とりあえず外街が変わり始める
予約投稿を失敗したよ!
二回も嘘予告を書き忘れて投稿したよ!
死刑だね、死刑!
すみません。後日埋め合わせます。
外街の崩壊から1か月経過した。
しばらく救護所で治療の日々を続け、兵士から治療師としてスカウトされかかったり、岩さんと姉御と再会したり、フラウニとおしゃべりしたりしながら過ごしていた。事態が事態だけに喜ぶことは出来ねえが、カヤノの経験としては良いことだったと思う。対人対応的なものを含めてな。
心配していたカヤノへの勧誘だが、もちろんそれなりにはあったのだが何とかなった。しかしその理由がひでえんだ。いやもちろんカヤノがダブルだと言うことがばれたわけじゃない。カヤノの年齢が問題だったのだ。
今、カヤノは8歳なのだが、この世界では10歳になって祝福を受けるまでは人じゃあないらしい。それならなんなのかと言われると神の子と言う扱いになるそうだ。神の子だからいつ神様から招かれてしまう(まあ簡単に言えば死んでしまう)かわからないので、兵士や冒険者なんかの危険な職業には就けないらしい。
神父からも勧誘を受けたが俺とカヤノは全力で逃げた。だって教会関係者からはダブルはかなり嫌われているみたいだしな。そんなところへ行けるわけがねえ。まあ神父はしつこくなかったのでそれは良かった。
それにしても神の子なんて言う言葉を聞くとは思わなかったな。日本でそんなことを言ったら笑われるレベルだ。ああ、でもお七夜なんていう風習は残ってたな。あれの拡大版か。やっぱり子供の死亡率が高いとそんな風習が出来るのかもしれん。
それとこの崩壊から大きく変わったことがある。
1つは外街の外側に新たに防壁を作る工事が始まったことだ。領主肝いりの工事らしく、この崩壊で職を失った外街の住人のほとんどがこの工事に従事している。仕事を与えるための公共事業的な感じか?まあ街の範囲や防衛力も上がるだろうしWin-Winの関係って感じだな。働いている人には給料も食事も出ているそうだし少なくとも食うに困っている奴はいないみたいだ。
で、もう1つ変わったのは避難民用の住居が建てられたことだ。俺はてっきりこれも領主がしたのかと思っていたのだが、なんかアーレリウス商会って言う大きな商会が先導して立てたらしい。一応家賃も取っているようだが、そこまで多く無いようだし、それにこの寒空の下野宿し続けるよりは仮設でもよっぽどましだ。赤ちゃんがいる家族もいるんだ。そういう奴らには厳しいだろう。
一応領主が立てた住居もあるんだが、それよりもアーレリウス商会の立てた建物の方が人気がある。家賃はほとんど変わらないらしいが、使い勝手がいいらしい。それとアーレリウス商会が建てた建物が防壁の門へ続く道の周辺に建てられているのもその理由だろう。人が集まるところは商売するにしても買い物するにしてもなにかにつけて便利だからな。
俺の通りにある店も再建しているのは数えるほどしかない。いち早く営業を再開したのは形が残っていたおばちゃんの宿だ。そのまま使って大丈夫なのかとも思ったが、ちゃんと大工っぽい奴が確かめていたので問題ないんだろう。おばちゃんは一見きつく見えるが客に優しいツンデレだからな。そこらへんはしっかりしているはずだ。
あとは親父の肉屋とその向かいにある八百屋、カヤノに冷たくした服屋なんかがすでに営業を再開しており、火事になりかけていた食堂は再建中だ。まあ食堂の兄ちゃんは再建する横でしっかり屋台を出して稼いでいるので改めてこの世界の人は強いなあと感じた。
後は道も変わったな。街の外の街道はもちろん変わらないが、今までのメインロードはしばらく直進し、それから右に曲がってしばらく歩き、次は左に曲がってまたしばらく行くと門へと着くというわかり難い道だったのだが、それが一直線の太い道になった。まあ新しい防壁を作るなら物の運搬は直線の方が楽だし、街のメインロードになるんだからこれまで以上に馬車が行きかったりすることを考えると太い方が良いだろう。今までは馬車がすれ違うための退避場所で待つなんてこともあったしな。
もちろんその道を作るために家に住めなくなった住人もいるわけだが、まあほぼ全壊だったし新しい住宅に優先的に住めるってことで手を打ったようだ。建替えるにはどうしてもまとまった金がかかるし安く入居できる家があるならそっちを取るわな。
それにしてもこの外街の原因不明の崩壊と新しい防壁の拡張及びその街造り、タイミングが良すぎる。邪推するなら領主が新しい防壁の工事に邪魔になる外街をわざと崩壊させたとかいろんな可能性が考えられるが、さすがにそれは無いだろ。
まあもともと計画だけはあったがそのまま放置されていたのを、今回の出来事が起きたので街の整備と防壁造りを避難民の生活を助ける公共事業として始めたんだろう。そう考えるとこのバルダックの領主って言うのは人情味があって、さらに決断力のある有能な奴なのかもしれん。いや、街の領主をしてるんだ。有能なのは当たり前か。
まあいろいろ変わった外街なんだが、カヤノがどうしているかと言うと・・・
「おはよう、リク先生。」
(おはよう。)
おっ、ちょうど良くカヤノが起きたな。
まあこの通りというか今まで通りおばちゃんの宿の外で眠っている訳だ。本当ならカヤノにも家に入って欲しかったんだが、優先されるのは家族連れだった。それでもカヤノの順番が回ってこないって訳じゃあないんだが、カヤノのような孤児は共同の家で生活するようになっていたため諦めたのだ。それにカヤノもおばちゃんの近くがいいって言ったしな。
カヤノは「んん~。」と声を出しながら猫のように背伸びをすると、そのまま白い薬草をもしゃもしゃと食べ始める。最近のカヤノの朝食はこれだ。
そうそう、地下の薬草畑なんだが外街が崩壊してしばらく行けなかったので4日ぶりに言ってみた時に俺は悲鳴を上げた。だって壁一面白い薬草だらけになってたんだぜ。壁って言うか天井まで埋め尽くされていたからな。脅威の繁殖力だ。
俺はプチプチと天井から抜いていったんだが、天井の一面を抜いてもまた翌日にはすべて覆われているって言う、どうすんだっていう状態になったんだ。カヤノが1人で食べるにはとても多すぎて消費しきれないので、カヤノに薬草の保管方法をフラウニから聞いてもらって現在は少しずつ減らしている最中だ。
ちなみに薬草の保存方法は月光を浴びせながら一晩乾燥させると言う何というかお手軽な感じだった。これをするとなぜか薬草がドライフラワーみたいにカリカリの状態になるんだ。こうなるとよほどのことが無い限り数年は保存できるようになるそうだ。白い薬草でも大丈夫なのかと少し不安になったが、試してみたら普通に乾燥できたので今は地中に保管庫を作ってそこに放り込んでいる。腐るわけでも無いので何かあった時の為に増やしておくつもりだ。ちなみに食感が変わるってことでカヤノにも好評でたまに夜に作った半分くらいを食べられたりする。いや、まあいいけどよ~。
「じゃあ行きましょうか?」
(おう。)
食事?を食べ終えたカヤノが立ち上がり、寝ていた布団を廃材で俺が作った物干しに干してから歩き出す。ちなみに雨露のしのげるちっちゃな小屋を作ろうとしたらおばちゃんに怒られたのでそれは断念した。いいアイディアだと思ったんだけどな。
カヤノと変わってしまった外街を歩き街の外へと出る。街道付近では既に防壁の基礎工事が始まっておりそこかしこに建材が置かれているがまだ朝も早いので工事は始まっていない。その横をすり抜け街の外へと出ると元々は家があった辺りに広大な畑が見えるようになる。何を隠そう俺が作った畑だ。
この畑は避難民の中から食料が足らなくなるんじゃないかと言う噂が出始め、カヤノがそれを心配していたので夜中の間に俺が作ったのだ。あの時はカヤノにも手伝ってもらって夜中の間に地面を耕しまくったんだよな~。その広さ大体100ヘクタール。東京ドームで言うと大体20個分くらいの広さだな。いや~、あの時は頑張ったぜ。カヤノも眠そうだったけど満足そうに笑ってたしな。
もちろんそんな畑をカヤノだけで管理できるわけはねえから耕すだけだ。(好きに使え)って言う文字を残しておいたら兵士に発見されて今は領主が主導となって畑を作っているので食料に関しては多少改善されるだろ。俺は地面であって農家じゃないから専門家に任せた方がいいだろと面倒ごとを押し付けた感じだな。
こんな大胆な方法をとったのは、ゴーレムに助けられたって言う人がたくさんいて、それは精霊さんに現身ではないかと言う噂がまことしやかに流れまくっていたからだ。俺が本当に精霊なのかは知らないが、勝手に何かしてもとりあえず精霊さんのおかげだって思ってもらえる状況はある意味で楽だ。ちなみに作った畑も「精霊の畑」なんていうこっ恥ずかしい名前がついているしな。
後は俺が見つからないように注意すればいいだけだ。まあ信仰の対象でもあるらしいし捕まえるような奴はいないと思いたいがな。
そんな精霊の畑を横目にカヤノは自分の畑へと向かう。広さを4倍ほどに拡張した畑を世話して森へと向かう。さあ、今日も一日薬草採取をがんばりますか。
リクは知らなかった。自らが育てる存在が人々にとって脅威となる者であることを。愛くるしいその姿は擬装であることを。
次回:白き侵略者
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




