を取って、中の手紙を取り出して読む。

 内容を読んだジェスターはフッ……と鼻で笑う。

 

「あの……」

「『私の作品部隊の一部を全滅させて、ゲートを通ってきた3人組さんこんにちは。君たちは素晴らしい、あの6人は少なからず弱くはない部類だ。だが、それらを倒したからあの道を通っていると考えた。まぁ、つまり……君たちに興味が出た。いずれ会おう。6騎士、黎明のシュナーゼンより』」

 

 ジェスターが口に出して読み上げる。するとアティは驚愕して口が開いたまま。

 信じられない物を見るような表情でいた。

 

「……シュナーゼン。彼は……優しいのです。だから、何か……何かの間違い……いえ、操られているのかと……」


 アティを横目で見ながらジェスターは手紙丸めてそのまま真上に投げる。

 投げてから、ナイフを取り出して細かく刻んだら。

 

「……さぁな、操られているかもしれないし、本心かもしれないし。俺には分からない。ただ……帝都に行けば分かるだけの事だ」

「はいッ……!」

「……なら、さっさと町でやること済ませるぞ」

 

 そういってジェスターは町へ足を運んだ。

 そして町の近くまで行くと、ジェスターが立ち止まる。

 

「どうしたんですか?」

 

 気になったアティがジェスターに言う。


「……俺は俺で別行動させてもらう。それの方が動きやすいからな」

「旦那さま、それでは……」

「安心しろ、変装して町にはいるだけだ。後から追う」

「分かりました。では、お気を付けて」

 

 丁寧に頭を下げてお辞儀するリュミエル。

 ジェスターは何処かへ消える。

 それからアティとリュミエルの2人になり、リュミエルが行動を起こす。

 ベルトバッグからお金など、食料を出した。

 

「アティ、まず私達は情報集めだ、です」

「うん」

「町に入るのにも少しだけ時間がかかる、です。だから、すっごいしゃくだけど、アティが私の姉役になれ、です」

「わ……私がッ……‼ リュミエルのお、おおおおお、お姉ちゃん⁉」

 

 興奮気味に話すアティにリュミエルはドン引きする。

 

「……キモい、です。まぁ……今の事情なら上手くは行きます、です」

「リュミエル……!」

「な、なんだ、です⁉」

 

 グイッと真顔でリュミエルに近付くアティ。あまりの気迫に押されるリュミエル。

 

「お姉ちゃん。って早く呼んで」

 

 その一言でリュミエルの目から光が消えた。

 

「……頭腐ってやがる、です?」

「腐ってない、お姉ちゃん腐ってないから、大事だから早く呼んで」

「ち、近付くなッ! です‼」

 

 どんどん迫ってきているアティの体がを押し返しながら言うリュミエル。

 

「な、何で今呼ばなきゃいけないんだ! です!」

「突然お姉ちゃんなんて呼ばれたら私が死んじゃうからッ!!!!」

「う……うわぁ……流石に……キモい……です……」

「……リュミエル、ごめん流石に……だね」

 

 流石にやり過ぎたと思ったアティは反省の色を見せる。

 それをみたリュミエルは嘆息を1つついてから、

 

「……はぁ、許してやる、ですよ。その……」

「……?」

 

 突然モジモジとし始めるリュミエルにアティは首を横に傾げる。

 

「……お姉ちゃん……」

 

 顔を赤らめて上目遣いの涙目で、体を少し震わせながら言うリュミエル。

 アティは鼻血を両方から出しながら倒れた。

 

「え⁉ ちょ、ちょっと大丈夫か⁉ です!」

 

 急いでアティに駆け寄るリュミエル。

 

「……天使、天使がいる……」

 

 恍惚な表情を浮かべながら鼻血を出すアティにリュミエルは、白い目で見た。

 

「さっさといくぞ、です」

「あ! ちょっとまって!」

 

 立ち上がったアティ、にリュミエルは無言でタオルを渡す。

 それを受け取り、鼻に当てて止血する。

 

「押さえてろ、です」

「……う、うん」

「町に着く頃には止まるとおもう、です」

 

 それから町へ歩き出し、15分歩き町の正門へ着く。

 正門に着くと白い服装で所々にシールドを着けている兵士が2人。

 

「おっちゃん、兵士にならないか?」

「おっちゃんなら、いけるって!」


 強面のおじさんが兵士にスカウトされている。現在、帝国に反乱する者の勇士募っている最中。

 そのスカウトにおじさんは引っ掛かっていた。

 

「悪いな、今は戦いに行きたくないからな」

「そうか……」

「まあ、死んだらそこで終わりだからな……無理に誘って悪かったね」

「いやいや、いいさ。んじゃな」

 

 そう言っておじさんは町の中へ入った。

 2人はおじさんが行った後に近付く。

 

「おお、これはこれは」

「レベルが高い2人だね、観光かい?」


 兵士に話を掛けられるアティとリュミエル。

 

「……お姉ちゃん」

 

 リュミエルが縮こまってアティの背中に隠れながら言う。

 思わず鼻血がまた出そうになるアティ。

 しかしグッと堪えてから、兵士の2人を見る。

 

「姉妹2人で旅をしています。ここには少し泊まろうかと思いまして」

「なるほどな! なら、町の中央にある宿屋がオススメだ!」

「そうだな! 後で会えるしな!」

「そうですか、なるほど。では」

 

 兵士の誘いを軽く流してから町の中へ入る。

 町の中へ入るとそこら中に反乱軍の兵士がいた。アティとリュミエルはとりあえず、情報を集める為に酒場へ行こうとする。

 

「お? さっき門にいたお嬢ちゃん達じゃないか?」

 

 強面のおじさんに話を掛けられ、アティとリュミエルは警戒をする。

 それを感じ取ったのか強面のおじさんは笑う。

 

「やめとけって、そんな警戒してると逆に怪しまれるぞ?」

 

 強面のおじさん言うとおり、一部の兵がアティとリュミエルを見ていた。

 

「可愛いお嬢ちゃんだ、とりあえず酒場に行くか?」

「お願いします……」

「あいよ」

 

 アティはもしかして、と思いリュミエルに近付く。

 

「あの人……もしかして、ジェスターさん?」

「いや、分からない、です……旦那さまの変装は分からなさすぎるので……」

「でも、ジェスターさんっぽいよね?」

「まぁ……それは……」

 

 2人で話していると、

 

「お嬢ちゃん方、話してるとこ悪いが、着いたぜ」

 

 いつの間に酒場へ着いていた2人。

 酒場に入り、店員に案内される。

 

「こちら、どうぞー」

「悪いな、あんちゃん」

「お構い無く」

 

 そう言って店員はバックヤードへ入り、アティとリュミエルは強面のおじさんの席に座る。

 昼間なのにも関わらず、酒場は賑やかで笑いが絶えない。

 それを見たアティは、

 

「やっぱり、笑顔が一番だね……」

 

 と小さく呟いた。しかし、近くにいたリュミエルはその言葉を聞いていた。

 はぁ……とため息を1つつくリュミエル。

 すると、強面のおじさんが水の入ったグラスを飲みほしてテーブルおく。

 

「情報収集だろ?」


 突然確信を疲れた2人は思わず驚愕して黙り混むが、

 

「……そ、そうです……」

 

 リュミエルが弱々しく口を開く。

 強面のおじさんは口角を片方上げる。


「何が知りたい?」

 

 強面のおじさんの一言に警戒する2人。何を聞き出すべきか迷う。

 

「……現在、反乱軍と帝国軍の戦力の差」


 アティが当たり障りの無い所を聞く。

 

「簡単さ、数はこっちで質はあっち。まぁ今んとこ……5分ってとこだな」

「なるほど……」

「それだけかい?」

「……いえ、まだありますが……」

 

 情報料が気になり、料金のハンドサインを見せるアティ。

 それを見た強面のおじさんはまた、口角を片方上げた。

 

「気にすんな、俺の持っている情報とそっちの持っている情報じゃ……割に合わない。聞くだけ聞いてくれ」

 

 アティはリュミエルと目を合わせる。

 リュミエルに構わないと言う。思いを感じ取ったアティは強面のおじさんと対面した。

 

「なら……誰が、この内乱を起こしたの?」

「そりゃあ、現帝げんみかど

「違います、内乱の引き金を引いたのは誰ですか?」

 

 その一言に強面のおじさんの顔から笑顔が消えた。

 賑やかな酒場が更に賑やかに聞こえるアティとリュミエル。

 この質問はアティとリュミエルに取って大事な事であり、分かる範囲であるならジェスターが答えられる。

 ジェスターかどうか分かる質問で、知らない情報を仕入れるには最適の質問であった。

 

「……面白い事を聞くな。引き起こした、ね……ほう?」

「……」

「……現大臣、前帝とその妻に支えていた。オータム・ヴァン・ガルシム」

 

 その言葉を聞いたアティは相手に見えぬ様に握りこぶしを作り、本気で握る。

 握りすぎて逆に手から血が流れた。

 そんなアティにリュミエルは手の甲に手をのせる。

 アティはリュミエルの方を見る。

 リュミエルは首を左右に振り、焦るな、と伝える。

 アティはふぅ……っと息を整えてからしっかり対面した。

 

「……終わりか?」

「はい……ありがとうございました」

 

 深々と頭を下げるアティ。

 

「いやいや、気にしなさんな。それにしても……まだ、割りに合わないな……」

「えっと……」

「本当になにも無いのか?」

「な、いです……」

「そうかー……なら、仕方ないな……」

 

 と言うと強面のおじさんが笑顔でアティとリュミエル見る。

 

「――ジェスターは元気にしてるか?」

 

 たった一言聞かれただけで、2人はその場で固まる。

 だが、リュミエルは疑われる事に慣れていた。

 口を開こうとするが、

 

「ッ――ッ――」

 

 声に出すことが許されなかった。

 そこで感じ取ったリュミエル。

 とてつもない気迫に体がガチガチ固まっていた。

 それはもちろん、酒場の回りにいた客達も黙り混んでいる。

 この男は本気でヤバいと確信したリュミエルはアティの手を握ろうとするが、体が言うことをきかない。

 あれだけ賑やかな酒場が一気に静かになり、静寂を生む。

 

「聞いているだけだぞ? ジェスターは元気か? っと」

 

 冷や汗が止まらないアティとリュミエル。そこへ、

 

「お客様……大変申し訳ございませんが、その様に他のお客様への迷惑行為は禁止になっております」

 

 先程、強面のおじさんを案内した男性店員が注意する。

 強面のおじさんは驚いたが、直ぐに察して男性店員を見た。

 

「……聞いていいかな? 店員さん」

「なんでしょう?」

「なんで、この気迫の中動けるのかな? 俺、結構本気でやってるんだけど?」

「?? 気迫とは、なんです?」

「気迫を感じない者はいないよ、現にこの酒場にいる奴等の1部は隊長クラスもいる。そいつらも動けないんだ」

「……」

「なら、自ずと答えは見えてくるだろ? ……ジェスター」

 

 男性店員は笑顔を崩さないままだが、突然とてつもない殺気が辺りに広がる。

 男性店員は口元を緩ますと、

 

「……クソったれがぁ……今ここで殺してやろうかぁ……?」

 

 と強面のおじさんに言う。

 すると、強面のおじさんが立ち上がる。


「それよりもジェスター……」

「……わかってる」

 

 すると、姿は男性店員のままのジェスターはナイフを取り出して、それを投げる。

 投げられたナイフは酒場の奥の席に座っている男性の足に突き刺さった。

 男性は突然の痛みに叫ぶ。

 そこでやっと動ける様になった酒場の客達。すぐに武器を取り出して、ジェスターを囲む。

 

「まてッ!!!!」

 

 すると、強面のおじさんが兵士に一喝してから、髪の毛を掴み取った。

 それから顔も掴んで剥がす。

 現れたのは、

 

「……そ、総督……‼」

 

 反乱軍のリーダー、ヴァイス・ディート・ロウ 。

 

「やめておけ、この人数でもジェスターには敵わない」

 

 素直に総督の指示に従う兵士達。

 総督は1歩前に出てジェスターと改めて対面する。

 

「久しぶりだな、ジェスター」

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