とりあえず色々聞かれる
またまた投稿失敗しました。
申し訳ありません。
ニーアが正気に戻ったのは、やり遂げた棒サイちゃんずが健闘を称え終え、2号がカヤノの義手へと戻ってすぐのことだった。
「あれっ、今、変な妖精さんたちがラインダンスしていたような・・・。そんなわけないよね。疲れてるのかな。」
「いや、変ってなん・・・」
「ちょっとやめときなさいよ。ただでさえ進んでない話がまた長くなるでしょ。」
袖を引っ張って俺の言葉を止めたミーゼがひそひそ声で告げる。確かにちょっと見た目は変わっているかもしれんが、良くいうことを聞くいい奴らだし、努力の結晶であるラインダンスを幻覚かのように言われるのは思うところはあるが、ミーゼの言い分にも一理ある。仕方ねえ。ここは我慢するか。
「いえ、普通にさっきまで棒サイちゃんたちがラインダンスしてましたよ。」
「「カヤノ(くん)!」」
「えっ、えっ?」
あっけらかんと告げたカヤノによって再び混乱しだすニーア。そして俺とミーゼに同時に名前を呼ばれこっちも混乱するカヤノ。
この場が落ち着くまでにもうしばらく時間がかかりそうだな。俺は小さくため息をついた。
「ほへ~。それでは本当にリク様は精霊様なんですね。」
「ああ。あんま俺自身は実感がねえんだけどな。」
とりあえずミーゼと協力してカヤノとニーアを長の屋敷の中へと連れ込み、俺たちが最初に案内された部屋へと入り、座らせておいた。
どうせ時間がかかるだろうからミーゼに二人を任せ、俺は先にバザー会場の片づけをしておいた。まあとはいってももう慣れた作業だし、商品台とかにしていた地面を平らにするだけなのですぐに終わったんだが。
そして部屋に戻るとそこにいたのはなぜかきらきらとした目で俺を見つめるニーアだったわけだ。
「リク様は普段は何を食べられるんですか?」
「基本的に魔石だな。他は味がしねえし。」
「へ~、味がしないんですね。じゃあ・・・」
まるでアイドルを前にしたファンのように質問を繰り返していくニーアの様子に、こっそりとカヤノとミーゼに助けを求めれば二人ともに首を横に振られた。やっぱそうだよな。
まあちょっとこうなるかもしれんとは予想していたんだ。
エルフ族に関してはあんまりギルドの資料室にも参考になる物がなかったんだが、少ないながら判明したのはエルフが精霊信仰であることと、精霊に力を貸してもらう精霊魔法が使える者がいるというものだった。
まあ信仰って言うぐらいだからそれなりに大事にされてんだろうし、俺が精霊ってわかった場合、むげにされるようなことは無くなるだろうが、逆に奉られたりとか面倒なことになるかもしれんと注意はしていたんだ。
だからこそある程度の仲になるまでは打ち明けるつもりはなかったんだがな。まさかいきなり「様」づけになるとは思わんかった。しかし恐れ敬われるって感じじゃなくて、街で芸能人に会っちゃいましたって感じなのですこしほっとしたのも確かだ。それでも少し居心地は悪いがな。
「後はえっと、えーっと・・・あっ、そうだ。」
怒涛の質問攻めに答え続けること数分、俺自身よくわかってないから答えられないことも多かったんだが、何とかニーアを満足させることが出来たようだ。
質問することが思いつかずに腕を組んで頭をひねっていたニーアが、何か思いついたようにパンパンと頭の上で手を叩く。
「おいで、ウィン。」
その言葉に応えるように、窓もドアも締まり密閉されたこの部屋にそよそよと風が吹いた。そして本当にいつの間にかニーアの肩の上に見たことのある妖精が座っていた。
「水の精霊さんの妖精さん?」
それを見たカヤノが小さな声で呟いたのを俺の耳が捉えた。そうだ、確かに見た目はほぼ一緒だ。人形のような小ささで、背中には透明な羽がついている。顔だちもそっくりなんだが唯一違うのは、あちらは全体が青色っぽかったのに比べ、こっちの妖精は薄い緑をしているってことだ。
「私の契約妖精のウィンだよ。ウィンは風の精霊様の妖精なんだ。」
ちょっと胸を張るニーアに合わせるように、ウィンがその場でくるりと回転する。そしておとなしくニーアの肩に再び座った。
何というか自由を体現しているかのような水の精霊のとこの妖精に比べるとおとなしい奴だ。それにしても・・・
「契約妖精って何だ?」
「うーん、その言葉の通り私と契約した妖精ってことだよ。ごはんとかを私が用意する代わりにお願いを聞いてくれるんだ。あっ、でも強制は出来ないからね。それに契約するにしても妖精に気に入られないといけないから私よりも年上なのに契約精霊のいないハイエルフもいっぱいいるし、エルフで契約妖精のいる人なんてめったにいないんだよ。」
「えっと仲良くなったから助けてあげましょうって感じ?」
「そうそう。」
ニーアとウィンがシンクロするように首を縦に振るのをちょっと感心して見る。確かに息はぴったりとあっているな。
それにしても契約妖精か。ということは棒サイちゃんずも誰かと契約できるってことか。なんか俺を慕ってくれているから出て行っちまうと考えると寂しいもんがあるな。いや、別に必ず契約しなくちゃいけないってこともないだろうしあいつらはずっと俺と一緒だ。
「あれっ、エルフって精霊魔法を使うって・・・」
「そんな!とんでもない!!」
ニーアの話を聞いて首をかしげていたミーゼが発した質問を、慌ててニーアが遮る。両手をぶんぶんと振って滅茶苦茶必至だ。
「精霊様に手伝っていただくなんてハイエルフの中でも族長くらいなものです。ただのエルフが精霊様に手伝っていただくなんてありまえせん!」
「どうどう。落ち着け、ニーア。」
興奮して言葉が怪しくなっているニーアを落ち着ける。「どうどうってそれはどうなのよ?」とミーゼの声が聞こえたが無視だ。ちょっと自分でもそう思わないでもないが無視だ。
しばらくして落ち着いたニーアは先ほどまでの興奮具合が嘘のように落ち込んでいた。
「エルフが精霊魔法が使えるっていうのは昔、外に出た一人のエルフの大ぼらなんです。確かにその人には契約妖精がいたらしいですけれど、その妖精がしたことを精霊様がしたと言って広めて。何のためにそんなことをしたのかわかりませんけれど、その人のせいで外では妖精と精霊様を誤解する方が多くて。私たちも違うと言っているのですが・・・」
「一度広がった情報は消せないと。」
「はい、申し訳ありません。」
俺に向かって頭を下げるニーアの姿に思わずその頭を撫でる。別にニーアが誤りを広めたわけじゃねえし、俺にとっては別にどうでもいいことだしな。そんなしょげた姿をする必要は全くない。
ちょっと驚いて俺を見た後、嬉しそうに頭を撫でられ続けているニーアに少しほっとする。
それにしてもそのエルフは本当になんでそんなことをしたんだろうな。自分の権威づけをしたかったとかそんな理由か?別に他の奴らからしたらどうでもいいことなのかもしれんが、精霊信仰のエルフからしたら大問題なんだろうな。
広がってしまった情報を訂正するってのははっきり言って困難だ。ここにはネットやテレビなんてもんもねえしな。面倒なことをしたもんだ。
「まぁ、別にいいだろ。それよりそろそろ俺の質問に答えてくれるか?」
「あっ、そうでしたね。アルラウネの里は確かにこの森の奥地にあります。ただ本当に外に出てこない種族なので族長から紹介してもらった方がいいと思います。」
「ってことは?」
「はい、ハイエルフの里に案内します。」
その言葉に俺は久々に事態が前進する手ごたえを感じた。
ついにハイエルフの里へと行くことになったリク一行。幾多の困難を乗り越えたどり着いたその里で彼らは驚愕の光景を目にすることになる。
次回:ショタロリ天国
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




