駅伝大会
中学2年。7月くらいの出来事だった。
大会が終わってシード権を取った自分たちのクラブは駅伝大会の出場を許された。
その時に出るメンバーを選んだ。もちろん前回の大会で高成績を出した者だけが出る。
その中で選ばれたのが
「尾原 悠」「平岡 奈緒」「佐藤 達」「矢本 友二」「小林 悠磨」「佐藤 翔太」「馬場 朱音」
「土屋 伶汰」「平原 萌」「浅海 剛」の10人になった。
今回は10区までの選手登場で男女混合の大会になる。
7月14日。
駅伝大会が始まる時。
今回は区間で距離がかわる。
そのために誰が何処の区間を走るのかはちゃんと決めなくてはならない。
そして一週間掛けて決めたメンバーが
1区 土屋 伶汰
2区 馬場 朱音
3区 平岡 奈緒
4区 浅海 剛
5区 佐藤 達
6区 矢本 友二
7区 平原 萌
8区 小林 悠磨
9区 佐藤 翔太
10区 尾原 悠
に決まった。最悪な時点でアンカー一番距離の長くてプレッシャーの高い区間だ。
でも、コーチも皆もそれでOKと言ってくれた。
だからめげずに頑張ることにした…ついに始まった駅伝大会。
中学生の部ということも合って距離は大人ほどではない。
実力もまだまだだから距離は短い。
だけど元は短距離選手である自分がいきなり長距離の駅伝に出る。
それが一番の不安だった…
でも、コーチが「お前なら出来る」そういうからその期待にこたえてあげたくて、
皆の思いもつまった襷を受け取りたくてアンカーを引き受けた。
第1区の人が走り始めて少したった。3kmだけ合ってみんな早い。
だんだんと順位が来る中、一人の選手が体調を崩した…
それは5区を走る達だ…
5区は2番目に貴重な場所…
そこで達が下りたら棄権になってしまう…
そしてコーチはウチに話しかけてきた…
「5区、走ってくれないか…?」
そして達が苦しそうにしているのも見て断りきれずに「はい…」という返事をした…
だが5区の番はすぐに来て今からスタートレーンに行かなくちゃ行けなくなった…
そして4区を走っていた剛が襷を手で持ってつらそうな顔をしながら来た。
―――――――その襷を受け取って走り出した自分。
5区を走るのはほとんどが男子で抜かすのは難しかった…
男子と女子の実力の違いは大きすぎるから…
それでもめげずに行くと自分の得意とする上り坂のコース。
ここでほとんどの選手はペースを落とした。
ところがその反面、一人の選手だけは逆にペースを上げていた。それが自分。
上り坂だけが得意なだけだけど結構人を抜かせる。
―――――――そのあとも6区の人に襷を渡すまでの距離は上り坂が多く
上位1位で6区の人に襷を渡せた。
でも、はっきり言ってウチのチームは6区以内からは皆長距離選手でペースが速い…
あまり休む時間が無い自分はすぐにアンカーレーンに急いだ。
車に乗ってる時もコーチに「よく頑張った!」「ありがとう!」そんな言葉を貰いながら…
そして15分くらいしてアンカーレーンに来た。
まだ疲れが取れていない自分は脹脛がパンパンで歩き方がフラフラになってしまう…
アンカーということだけで練習してきたから疲れからの回復の方法が分からない…
足がフラフラするのも耐えてアンカーレーンに行く。
そしたらもう9区の翔太が向かってきてる…
やばい…まだ走り終わってから水の補給もしていない…
脱水症状になりそうな気分…
そんなこと思っていても遅く…
襷を手に持った翔太が向かってくる…
「行け!頑張れ!」
そんな言葉を残して襷を受け取った…
スタートから上手くいかず、疲れの残ってる足を動かす。
―――――10区を走る自分へのプレッシャー。
そして最後まで走り遂げれるかの不安がたまっていってしまった…
まだ疲れの取れていない足で何処までやれるか、
Short distance playerの挑戦が始まった…
―――――そしてなんとか保ち、何kmか走りきった後異変が起き始める。
目の前がクラクラして道がずれてる。
そしてその瞬間に膝と腕に激痛が走る。
――そう、倒れてしまった…その時に車から見守ってたコーチが降りてくる。
だけど、コーチが選手に触るとアウト。
棄権の合図になってしまうから…
まだ走れるし今棄権したくないと思いコーチが近づいてくるのを拒否した。
――――――そのあとはまた走り始めて半分以上は走りきってる。
あと2km!その嬉しさとともに後ろから誰かが来るのが分かる…
だけど残りの2kmはほとんどが上り坂という現実。
他の選手はさっきと同じように上り坂でペースが少し落ちる…
その時、自分のペースが上がるのが分かる。
さっきまで後ろに居た選手との距離が15秒。
結構離した。そのあともペースを落とすこともなかったが思わぬ事件が起きる。
地面のひび割れの間の大きな穴に足を取られた。普通じゃあり得ない事件…
なぜそこに大きなひび割れがあったのかは自分でも分からない…
その時、コンタクトのつけ方が甘かったのか取れてしまい視界がぼやける…
元から視力の悪い自分には悪夢になる…後ろから選手が来ているのを見えないがままに気付かず、
なんとか足を抜こうとした時に無理やり引っ張ったのが運命を変えた…
足首を思いっきり切ってしまい血が出てくる…
視力の悪い自分はその時挟撃な痛みに襲われたが
何が起きたのか分からないので抜けた足をなんとか立たせて走り出した…
あと500mのところだったのに、足を取られてる間に1人の選手に抜かされてしまっていた…
差は19秒…
あと500mの時点で抜かせるか抜かせないかの大きな賭け…
それでもまだ上り坂であったためなんとか差を縮めていった。
だけどさっき足首を切ったキズが深かったため、出血がひどく足に力が入らなくなる…
それでも、あと200mの時点…諦めずに走った。その結果何とか前に居た選手を抜かし1位に戻った。
―――でも、それはすぐに逆効果になりゴール直前で足首に力が入らず転んでしまった…
そしてさっきの選手は「よっしゃー!!!!」と叫びながらゴールしていく…
それに悔しさを感じてすぐ立ち上がりあと1mを走りきった…
でも、足が持たずゴールしてすぐ転んだ。そして泣いた…。
皆すぐに駆け寄ってくれた。そしてウチはひたすら謝った…
せっかく一位でつなげてくれた襷を2位という結果にしてごめんねって
転んで無きゃよかったのにと…
チームの皆も一緒になって泣いて
「悠のせいじゃないよ!」
と言ってくれた。
「その足首でよく頑張った!」
「まだ疲れてたのによく走りきった!」
そうやってほめてくれた。
コーチも泣きながら誤ってきた…
「状態も知らずに走らせて悪かった…
Short distance playerが長距離に慣れていないのにいきなり2回もの…
しかも長い距離を走らせて悪かった…ほんとにすまなかった!」
声が震えてるから泣きながら言ってるのは分かった。
それでも
「自分のせいですから!皆のせいなんかじゃありません!
ましてはコーチも関係ありません。自分があそこで引き受けたですから」
そういうと皆はまた泣き出した…。
足首が切れてるのも知らない自分は一回足首を掴む…
色んな所に血が垂れてるのも気付かない…
ましては今も出血してることは誰も気付かなかっただろう…
足首を掴んでた手を離す。血がついたのも気づかない…
汗で全身が濡れているようなものだったから…
気付かないうちに手についたたくさんの血で顔の汗を拭いてしまって顔が赤くなる…
それに気付いた奈緒が自分の愛用していたタオルをウチの顔に近づけて拭いてくれた…
そして水道へ行って3つタオルを濡らしてきてくれた達が一つのタオルを使って顔を拭いてくれる…
奈緒が足首を濡れたタオルで拭いてくれた。
みんな心配してくれてなんとか治療をしてくれた。
そして後になってコンタクトが取れてる自分はバックからメガネを取りかけた。
そして初めて気付いた。
足首がものすごく赤いのを…
そして道にも血があちこちに垂れているのが…
こりゃヤバイと思い、すぐに濡れたタオルを用意して地面に水を掛け血を滲ませた。
皆も手伝ってくれてすぐに終わった。
そしてそのあとは医者に呼ばれ足首の治療をしてもらい膝と腕の消毒もしてもらった。
そして、治療が終わったときに指定のウィンドブレイカーを上下着てチームごとに集合して並んだ。
そして結果発表。結果は
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区間特別賞
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第一区 土屋 伶汰
第二区 道川 豊
第三区 今井 春
第四区 朝道 冷夏
第五区 尾原 悠
第六区 矢本 友二
第七区 実花 由里菜
第八区 山本 涼
第九区 佐藤 翔太
第十区 露谷 貴史
――――――――――
総合 第二位
――――――――――
という結果になった。
自分らは第二位になった。
その結果発表してる時にいきなり倒れた…
足は麻痺して上手く立てないのだ…
立とうとしてもすぐに足がぐらつき立てない。
それを見た大人達が駆け寄ってパイプ椅子を用意してくれて座らせてくれた。
麻痺し立てなかったのは、出血が原因だったらしい。
出血してるのにも関わらず走り続けてたことで足が疲れたんだとコーチは言った。
そのあと、なんだか審査員どうしで話し合いをしてる様子。
そしていきなり審査員の方からの報告。
―――特別賞として、「尾原 悠」さんに!賞状を与えたいと思います!
その言葉を聞いたときに普通の人なら「なんでー!?」「ずるい!」という人がほとんどだろう…
ところがそうではなく、
「さすが〜!」など「やっぱりな!」などのほめ言葉がたくさん聞こえてきた。
皆ウチが走ってる時に映し出されてたモニターで走りを見てたらしい…
それで感心して泣いた人もいるとか…それと同時にみんなからの拍手で嬉し涙を流す自分…
嬉しくて審査員が話してるときも泣いていた――――普通ではありえない特別賞。
普通の陸上部とかの大会ではもちろんありえないだろう。
―――帰るときには少し安定して歩けるようになった。
そしてバスになるとき――「尾原さん!」と話しかけられる。
それは総合1位をとったメンバーだった。
そして「いい走り見せていただきました!ありがとうございました!」
そういって皆一斉に礼をしてくれた。
そしてアンカーで1位争いをした「露谷 貴史」が頭を下げて
「ありがとうございました!」という。
そして「ゴール前でよっしゃーなんていってすんませんでした!」と言ってくる。
それに対してウチは
「悔しかったけど、一位のときは嬉しいものだからねwいいんだよw
普通言うよ!誰でも!このうちでもね!」
そういうと「ありがとうございました!」そういって
「またトラックで一緒に走れること楽しみにしています!
今度はShort distance player同士で走りましょう!」
そういうと礼をして行った。
そして始めての駅伝大会は2位と言う結果だけども思い出になる大会だったと思います。
諦めずに頑張ることの大切さを知らされる大会だった――――――。
―――――――そして一回クラブに集まってみんなでウォーミングアップをしてる時
コーチに呼ばれ話をしていた…
「今日はすまなかったな。いきなり5区も走らせて…」
本当は同選手2回走るのは禁止。
でも、これは部活とかと違い規則は厳しくない。
そのあと、「足首…悪かった!申し訳が無い…」そういう。
「平気です。あの場じゃあ走れましたしね。しかも足首なんか平気です。
走ってる時気付かなかったしそんな大したことはないんですよ(笑)」
「そうか、本当にありがとう!なんとか2位だな。最後は惜しかった。
出血が無けりゃ平気だったのになぁ…」という。そんなような会話が続いて結局は終わった。
初めての男女混合駅伝大会。
苦しい思いをしながら走りきった時の最高に嬉しい思い!
また一ついい思い出が出来て最高な日になった。そう実感していた。
次回も読んでください