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ダークReローデット  作者: 神蔵悠介
11/12

11話 背後の存在

「死ねジェスタァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 当たれば即死の拳をジェスターに向けて放つ。

 簡単に避けるジェスターに尻尾で攻撃する。だが、それも当たることなく簡単に避けられる怪物。

 怪物と戦闘が始まってから10分が経とうとしていた。


 突然右手に痛みが走り、何かと思い一旦怪物から距離取る。

 いきなり距離を取るジェスターに怪物は察した。

 距離を取ってからジェスターは自分の右手を見る。

 

「……ほう? これはこれはぁ……」

 

 右掌の一部が小さく腫れ上がっていた。

 腫れ上がった症状を見る限り、町長の受けた毒に間違いないと確信するジェスター。

 右掌を見てからジェスターは無言で、怪物の方を見る。

 

「お前、酷い顔で笑ってんぜぇ……?」

「減らず口もそこまでだ……お前は俺の毒で死ぬッ!!!!」

 

 指を差しながら言う怪物。しかし、ジェスターはいつ右掌に毒が流されたのか分からない。

 

「1番最初の俺が女に針を飛ばした時だ……! 俺の針自体に無数の細くて見えない針が更に生えている! これは刺さっても気付かない程だ」

「バカだなぁ……そんな事教えたらもう刺には触らないだろぅ……?」

「別に構わんさッ!!!! ここでテメェが死ぬからなッ!!!! ハハハハハッ!!!!」

「へぇ……そう……」

 

 ジェスターは右掌に意識を集中させる。

 発熱、痛み、腫れ、幻覚、幻聴、筋肉組織の崩壊……。毒の成分としてはこれらか……なるほど。

 ジェスターは自身に毒を何10種類も打ち込んでおり、その全ての毒の抗体を持っていた。

 それら全ての抗体で今体内に入っている毒の症状を1つ1つ潰していく。

 そして全ての症状を潰したジェスター。

 

「ふぅ……」

 

 吐息を漏らして、ひとまず安心するジェスター。

 これをものの数10秒で行っていた。

 だが、さすがに一気に体力を使ったジェスターは疲れる。

 そんな事を知らぬ怪物。症状が発症してから 15秒程で体が膨れ上がり、触れるだけで激痛。刺せば破裂するほどの猛毒だが、一向にその傾向が見えない。

 

「なにが、どうなっている……?」

「簡単だぁ……」

 

 ジェスターは右掌を怪物に見せる。

 

「抗体を即作ったのさぁ……まぁ、完璧じゃないから未だにに腫れているけどなぁ……」

「……は?」

「だからぁ……抗体、抗体を作ったのさぁ……」

「あ、あり得ないッ」

「あり得るからこうなってんだろぅ……? お前、ほんっとぉ……」

 

 怪物にゆっくりと腕を上げてから指を差し、

 

「バカだなぁ……」

 

 ジェスター自身、心から思った一言を言う。

 

「雑魚がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 怪物はジェスターに一気に近付く。

 腕を振り上げて、ジェスターに降り下ろす。

 同じ攻撃にジェスターは嘆息を1つつく。

 

「単調だなぁ……」

 

 ジェスターは簡単に避けて背後へ回り込み、尻尾に生えている針を1本だけ切り裂く。

 切られた事に気付かない怪物。切られた針は宙を舞う。

 

「後ろだろうがッ」

 

 怪物は尻尾で凪ぎ払うがジェスターに当たることなく空を切る。

 ジェスターはバク転して、回避して怪物に向かって走った。 

 そして、怪物は近づいてきたジェスターへ拳の嵐を降り下ろす。全てを避けたジェスター。

 それから宙に舞っている針にジェスターは怪物を飛び越える。


 針の切り口に向かって短剣を突き刺して着地した。

 先ほど同じ様に尻尾で凪ぎ払い、その後に裏拳を放つ怪物。

 だが、ジェスターはそれらを体を捻らせながら飛んで避ける。

 そして針の刺さった短剣を怪物の腹部へ突き刺した。

 

「ぐぅッ」

 

 痛みが走り、何かと思い腹部を確認する。

 

「は、はぁああああああああッ!!!!」

 

 自身に刺さっている物を見た怪物は、焦り始める。

 

「な、なんで!!!! 」

「今の装備だとぉ……お前を貫く物はもってないからなぁ……だから――使わせて貰ったぞぉ……?」

「いッ……いやぁあああああッ!!!! やだやだやだやだやだッ!!!! 死にたくない!」

 

 焦り始めた怪物はジェスターを見た。

 

「たッ……」

「たぁ……?」

「たッ……すけて、くだ……さい……」

「――クハハハハッ!!!!」

 

 思わぬ怪物の一言にジェスターは笑う。

 

「ダメだなぁ……! テメェはテメェのやって来た事に責任持てぇ……」

「あ……あ、あぁッ!!!! 嫌だ、俺は死に――ッ!? ヴァアアアアッ」

 

 怪物が言おうとした所で断末魔を上げる。そして、そのまま体の形状が保てなくなり、液状化して床へ落ちた。

 それを見たジェスターは何かを思い出す。

 

「……あぁ……! すまない、忘れていたよぉ……さっきの死ななかった理由を……」

 

 液状化した物に言うが、反応がない。

 

「……まぁ、話せなくて当たり前か」

 

 それからジェスターは残りの3人を見てから、

 

「……お前らで良いか」

 

 ジェスターがゆっくりと残りの3人へ近付く。すると、腰を抜かしてその場に倒れる黒装束。

 

「……さっき俺が死ななかった理由はな、これだ」

 

 ジェスターは粘土の様な物を見せてから、そこに魔法掛けて床に落とす。

 すると、床に落ちた粘土が一瞬でジェスターの姿に変わる。

 衝撃的すぎて黒装束の3人は絶句してなにも言えずにいた。

 

「……コピードール。俺がもう一人増える」

「……こんな風にな」

 

 ジェスターとコピージェスターがお互いに肩を組み合いながら言う。

 

「……お前らはどうしようか?」

「……尋問する予定ではあるんだがな」

「……なるべく穏便に済ませたいと思ってる」

「……だから、抵抗せずに知ってること全部話せ」

 

 黒装束3人は怯えすぎて言葉すら発する事が出来ずにいた。

 それを見たジェスターは、

 

「……悪い俺、戻ってくれ」

「あぁ……分かった」

 

 コピージェスターの体が崩れて元に戻る。

 粘土を手に取り、ジェスターはそれを何処かへ消した。

 

「さて……?」


 ジェスターは黒装束3人を見ると、怯える3人。

 だが、ジェスターには関係のない事で、

 

「……ビックリショーの開幕」

 

 影が黒装束達の手足を掴み、そのまま吊るされる。

 黒装束の背後から壁が床から表れ、壁に貼り付けられる黒装束達。

 

「……さぁて、尋問だ。しっかり答えられたら、死ぬことはない。がんばれー……」

「……お、俺達は関係な――」

「――3回間違えたらペナルティだ」

「まッ……待ってく――」

「――はい、スタート。質問その1、何処から来た?」

 

 ジェスターの質問に黒装束は黙り混む。


「……残念だが、黙秘権は存在しない。後10秒で答えなければ、回答なしのミスだ」

 

 言ってからカウントが始まる。

 黒装束達はこの状況をどうやって生き抜くか、それだけを考えていた。そこで1人が気づく。

 

「……ひ、東からだ……!」

「……ほう? じゃあ、2つ目だ。お前らの部隊は主に何をする?」

「情報収集……!」

「……んじゃ、お前に聞くのはこれでラストだ」

 

 この時、黒装束は「思った通り」と心の中で確信していた。

 相手は俺らの事を知らない。なら、嘘の情報を言ってこの場を生きようと考えた。

 だが、

 

「……今までの回答は嘘か本当か、どっちだ?」

「え……? な、なんでそんな、ことを……?」

「……いや? 確認しているだけだが? 本当なら、それで構わない」

「……本当だ!」

「……あ、そ」

 

 黒装束の1人が答えた瞬間なにかが外れる音がして、滑車が勢いよく回っている音が結界内に響かせた。

 何かと思い黒装束は辺りを見るが、暗すぎてあまり見えない。

 そこでジェスターの横になにかがあるのを確認した。

 

「……その隣にあるのはなんだ?」

「……これ? これはな……ペナルティのボタンだ」

「は……? 俺はまちがッ――」

 

 黒装束が話している最中にボタンに重りが落ちた。その瞬間に首、両腕、両足を拘束していた壁が時計回りに回転。

 残った胴体のみ壁に貼り付けられ、それを見たジェスターは、

 

「……はぁ、やっぱり嘘だったか。バカだな……正直に答えれば良いものを」

 

 ため息をついてから言う。

 逃げられない尋問に気付いた黒装束は絶望する。

 

「い、今から話すことは本当の事だ……! 聞いてくれ!」

「……聞くから言え」

「お、俺達は詳しい事を話すことは出来ない……! だから――」

「――見逃してくれってか? それは甘いんじゃないのか?」

 

 ジェスターは掌を黒装束に向ける。

 すると黒装束の手に回転部分が現れた。

 表れると同時に先程と同じ様に滑車の回る音が結界内に響かせる。

 だが、黒装束は自分の掌に回転部分が現れた事を知らない。

 

「う、嘘はついてないッ!! 本当だ」

「……ついてるついてないの問題じゃなくてな……俺の質問には答えろって事だ」

 

 重りがジェスターの近くに落ちる。

 ボタンが押され、装置が作動した。

 そして、黒装束の1人の手が時計回りに回転した。

 

 

「あァアァァァァァァッ!!!!」

 

 ジェスターは直ぐに腕へ止血剤の入った注射器を投げた。

 数秒後、手から血が流れなくなり、黒装束は意識を失う。

 

「……気絶したから、次はお前だ」

「ひっ……」

「安心しとけ、俺が質問してやる。それに答えてくれればいい」

 

 ジェスターの一言に黒装束は激しく首縦に振って答える。

 

「……んじゃ、1つ目。上級貴族とは仲がいいか?」

「い、良い……!」

「……2つ目、知り合いに6騎士はいるか?」

「い、います……!」

「……3つ目、戦闘訓練は帝国内か帝国外。どっちだ?」

「て、……帝国内」

「……ありがとう、なるほどな……」

 

 ジェスターは今自分が持っている情報を繋ぎ合わせ、この黒装束の部隊は何処の者の差し金か予想を立てた。

 

「……6騎士、黎明のシュナーゼン」

「――」

「……ほう? その反応……間違いないな?」

「ち、違う! シュ……がッ アァアアああッ」

 

 突然苦しみ出すと、黒装束は砂となってその場に落ちた。

 

「……シュナーゼンか……厄介な奴が出てきたな……まぁ、いずれこうなると分かっていたがな……」

 

 呟いてからジェスターは気絶している黒装束を見てから、壁から電撃が流れる装置を出す。それから電撃を発生させる。

 

「アァァァァ!」

 

 意識を取り戻した所で電撃を止め、黒装束を見つめた。

 目が合った黒装束は怯えて目を反らす。

 ジェスターは掌を黒装束に向ける。

 

「やッ……やめてくれぇぇぇぇぇぇぇッ!!!! 死にたくない!! 死にたくないッ!!!!」

「……」

 

 すると黒装束の拘束が外れて床へ落ちる。

 着地に失敗した黒装束は足の骨を折った。

 

「い゛ッ!!!!」

 

 ジェスターは一応黒装束に拘束魔法を掛けて拘束する。

 それからジェスターは固有結界を解除した。

 

「旦那様!」

「ジェスターさん!」

 

 アティとリュミエルが駆け寄る。

 ジェスターは後ろにいる2人の方へ振り返った。

 そこには小さな砂の山と、獣人5の様な生物モッドが倒れていた。

 ジェスターはリュミエルの手を見ると直ぐに分かる。

 

「……使ったのか?」

「……! ……はい、申し訳ありません……」

「……構わない。自分の身とアティを守る為に使ったのだろう? なら、なにも言うことはない」

「ありがとうございます……!」

 

 リュミエルは深く頭をジェスターへ下げる。

 ジェスターはアティに近付く。

 

「……」

「……あ、あの……?」

 

 無言でアティを見つめるジェスター。無言で見つめられたアティは少しだけ、怖くなる。

 ジェスターの手がアティへ伸ばされる。思わずアティはギュッと目を瞑った。

 すると手を掴まれたアティは心の中で、あぁ……もうだめだ……と思う。


「……怪我をしているな」

「……え? あ、はい……」

「……治療は?」

「リュ、リュミエルがしてくれました……」

「……そうか、なら良い」

 

 と言ってジェスターはアティの手を離す。

 そして、よく見ると拘束されている者に小さな砂に液状化した何かと、死体が床に存在していた。

 それを見たアティは少しだけ驚く。

 

「あ、あの……」

「……なんだ?」

「ジェスターさんが、倒したのですか……?」

「……俺以外誰がいるんだ?」

 

 そこで確信した。少なからず、アティはモッドとの戦闘で相手の方が1枚上手であった。

 もし、リュミエルが居なかったら完全に殺られていた。

 それを考えるとまず、自分の実力の無さにジェスターの異常なまでの強さが分かる。

 アティはごくりと生唾を飲み、前に1歩出る。

 

「ジェスターさん……!」

「……なんだ?」

「強くなりたいです……!」

「……だから、リュミエルがいるんだろう?」

 

 ジェスターの一言にアティはリュミエルの方を見る。

 

「……リュミエルと対等になれば、少なからずあの程度の黒装束は余裕だ」

「なら――」

「――なぜ、リュミエルが倒さなかったのか? だろ?」

 

 先読みされたアティは黙り混んでから頷く。

 

「……誰が見てるか分からないからな。実力は隠すもんだ。だから、リュミエルが力を抑える相手を寄越したつもりなんだが?」

 

 とゆっくりとリュミエルの方を見るながら言うジェスター。

 リュミエルは小さくなり、泣きそうな表情を浮かべている。

 そんなリュミエルにジェスターはリュミエルの頭に手を乗せた。

 

「……まぁ、強くなれ。お互いな」

 

 ジェスターの一言に2人は真剣な顔つきで、

 

「「はいッ」」

 

 元気よく答える。

 

「……だがぁ、お前らには先にお仕置きが待っているぅ……!」

「「あッ……」」

 

 一気に絶望した2人であった。

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