とりあえず水の精霊と話す
インフルエンザにかかった同僚の代わりに出張、そして社用の携帯を持って自分のを忘れるという凡ミスをしたためなにも出来ませんでした。
すみませんでした。
お詫びと言ってはなんですが本日2、3話投稿したいと思います。
水の精霊と話をしていく。こいつは俺について知るための重要な手がかりだ。手掛かりなんだが・・・
「キャー、キャー!」
「キヨスケ、キヨスケ。」
「この忌まわしき怪物は地獄の業火に焼かれながらも天国に憧れる。」
「ってうるせえ貴様ら。ていうか最後の奴、仮面違いだろうが!!」
「「「わー!!」」」
小さな妖精たちがノーマル、金、銀のキヨスケ仮面の中に入ったりしながら俺たちの周りでうろちょろしすぎてはっきり言ってうざい。怒っても楽しそうに逃げていきやがるし、しばらくすると戻ってきやがるしな。
「先生、先生。」
カヤノの声に意識を戻す。そうだな、今はあいつらに構っているところじゃねえよな。
「俺は精霊だってことか?」
「そうだよ。君は土の精霊だよ。ちょっと変な感じもするけどね。」
「マジかよ・・・」
いや、まあただの地面よりは精霊って言われた方が格好いいし、ちょっと変な感じがするってのも気になるが、同じ精霊が言っているならたぶん本当なんだろうな。まあこいつが本当に精霊なのかわからんが、少なくとも変な力を持っているのは確かだし。
とりあえず土の精霊ってことで納得しておこう。そうしないと話も進まんしな。
俺がそんな風に自分自身を納得させていると、カヤノがおずおずと手を上げた。
「んっ?なによ、適格者君?」
「あのさっきから僕のことを適格者って言ってますが何なんですか?それに精霊核とも言ってましたけど?」
カヤノの質問にポンッと手を叩いた水の精霊が嬉しそうに身を乗り出す。妖精たちもそんな水の精霊の気持ちと共鳴したのか遊ぶのをやめてダンスを踊り始めていた。リンボーだがな・・・。周りでくるくると火のついた棒を振り回している奴がいるんだがなんかいろいろ混ざってねえか、こいつら。
「うーん。私も話に聞いただけだから詳しくは無いよ。精霊が何か強い思いを抱いたりすると精霊核っていう宝石になるらしくて、その状態になると人と契約できるようになるらしいよ。でも誰でもいいわけじゃなくてその精霊と心を通わせた人じゃないといけないんだって。精霊がそんな強い思いを抱くなんてまずないからとっても君たちは珍しいんだよ。」
「「へ~。」」
俺とカヤノの声が重なる。何と言うか珍しいと言われても実感がわかねえんだよな。それにしても俺はカヤノと契約なんて交わした覚えなんてねえん・・・んっ?もしかしてアレか?カヤノに俺の核の部分を掘り起こしてもらった時に光ったのはカヤノと契約したからってことだったのか!?全く契約なんて考えてなかったぞ。
「あっ、もてなしの準備が出来たみたいだよ。」
水の精霊が指さした方向を見ると、先ほどの執事服を着た140センチほどの妖精、もうなんか面倒だから執事妖精でいいか、が水晶のような盆に何かを乗せてこちらに向かって飛んできていた。そして1メートルほど離れたところに降り立つと、その盆から俺たちの前に2つの皿を置いた。
「あっ、ウィードですね。」
「う~ん。ごめんね。まさか人が来るなんて思ってなかったからそんなのしかなかったよ。」
「お構いなく。」
にこやかに会話を交わす2人を横目に俺はもう一つの皿へと目を移す。まあウィードは良い。カヤノがさんざん今まで食べてきたのを見てきたこともあって、俺の中でも一応食べ物に分類されている物だからな。ちょっと抵抗はあるが。
「おい、俺にこれをどうしろと言うんだ?」
「えっ、食べていいよ。」
「魔石なんか食えるか!!」
そう、俺の目の前の透明な皿の上に数個乗っているのは紛れもなく魔石だ。ポーションを作る時にゴリゴリとつぶす魔物から取れる不思議な石だ。ゴブリンよりははるかに大きく、ホブゴブリンよりちょっとだけ大きいかなっていう程度の魔石なのでまあまあ強い魔物の物なのかもしれん。とは言え食いもんじゃねえだろ!
「えっ、何言ってるの?食べられるよ。」
「はぁ?」
そういうが早いか水の精霊が俺の目の前にあった魔石を1つ持ち、口の中へと入れると飴のようにころころと含み始めた。俺とカヤノの目が点になる。
しばらく口に含んでいた水の精霊だが、飽きたのか途中でがりがりと言う音が口の中から響いてきたのでかみ砕いたのだろう。そして水の精霊の喉が鳴った。
「ね。」
「お、おう。」
にこやかにほほ笑む水の精霊には悪いがなんというかどん引きだ。あれって魔物の体の中から出てきたんだぜ。人間で言うなら結石みたいなイメージなんだが。これが精霊の主食なのかよ。というか俺自身魔石なんて土の中に埋めておいたこともあるが食べたことなんてねえぞ。どうやって食べんだよ?
「さあ食べなよ。おもてなしは受けるもんだよ。」
「・・・」
魔石をもって俺の右腕に近づけてくる水の精霊。くそっ、こいつ俺の核がカヤノの右腕の付け根にあることをわかってやがる。しかし確かに情報もくれて、しかももてなしをしようとしてくれている相手の好意を無駄にするのはダメだ。そんなことするのは男じゃねえ!
「南無三!!」
思い切って魔石をゴーレムボディの中に取り込む。とはいってもそれだけでは何も変化がねえし、とりあえず精霊核へと魔石をくっつけてみる。俺の本体がこいつならこれで食べられるはずだ。
・・・
・・
!?
「おぉ!!甘い、甘いぞ!!すげえ、味がわかる。マジかよ!?」
精霊核に魔石をくっつけると予想通り核が魔石を吸収し始めた。しかもそれだけじゃねえ。魔石を吸収する、つまり食べる時に飴のような甘さが広がったのだ。味はレモンなどのさわやかな甘さだ。久しぶりの味覚に俺の体が打ち震える。
あぁ、久しく忘れていたが味わうってこういうことだったんだよな。
「良かったですね、先生。」
カヤノがポリポリとウィードを食べる音を聞きながら、俺は存分にこの感動を味わうためにゆっくりと魔石を食べていくのだった。
「へ~、魔石初めて食べたんだ。」
「おう、今まで魔物を倒して手に入れたことはあるが食べようなんて思わなかったしな。」
テーブルの上に用意された魔石はもうない。俺が味わいつくしたからだ。
もっと食べたいという気持ちが無かったわけじゃねえが、宿に帰れば今までためた魔石もあるし、それを少しぐらい食べても問題ねえだろと我慢した。水の精霊曰く、魔物によって味が変わるらしいのでどんな味があるのか楽しみだ。
いや~、俺の正体も知れたし魔石を食べられるということも知ることが出来たしここに来たのは正解だったな。
俺が満足していると、いつの間にか仲良くなったのか一匹の妖精がカヤノの手にとまって休んでいた。カヤノもその精霊がびっくりしないように左手を動かさないようにして見ていた。なんていうか和む光景だ。
「そういえば!」
突然大きな声を出した水の精霊のせいでびっくりした妖精が落下しそうになったのを慌ててカヤノが助ける。そして非難するような目で水の精霊を見た。しかし妖精にとってはそれも面白かったのか笑っているし、水の精霊も気にした様子は無かった。
「土の妖精はどんなのなの?姿が見えないよ。」
「んっ、どういうことだ?俺は妖精なんていないぞ。」
俺の答えを聞いて小首をかしげた水の精霊は、しばらくして自分自身で理解が出来たのかうんうんとうなずいていた。
「そういえば土の精霊は魔石食べたの初めてだったよ。せっかく食べたんだし作る?」
「はぁ?」
いきなりの妖精を作る発言に意味が分からず聞き返す。水の精霊のわかりにくい説明を簡単にすると、魔石を食べたりしたときの力を利用して精霊は妖精を生み出すことが出来るそうだ。ちなみにこのことを聞くだけで結構な時間を使った。何と言うか水の精霊は俺が知っていることを前提に話してくるのでわかりにくいのだ。
「だからポンって感じだよ。ちゃんと作る妖精をイメージするんだよ。」
「いやその効果音はどうなんだよ。」
「うわ~、リク先生の妖精ですか。楽しみです。この子たちみたいに可愛いキャラクターだといいですね。」
「可愛い、可愛いって。」
「当然、当然。」
「だー、うっせえ!集中できんだろうが!!」
「キャー」と言いながら妖精たちが逃げ回っていく。くそっ、あいつら俺が怒るのを楽しんでやがる。それにしても妖精のイメージか。かっこいい奴にしたい気もするが何かいいやつがあったか?キャラクター、キャラクターねぇ。
おっ、そういえば俺の消防にもゆるきゃらがいたな。あの着ぐるみに入って地域の駅伝に出るのが伝統だったよな。だから汗のにおいとかでくっせえんだよな。クリーニングに出すと馬鹿みてえに高えし。ファブってもあんまり効果がねえんだ。あれは一種のトラウマになるがまあ今となっては笑い話だな。ハッハッハ。
「あっ。」
「えっ?」
俺の目の地面がもこもこと盛り上がっていく。ちょ、ちょっと待て。俺は作る気なんてまだ無かったんだ。ノーカンだろ、ノーカン。せめてあいつはやめてくれ!!
俺の願いも届かず盛り上がっていった土は次第に形を作っていく。それは30センチほどの俺が見慣れたあのゆるきゃらの縮小版。地域の住民には微妙と評判のあいつだ。
「棒サイちゃん・・・」
そこには電信柱のような縦に長い寸胴ボディに消防の活動服(オレンジと紺の消防士たちが普段着ている服)を着て、なぜかしっぽがドリルになったサイが俺を見ながら敬礼を決めて立っていた。
ついに登場した愛らしいマスコットキャラクター。そしてその勢いは止まらず生みの親であるリクの人気をも食いつぶしていくのだった。人気の奪還を謀るリクに起死回生の一手は打てるのか!?
次回:同じ名前のゆるきゃらいないよね!?
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




