ACT-one ~それは小さな“鍵”~ #1ー1
こちらはいわゆる世界観の導入部分、まだかじり始めです。
それを理解した上で読み進めて頂けると幸いです。
では、長らくお待たせしました。
ACTーone、どうぞ。
[ ――システムへ進言、自爆を推奨する。
→【システム】より受信、搭乗者または本部の適任者からの承認待機……認められませんでした、自動的に却下されます、以上。]
[ ――システムへ進言、自爆を推奨する。
→【システム】より受信、搭乗者または本部の適任者からの承認待機……認められませんでした、自動的に却下されます、以上。]
[ ――システムへ進言、自爆を推奨する。
→【システム】より受信、搭乗者または本部の適任者からの承認待機……認められませんでした、自動的に却下されます、以上。]
……一定時間経過、任務全行程実行不可能領域に到達。
自動的に任務失敗とみなし、システムダウン実行。
機体損傷増加。
データ保護のため、保護プログラム第一フェイズ、本部にデータを送信開始――本部からの応答なし。
第二フェイズの機体のブラックボックスへの移行、開始。
これまでのデータを隔離保存、以降のデータを保存できません。
データ切り離し完了、自動的に全てのデータを消去します。
機体操作自動からマニュアルへ変更。
シュミレータ、解除。
データ収集機能、解除。
プログラミング設定、解除。
機体のほぼ全ての機能の停止を確認。
自立機動型観測機『シヴァ』の停止を確認。
オペレーションシステム――凍……結……。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
漁師の朝は早い。
日が出ていない内に沖へ出て、獲物が待っているポイントへ移動し、網を落としたり、仕掛けていた罠を回収したり……。
各々の行動をし、成果を確認する。
結果が大漁であるか不漁であるかは運次第、海の女神様なんていうものに祈るくらいしか、漁師たちにはない。
そして成果を持ち帰り、自らの生活の糧にする。
その形は、現在でも受け継がれている。
「おい、ガキ。なんかいいの、見っけたか?」
「おう親父。今日は中レベルのオリジンが取れたみたいだぜ」
複数人が板を乗せたかのような、所々錆び付いたボロく平たい漁船と網を使って地引網漁をしていた。
漁と言っても魚をメインに取る訳ではない。
「うん? おぉ、オリジンの他にも最新型のAUのライトアームまで取れてら。今日はなかなかの成績だぜ!」
「ったく、世界はこんなところでも戦争ですかぃ。ご苦労なこったな」
「まぁまぁ、それのおかげで親父や俺たちは生きているようなもんだぜ?」
そりゃそうだな、と小さい甲板の上で、ガキと呼ばれた青年と、親父と呼ばれた中年同士が笑い合う。
小さいと言っても、古い船の情報誌にある軽空母とかいうものの、ちょっとばかし縮小したみたいなもので、10mや20mくらいの大きさの機体くらい数体は並べられる。
それで運べるだけ運んで金にするのが現代の漁師だ。
搭乗員は10人くらいで、まぁ結構なものだが、彼らは昔で言うアルバイトといった部類だ。
そして店長に当たるのがこの『親父』である。
つまり稼いだお金を分けなくてはいけない。それゆえに多い成果を上げなければ生きていられないのだ。
とどのつまり、現在はそんな世の中である。
今日はもう上がりであり、また、帰りつつ戦利品を確認する時間だ。
メンバーが各々、放送をかけてこの船の乗組員に伝達する。クレーンを操作したり、コンテナを移動させたりといった作業に移りつつ、朝日を浴びながら、頑丈な網にかかった獲物を回収し、陸に戻った時を想像する。それはとても楽しみな時間で、彼ら漁師……いや、ジャンク屋にとってほぼ習慣と言っていい時間だった。
船が乗っかるこの紺色の世界から引き上げられるのは、エネルギーライフルの熱によって一部分が溶かされた金属の塊、そもそものエネルギーの塊「オリジン」、そして。
「よっし、まずコイツを開けてみようかね。ツール起動、プログラムハッキング――成功っと。オーダー、コクピットオープン」
――外部命令認証、内部へ伝達いたします。
――反応ナシ、オーダー自動了承。強制開放します。
四肢とバックパックのない、コクピットだけのロボットが上がっていた。
そのコンピュータがまだ生きていたため、コクピットを開けさせたのだが、中が確認できるようになった途端につい、俺は目を背けた。
そこには変わり果てた、凄惨なパイロットの最後があった。
「餓死、か。暗い中腹も減って動けねぇ、ロボットを動かすエネルギーもねぇ。こいつぁいつ見ても慣れねぇな」
コクピットの中は、狭い中を一心不乱に爪で引っ掻いた跡や、殴り、蹴飛ばしたであろうヒビの入った強化ガラス加工の画面。加えて血や吐しゃ物であっただろう黒いものが地面に張り付いていた。引っかきすぎて爪が剥がれたのだろう、床にところどころ散乱している。
ベコベコにへこんでレンズも割れたヘルメットが、どことなくこの搭乗者の不安や狂いそうな状況を連想させていた。
少しして、吐き気が込み上げてくるような異臭が辺りを漂い始める。
「気持ち悪いぜ、全く。これだから戦争ってのはよ」
すぐ後ろで見ていた親父が呆れたように呟く。
今日の目に刺さるような眩しい朝日は、俺たちジャンク屋の心に強く当たって影を色濃く落としていった。
戦争がなければジャンク屋の収入は減る。
しかし逆を言えば戦争があれば自分らに金は入る。
ある意味では平和であり、そして危険である。
全てにおいて、本当の安定した平和なんて、ありはしない。
平和なんて、ボケたやつの綺麗ごとでしかない。
「こんなんだから、俺は搭乗者候補生にならなかったんだ」
国のため、主のため。
どんな理由であれ、戦っていればこういう目に会う人間がいる。
それは搭乗者であれば誰しもどんなタイミングでもある瞬間。
こんな死に方をするために生きるなんて、青年には全く理解できなかった。
「そもそもコイツさえ、エネルギーに変換できることが判明しなきゃなぁ」
青年は転がっていた掌サイズの白いオリジンを拾い、痛いくらいに握り締めた。
大体の世界観は、こんなジャンク屋視点です。
この視点はしばらく続きます、より皆さんが想像しやすいように話を作るために。
なお、一話毎がどれくらいの長さになるのかは検討しておりますのでご了承くださいませ。
ではまた、次の更新で。