とりあえずバザーをする
エルフの里の中央、俺たちが泊めてもらったログハウスの手前には少し開けた広場のような空間がある。朝食の準備を終えた俺はバザーの下準備のためにここに来ていた。ちなみに朝食を用意している時にニーアが通りかかり、なぜかニーアの分まで用意すると言う話になった。まあ2人分も3人分も作る手間はあんま変わらねえし別にいいんだが。
俺の準備する様子を楽しそうにニーアが見ていたので、ついでと思ってバザーのことについて聞いてみたんだが、普通はこのログハウスの前のこの広場にござを敷いて売る感じなんだそうな。まさしくバザー、というかフリーマーケットみてえだな。
しかし今回俺たちが持ってきたのは食べ物関係が8割、調理道具などの金属製品が2割なので日本人の俺としてはござの上だとしても地面に置くってのはちょっと抵抗があんだよな。バザーの時間に関しても、特に決まってねえって話だから長時間になる可能性もあるし。
「じゃあやるか。」
スーパーの野菜売り場をイメージしながら腰ぐらいの高さの台を土を盛り上げて作っていく。スペースがあるので縦の陳列棚の方じゃなくて冷蔵の必要ない野菜なんかが売られている方な。見やすいように少しの傾斜と商品を種類ごとに区切る仕切りも作った。仕切りは今のところ等間隔だが並べてみて狭いと思ったところは広げればいいだろ。
一応手前には値段を書くスペースも作ったが、値段については後でカヤノたちと相談だな。まああんまり儲けるつもりもねえし、赤字にならないくらいのラインの見極めが必要か。
「とりあえず後は座るところを作っておいて・・・屋根はどうすっかな?」
座るところは円柱状の土を盛り上げるだけで終了なんだが、今のままだと直射日光が当たっちまうんだよな。ただでさえ買ってから数日経った野菜を直射日光にさらすってのもちょっと考えものだよな。
ふむ・・・。まぁ後で綺麗にしてくれれば何をしてもいいってニーアの許可はもらってるし作っちまうか。
とりあえず売り場の準備が終わったのでカヤノとミーゼを連れてきた。ついでにニーアもついてきたが。
3人は俺が作ったバザー会場を見て言葉を無くしている。さすが俺の自信作だな。
「やりすぎ。」
「何でだよ。」
「どこにバザーをするって言って店を立てる馬鹿がいんのよ!」
「店なんてもんじゃねえだろ。商品棚があって、ちょっと屋根があるだけだぞ。」
「それを店っていうのよ!」
なぜかミーゼに突っこまれた。
とは言え俺は納得できない。屋根と言っても壁に囲まれたもんじゃない。壁で囲っちまうと暗くなりすぎちまうからどちらかと言えばテントのようなもんだ。屋根とそれを支える脚しかねえから店なんてもんじゃねえと俺は思うんだがな。
俺の同意者を求めてカヤノとニーアを見たが、2人は目をキラキラさせて俺の自信作を見てくれてはいるが、なんとなく俺には同意してくれそうな気はしないのでスルーすることにする。
「まあ、それは置いといてだ。」
「・・・まあいいけど。いつものことだし。」
俺が見えない箱を隣にずらすパントマイムをすると、不承不承ながらミーゼが同意したので話を先に進める。
「これが商品棚な。一応商品ごとに分けられるように仕切りもつけたからそこに並べる感じだな。手前に値段を書いておけば会計も簡単だろ。」
「そうね。値段はどうするの?」
「あんま儲けるつもりもねえんだが、相場もわかんねえからな~。とりあえずは利益を2掛け程度にして後は売れ行き次第で値下げする感じか?」
「そうね。売れ残っても困るし。ニーアはどう思う?」
「うーん、あんまり高くなければ大丈夫だと思う。商品次第だけど。」
俺たちが値段を決めるために話している間、商品棚を見ていたカヤノがゆっくりと俺たちの方へと近づいてきた。なんかちょっと申し訳なさそうな顔をしてんだがなんかあったのか?
「あの、リク先生。仕切りが邪魔でござが敷けないんですが。」
「あっ!」
「作り直しね。」
なぜか笑みを浮かべるミーゼにデコピンをしたい衝動に駆られながら俺はサクサクと仕切りを取り払う作業をするのだった。
そして始まったバザーだったが、売れ行きは順調だ。事前に情報を仕入れておいたおかげもあるんだろうがほとんどまんべんなく売れていく。まあ商品の大半が食材と調理道具のせいか、ほとんどが主婦と思われる女性陣のみでたまに覗きに来た男のエルフなんかはチラッと見て帰っちまったりするが。例外は調理道具を大量買いしていった奴くらいだ。
何に使うんだろうなと話しているとニーアが答えてくれた。さっきの男はこの里の商人みたいな奴で、この森の奥地にあると言う別のエルフの里に商品を売りに行くんだそうな。つまり仲買人ってことだな。
ちなみにニーアは何が楽しいのかわからんが俺たちの隣で足をプラプラさせながらバザーの様子を見ている。たまに住人に話しかけられているが、その時に頭を撫でられたりと本当に子ども扱いだ。それでいいのかエルフの里の長よ。まあ、嬉しそうなんで別にいいか。
商品の中で一番人気だったのは砂糖だった。一緒に見に来た仲良し奥さん仲間が先を争うように買う姿はちょっと引いた。まああんまり量も持ってきてねえからすぐに売り切れになった訳だが、後から来た客も砂糖があったと聞いて残念そうにしていたので砂糖は鉄板商品みたいだな。
それに比べて売れ行きがちょっと悪くて値下げしたのが日持ちのしない葉物野菜なんかだ。自分たちの畑でも優先的に育てているらしく、新鮮とは言いがたいので受けが悪かった。俺の予想が外れた形だな。申し訳ない。
で、ちょっと想定外だったのが塩だ。
俺たちが持ってきた塩はニーアが事前にすべて買い取った。塩の管理は長の仕事らしい。ニーアが毎月決まった量を各家庭に提供するそうだ。
塩は人間が生きるのに欠かせないもんだからな。塩が採れない樹海の中に住んでいるエルフとしては備蓄も必要ってことか。ちなみにもっと奥地にあるエルフの里はニーアのところまで定期的に塩を買いに来るそうだ。まあそれはいいんだが・・・それとは別にその時のやり取りでかなり心配事が出来たんだが。ちなみにその時の会話を再現してみると
「おっ、塩は全部ニーアが買うのか。1つ1200オルだけど大丈夫か?」
「はい、15個だから20000オルですよね。」
「違う。」
「違うわよ。」
「違いますよ。」
自信満々に間違った値段を言ったニーアに俺たち全員から同時に突っこみが入った。1200オルの塩が15個だから18000オルが正解だ。このくらいの計算ならカヤノもミーゼも暗算できる。
ちなみに最初はミーゼよりカヤノの方がこういった計算は得意だった。俺の指導のおかげだな。その事実にショックを受けたらしいミーゼは、ちょっと悔しそうに俺に授業をお願いしてきた。俺はもちろん快く引き受けたぞ。授業中は先生と呼べと言うことを条件にな。
嫌そうな顔をしながら先生と呼ぶミーゼの顔は見ものだったな。
まあそれは良いとして、ここで問題なのはニーアのことだ。比較的簡単な計算のはずなのに間違うってことは今までも高く買ったり、逆に安く売っちまったりってことがあるんじゃねえのかってことだ。
部外者の俺が言うことではないとは思うんだが、計算の怪しいニーアに塩やそのためのお金の管理を任せて大丈夫なのか?せめて補佐をつけてやれよと言いたくなる。
しかしとりあえずは様子見するしかない。実は補佐役がいるのかもしれねえしな。里の実情を知りもしない俺たちが出しゃばって印象を悪くするのは最悪からな。
昼過ぎにはほぼすべての商品が売り切れたのでバザーは終了した。利益はおおよそ8000オル。報酬の8倍って考えればなかなかの売り上げだ。
「ふぅ、ちょっと疲れました。」
「確かに。」
「まあでもいい経験なんじゃねえか。売れ筋もわかったしな。」
「お疲れさま~。」
いつの間にかニーアが用意してくれたハーブティーをカヤノとミーゼが美味しそうに飲む。俺の分が用意されてないのは俺が嫌いだからじゃないよな。俺が昨日全く手をつけなかったからそれで気を使ったんだよな。ちょっと気になるんだが。
自分の分だけお茶が無いと言う陰湿ないじめにあうリク。しかしそんなことにくじけるリクでは無かった。そんないじめに対抗するためリクは作戦を実行することにした。
次回:砂糖細工の焼きそばパン
お楽しみに。
あくまで予告です。実際の内容とは異なる場合があります。




