とりあえず復興を進める
翌日、朝食を食べた後はエルフの里の荒らされた畑などから食べられるものを収穫することにした。しばらくは備蓄で過ごせるかもしれねえが食料の確保は重要だしな。拘束していたハイエルフたちも抵抗するような様子は見えなかったので開放し、その収穫を手伝わせた。そのことを嫌がるハイエルフももちろんいたのだが、俺の命令には逆らえないようで渋々といった感じではあったが手伝っていた。精霊信仰に感謝した瞬間だったな。
普段は食料などを上納されている立場のハイエルフたちがエルフたちに収穫の仕方などを教わり、おっかなびっくり農作業をしている姿はなんとなく微笑ましいものだった。最初は渋々だったハイエルフも収穫作業を続けるうちに楽しさがわかってきたのか終わりのころには率先して動くようになった奴もいた。
俺もカヤノと久しぶりに畑で作業できたので満足な一日だった。ちなみに夕食で収穫された野菜なんかが出されて、最初、渋々手伝っていたハイエルフのうちの一人が「ダメだ、私には食べられない。」と言い出したのにはちょっと笑った。結局食べていたが涙を流していたので、あいつは今日一日で変わったんだろう。たぶんいい変化だ。今後に期待だな。
ちなみに夜に一応例の奴らを見に行ったがいつも通りだったので放置しておいた。
その日の夜は1号と3号を連れて防壁の外へと木を伐りに行った。まあ乾燥するまでは使えねえんだが、今後家を作ることなどを考えるとどれだけあっても足りねえだろうしな。せっかくだからもうちょっとファンタジーっぽい家を再建してほしいもんだが、まあそれは余裕が出てきたらだな。
ちなみに埋めたはずの魔物の死体がさっそくゾンビになって這い出してきたのでとりあえずぶっ倒しておいた。魔石を取ったら動きが止まったのでもしかすると魔石を取り除かないで埋めた魔物がゾンビになるのかもしれんな。まあそう大して強くもないのでコンスタントに倒していけばいいだろう。
その翌日は収穫作業の終わっていない畑の収穫をしつつ、もう終わった畑へ種をまく作業に入った。土を耕すのは俺の得意分野なので張り切って作業した。ハイエルフの中でも土魔法を使える奴がいたのでその辺は順調に終わり、種まきなどを和気あいあいとするエルフとハイエルフの姿が見られるようになった。一緒に農作業をするようになってハイエルフの中にあった選民思想的なもんが少し和らいだようだな。もちろん完全にとは言わねえし、個人によってだいぶ差はあるんだがこういうのは時間がかかるもんだからな。じっくりと見ていけばいいだろう。
ちなみにあの二人は以下略。
そんな感じでエルフの里の復興をさせながら1週間が過ぎた。一応俺がエルノのところにも行ってことの顛末を伝え、しばらく戻るのが遅れそうだと言っておいた。もちろん肉は持参したぞ。もっていかねえとどうなるかわかったもんじゃねえしな。そのおかげかは知らねえがエルノは満面の笑みで「待っていますから大丈夫だとカコウ様にお伝えください。」と言っていた。長くなるようだったら定期的に肉を届けると約束してエルノとは別れた。
エルフの里の復興は順調だ。家については以前に切って乾燥させていたらしい木材を運んで作り始めたところではあるが、さすが魔法が得意なエルフというべきか風魔法で木を切断したりと一風変わった大工仕事を見せてもらった。これなら再建も早いだろう。問題は木材が不足していることだな。こればっかりはどうしようもねえしな。しばらくは仮設コテージで我慢してもらおう。
畑についてはかなり順調で、ハイエルフたちも率先して作業を行っているため植え替えまですべて終わっている。このままいけば立派な農夫になってくれることだろう。
地下で白い薬草を栽培することで元気ジュースも作れるような体制を整え、とりあえず俺たちが出来ることはなくなった。いや、出来ることはあるんだけど、やっぱり当事者であるエルフとハイエルフが動くべきで俺たちが余計な口出しをしすぎるのも問題だしなと思うとできることが限られてしまうのだ。
ということでだんだんと俺たちは手持無沙汰になり始めていた。
「ねえ、今日は何をする?」
「うーん、僕は素材もそろってきましたから調薬でもしようかと。ハイエルフに伝わるレシピを教えてくれるそうなので。」
「じゃあ私たちは外で素材集めでもする?」
「そういえば森の奥にダンジョンがあるんだよな。行ってみたい気もするがどこにあるのかいまいちわからんし。それを探しつつ素材集めってことでいいか?」
ミーゼと俺たちのお世話係に任命されたニーアの了承が取れたので、薬草や調薬に使う素材なんかを採取しつつダンジョンを探すことにした。もちろんそんな簡単にダンジョンは見つかるはずもなかったが素材については十分すぎるほど採取できた。カヤノも喜んでいたし充実した一日だったな。
そして魔物たちを撃退してから2週間が過ぎた。相も変わらず2人はって・・・
「お前らいい加減にしやがれ!こっちがあくせくエルフの里の復興を手伝ってんのに遊んでんじゃねえよ!」
「いや~、別に遊んでるわけじゃないんだけどね。」
「何を言っておる。まだ1月も経ってはおらんではないか。」
「人間からしたら2週間も戦い続けるってのは異常なんだよ。エルノも待ってんだぞ、そろそろ終われよ。」
「ううむ、エルノをあまり待たせるわけにもいかんな。ではこれで最後だ、閃光斬!」
カコウが俺の目には見えないほどの速度で何かをする。おそらく剣を振ったんだろうな。先ほどまで笑って立っていた風の精霊が紙吹雪みたいにばらばらになって宙へと舞っていく。おぉー、すげえ技だ。なんというかスプラッタ映画に出てきそうな残虐極まりない技なんだがこの程度の感想になるくらいにはこいつらの戦いを見続けた俺は正直褒められてもいいと思う。
「うわー、やーらーれーたー。」
「いや、お前。普通そこまでばらばらにされたらそんなこと言えるはずがねえからな。」
俺の突っ込みに応えるように次の瞬間には元通りに戻って笑っている風の精霊。本当に不毛だな。その能力をもうちょっと生産的なことに使えよと言いたくなる。
机と3人分の椅子を作り出して、机の上に魔石を置く。とりあえず休憩と食事だ。いわゆるビュッフェスタイルだな。反論は受け付けん。
風の精霊とカコウがそれぞれ椅子に座ったのを見計らい切り出す。いい加減に終わりにしてえし。
「で、お前はなんでカコウを閉じ込めたりしたんだ?」
「そりゃあもちろん楽しいから・・・」
「嘘だな。ここ最近結構な時間お前たちを見ていたんだぞ。お前がわざとカコウに斬られているってのもわかってる。なにせ無抵抗だしな。」
「え~、そういう趣味なのかもしれないじゃん。」
「はぁ~、わかってねえな、お前。そういう趣味の奴はもっと嬉しそうにするんだよ。お前みたいな作った笑顔で俺を騙せると思うなよ。」
俺の言葉に風の精霊が押し黙る。今回の場合はどちらかといえば俺の性癖に近いからな。同好の士というか近い性質を持っている奴は何となくわかるもんだ。ちょっとした仕草なんかに出るからな。それから考えると風の精霊は少なくともそんな趣味はない。
ということはカコウの怒りを理解して抵抗することなく斬られていたってことになる。つまり・・・
「なんか理由があんだろ。話してみろよ。カコウだってだたのいたずらで閉じ込められていたよりも明確な理由があったほうが納得できるだろ。」
「まあ、そうだな。だとしても簡単には許すことは出来んが。」
俺たち2人の圧力に負けたのか、風の精霊は急に顔から笑みを消し、少し疲れたような表情で小さくため息を吐き、そして話し始めた。
長く続いた戦いが終息を迎え、ついに風の精霊の口から真実が語られる。その意外な理由にカコウは首を傾げるばかりだったが密かにリクは納得するのだった。
次回:植物姦の変態は隔離すべし
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。