表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

河童少年のモイモイモイスチャー日記 其ノ十六

 なんだか政治の世界が大変なことになっているらしい。今日は呑気な日曜日、しかも三連休の中日なので昼まで存分に寝ていたかった。しかしこの状況下で寝続ける能力が、残念ながら僕にはなかった。朝イチで茨城から泳いで来た爺ちゃんが、緑の好物を両手に掲げて「キュウリノミクス! キュウリノミクス!」と叫び踊っているものだから。もちろん「ウ・ル・ト・ラ・ソウル!」のリズムで。


「ハイだろハイ、ほれ!」


 爺ちゃんはそう言いながら僕にキュウリを差し出してきた。一瞬なんだかわからなかったが、どうやら「ウルトラソウル!」の直後に来る「ハイ!」の部分をやれと催促されているらしい。


「世代じゃないんだけどな……」そう思ってあからさまにためらっては見せたものの、考えてみれば爺ちゃんのほうが遙かに「B'zを聴く世代じゃない」わけで、その言い訳は通用しないと即座に諦めた。


「キュ・ウ・リ・ノ・ミクス!」

「ハ、ハイッ!」


 爺ちゃんはサビのメロディーしか知らないので、エンドレスでサビが襲い来る殺人的システム。必然的に「ハイ!」の出番も異様に多くなり実に鬱陶しい。そもそも「キュウリノミクス」って何?


 と思って訊いてみたら、爺ちゃんは急に政治について語り出してさらに面倒なことに。これがいわゆる「籔蛇」というやつかもしれないが、河童は蛇なら怖くない。いずれにしろ、河童である以前に小学生である僕に政治は難しすぎてよくわからないけれど、どうやらユリコという人が「ユリノミクス」という謎の言葉を発したらしく、その影響で爺ちゃんは急遽「キュウリノミクス」を唱えはじめた模様。


 その前にはアベという人が「アベノミクス」と連呼していたようで、さらに遡ればレーガンという人が「レーガノミクス」とか言っていたらしいから、ならば「キュウリノミクス」はキュウリが唱えるべきだと思って僕は爺ちゃんにそう言った。


 すると「キュウリノミクス!」の後に僕が「ハイ!」と返すタイミングで、やや前のめりになったところをカウンターアタックで殴られた。もちろんキュウリで。しかも往復で。これは確実に日野皓正の影響だと思う。


 でも爺ちゃんの話を聴いていたらなんとなくわかってきた部分もあって、河童の生きやすい「河童ファースト」の世界を築くには、どうしても河童の主食であるキュウリをメインにお金を回す必要があり、だからいま必要な政策は何よりも「キュウリノミクス」なのだという。


 そこで僕は、「世界の真ん中にキュウリが一本立っている」さまを思い浮かべてみた。そしてその屹立したキュウリに、巨大化した50円玉をすっぽりはめて回してみる。全然ピンと来ない。まったくお金が回らない。そもそも世界の中心がどんな場所なのか、さっぱりイメージできないのだった。


 そんなことより何より、まずはなんとかして目の前で爺ちゃんが繰り広げているこの「キュウリノミクス」を止めなければならない。とは思いつつすっかり考えあぐねていたところに、窓の外から「い~し焼~きいも~」の声。


 ほら、秋が来た。爺ちゃん咄嗟に「キュウリノミクス」のフレーズを、石焼き芋の旋律に乗せかえて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ