とりあえず、エルフと友好を深める
すみません、予約投稿を失敗しました。
なんとか完成しました。ご迷惑おかけしました。
ウルフェル騒動があってからはや1か月が経過した。
もちろんあいつが死ぬなんてことはなく、たまに街で会っては元気に絡んできている。ものすごくうっとうしい。
よくよく聞いてみたらウルフェルの仲間の2人にちょうど子供が生まれるらしくそのために一時的にパーティを解散しただけらしい。全くもって紛らわしい。
ちなみになんで1人で出て行ったのかを聞いてみたら
「勢いっす。」
という答えが返ってきたので、思わず殴り倒した俺は悪くないと思う。
ステゴロ選手権の景品である望みのものについてはアルラウネの里に関する情報を求めたんだが犬の獣人族の里には全く手掛かりがなかった。一応獣人同士のネットワークがあるらしいのでその辺りも含めて引き続き調べてくれているらしい。街ではあんまり情報を期待できない状態だからな。少し期待している。
とはいえこうまで手掛かりがないってのは想定外だったな。てっきり同じ森に住む獣人なら何がしかの情報を持っていると思っていたんだが。
「ほら、リク。さっさとお釣り。」
「へいへい。」
目の前のバーゲン品に群がる主婦の様相を呈しているエルフたちの姿に現実逃避していた思考がミーゼに無理やり戻される。目の前に差し出されたお金と商品を確認し素早くお釣りを計算する。小学校程度の計算だ。暗算でも間違えるはずがない。
「ほいよ。」
「ありがとうございました。」
釣銭をお客に手渡したミーゼが愛想よく挨拶をしている。こいつも慣れたもんだ。
既にエルフの里に来るのはこれで5回目だ。まあそれだけバザーを繰り返していれば慣れもするか。そんなことを考えながらちょこちょこと商品補充なんかに動き回っているカヤノを見る。客の邪魔にならないように動くその姿が妙にしっくり来ているのは今までの経験上なんだろうな。そんなことを思いついてしまい少し落ち込む。
まあ落ち込んだから客足が途絶えるわけでもなし、次々と商品が売れていく。とはいっても今回持ってきた商品は3種類しかない。砂糖、お菓子、小麦だ。もちろん現在進行形でどんどんと売れていっているのは砂糖とお菓子であり、小麦についてはそのついでといった感じだ。一番多いのが小麦なんだが大丈夫なんだろうな?
少し不安に思いつつもお客をさばいていく、砂糖が売り切れ、お菓子が売り切れると先ほどまでの喧騒が嘘のように静かになり、穏やかに小麦を買っていくエルフたち。ある意味怖いな。
会計を急ぐ必要もないのでゆっくりと3人並んで椅子に腰かける。
「嵐だったな。」
「そうですね。」
「それより小麦はちゃんと売り切れるのよね。」
「知るか。ニーアに聞け。」
小麦しかないことがわかると帰って行ってしまう人がぽつぽつといる中で売れていく小麦に不安を覚えたのは俺だけじゃないようだ。とはいっても俺にそんなことを聞かれても知らんとしか言いようがない。小麦を買ってきたのは俺の判断じゃなくてニーアに頼まれたからだからな。
2回目以降、要望の多かった砂糖とお菓子は定番となり、その他に塩、野菜、小物などを持ってきていた俺たちだったが、前回の帰り際にニーアに次は小麦をたくさん買ってきて欲しいと言われたのだ。
塩については当面の分は確保できたらしく、しばらくは大丈夫なのだそうな。
この小麦なのだが、はっきり言って利益だけを考えるなら売ろうとは思わないだろう。その量に対しての値段が安すぎるからだ。いくら差分で儲かるとはいってももともとの値段が低ければ利益も低くなるのは当たり前だ。
俺たちに頼むときにニーアが申し訳なさそうに、しかも「出来れば」なんて言ったのはその辺りを理解しているからだろう。
一応理由を聞いてみると、エイトロンの街へと武器や防具を売りに行ったエルフが買ってくるものの大半が小麦なのだそうな。確かにこの広さで全員分の1年間の小麦を育てることは厳しいだろう。しかし小麦は安い。売る物に比べて買う物の大半が安い小麦、これがエルフの里でお金が余っている理由だったみたいだ。
俺たちのように定期的にエルフの里に来る者もいないではないらしいが、大半が奥地へと進むための宿を借りに来る者たちばかりで、バザーを行うためにわざわざ来るようなもの好きは珍しいらしい。なんで利益が出るのにそんなことになってんだと思ったんだが少し考えて理解した。
簡単に言えばこの里の立地条件のせいだ。元の値段の2割増し程度で売れるとはいえ、それを運ぶのに馬車などは使えず人力のみ。当然運べる量は少なくなるし、同じものを運んでいてはそのうちに需要を満たしてしまい売れなくなってしまう。着くまでには魔物のはびこるユーミルの樹海で必ず野営する必要があるため普通の商人なんかには厳しいだろうし、冒険者なら魔物を倒して稼いだ方がよっぽど効率が良さそうだしな。
まあただの予想だが大きく外れてはいないと思う。
そんな理由もあり定期的にバザーをしに来る俺たちは珍しいようだ。そしてニーアが俺たちに頼んだ小麦を頼んだのは里の住人が街へ行くときに小麦以外のものを買ってこれるようにという気遣いからだったのだ。
見た目に反して意外と長をしてんだな、と感心したのは本人には内緒だ。
そういった理由を聞いた後、ミーゼが「じゃあ私たちがそれを買ってくればいいんじゃない?」と聞いたのだが、それに対してニーアは首を横に振った。そして1人の男のエルフのところに案内してくれた。街へと行き来している役目というそのエルフの男は心なしかやつれているように見えた。そして事情を説明したニーアに促されてその家の中に案内された俺たちは声を失った。
その部屋には壁中にペタペタと紙が貼られていたのだ。しかも一枚一枚に細かい文字が書かれており手じかにあったそれからその全てが買ってきてほしいもののリストであることがわかったからだ。しかも注文が細かい。
「えっとこれが今のところ里の人の欲しい物リストだけど出来そう?順番とかもあるし個人の嗜好とかも考えないといけないけど。」
そう言ったニーアに俺たち全員が一斉に首を横に振ったのは言うまでもない。それを見た男が残念そうに肩を落とすのが哀愁を誘った。突き上げとかあるんだろうな、可哀想に。
まあそんな経緯もあり、儲けにはならないがエルフとの交友を深める意味も含めて小麦を仕入れてきたわけだ。量については多ければ多いだけ嬉しいとのことだったのでとりあえず100キロほどだ。俺の背負う荷物がほぼ小麦になったが重さは特に問題がねえしな。
着実に売れていく小麦を見ながらこれからの事をゆっくりと考えていた。
「お疲れさま。」
「まあ慣れてきたから大丈夫だけどありがとう。」
「ありがとうございます。」
「おう、悪いな。」
商品がほぼはけたくらいの時間にニーアがお茶を持って俺たちの所へとやって来た。何というか本当に長らしくない奴だ。子供がお手伝いしているってのがぴったりくるんだよな。
俺の分が無いのは相変わらずなんだが、もう何も言うまい。
「助かりました。これでみんなの欲しいものが買えそうです。」
「そりゃ良かった。あの男のエルフを労ってやれよ。」
「もちろんです。」
本当にわかっているのかちょっと心配になりそうなほど即答したニーアの姿に苦笑する。そして先ほどからずっと考えていたことを聞いてみることにした。
「なあニーア、アルラウネの里って知ってるか?」
大量の白い粉の密輸に成功したリク。順調にそれをさばいていく彼らだったが自由にやり過ぎた彼らの前に潜んでいたケモノが爪を砥ぎ待ち構えているのを彼らはまだ知らなかった。
次回:スーパーバイオレット
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




