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三界大戦記―好色皇子と三界の姫たち―  作者: 安里優
第三部:人界侵攻・龍玉編
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これまでのあらすじと登場人物紹介・附 第三部予告

■第二部あらすじに代えて■


『キズノのマチン様へ


 お父さん、お元気ですか。私は元気です。

 ……といっても、この手紙がお父さんの目に入ることはほぼないでしょう。


 もし、スオウ殿下が魔界に凱旋し、魔界が平和になれば……。

 うーん、どうかなあ?

 現状の私の微妙な立場からすると、難しいかと思います。手紙のほとんどが黒塗りで届けられることはあり得るかもしれませんけど。

 ともあれ、もしお父さんの手に届けば幸い、無理でも自分の気持ちを書き留めておくために、書いていきます。


 さて、魔界でもスオウ殿下をはじめ皇太子親衛旅団が人界に孤立させられたことは知られているものかと思います。

 メギ殿下――我々は僭主と呼んでいます――に近づいていた辰砂氏としては望みの展開であったことでしょう。

 当然、親衛旅団に潜入していた私も同様に魔界と切り離されました。

 しかしながら、任務とはそういうものです。

 私の働きで、辰砂氏の利となるのならば、それでいいと思っていました。

 正直、破壊工作を行った後でも逃げおおせると高をくくっていた部分もあったと思います。


 ところが、そんな私の目論見は全て覆されました。

 有り体に言うと、私は任務に失敗し、捕らえられました。しかも、ミズキ様の手配によって。

 そう、あのミズキ様です。

 我が辰砂の宗家に生まれ毒姫の名を冠されながら、僭主を裏切ったことで無頼となられたあの姫君です。

 辰砂の者ならば、ミズキ様へ複雑な感情を持たずにはいられないことでしょう。

 しかし、いまはそれに触れるのはやめておきます。


 それというのも、私はたしかにミズキ様の手配によって任務に失敗したのですが……。

 同時に姫様によって処刑を免れたからです。

 そして、いま、私はミズキ様の下で防諜活動にたずさわっています。

 そう、ミズキ様、そして、このカラク=イオという集団を率いるスオウ殿下は、メギ派の潜入工作員だった私を情報の中枢に引き入れているのです。

 そして、私はそれになじんできています。

 

 この転向をお父さんがどう思われるかはわかりません。

 けれど、私はここで生きていこうと思っています。

 もちろん、ミズキ様やスオウ殿下に始末されるのが恐ろしいというのもあります。一度死に損ねると、死ぬのはとても恐ろしいものです。

 でも、それよりも、いまは、あの方々を落胆させたくないという気持ちのほうが強いのです。

 不思議な話ですね。


 ただ、現状は、辰砂で鍛えた工作の技が思う存分使えるのも確かです。

 そして、一つの集団に明確に役立っている実感もあります。

 まずはこれだけでも、お父さんや、高天で見守ってくださっているお母さんには許してもらえるだろうと、そう信じています。


 それにしても、人界の情勢は魔界に劣らず千変万化です。

 我が軍は順調に人間の都市の占領を進めているのですが、その最中にも、南方の大帝国から皇女がやってきて、スオウ様と会談したりしています。

 そこで交わされた会話の内容は、さすがに私個人の手紙とはいえ、文字に残すわけにもいかないくらいのことです。


 そして!

 なんと今日は真龍までやってきたのですよ。

 びっくりですね。

 真龍と戦うことは想像したことがありましたが、交渉することがあるだなんて……。


 もしかしたら、世の中は本当に変わっていくのかもしれません。スオウ殿下の手によって。

 お父さんと再会できる日も来ないとは限りませんね。


 それでは、その日まで、どうかお元気で。 キズノのウズ』



■登場人物紹介■


○カラク=イオ

[幹部]

◆スオウ

カラク=イオの代表。

魔界の皇太子ながら、腹違いの兄たちが起こした謀反により人界に孤立させられた。

その後、カラク=イオの成立を宣言、三界制覇への第一歩として人界の征服を開始する。


◆ハグマ

皇太子親衛旅団の旅団長。

カラク=イオ成立後もスオウの右腕として軍を指揮する。


◆スズシロ

親衛旅団参謀。カラク=イオ成立後もスオウへの助言役。

基本的に、政治的問題のとりまとめは彼女に任されていると言っていいだろう。

魔界では少数派である翡翠氏の出身。


◆フウロ

第一大隊(襲撃大隊)の大隊長。

千刃相という強力な『相』を持ち、軍全体の切り込み隊長的立場。


◆シラン

第二大隊(偵察大隊)の大隊長。

スオウの母方の従姉。落ち着いた雰囲気があるものの、スオウのことでは激情的な面を見せることもある。


◆ユズリハ

第三大隊(通信大隊)の大隊長。

スオウの愛人の一人。校尉学校首席卒業者ではあるものの、過去の事例や教範を覚えるのは得意でも、創意工夫には欠けていることを自覚している。


◆カノコ

庶務中隊長。

庶務中隊と共に鳳落関に留められていたが、スオウにすりよろうとしたヤイトの思惑によって庶務中隊ごと解放され、カラク=イオに参加する。

氏族を持たない無頼という立場から奮闘して、親衛旅団の中隊長の位に就いた過去がある。

エリと仲良し。


◆ミズキ

防諜隊隊長

元辰砂氏の宗家の姫。かつてはメギの婚約者であったが、自ら婚約破棄を望んでスオウの閨に忍び入った。

結果として氏族を追放され、メギの怒りを避けるためスオウの親衛旅団に入ることとなったが、その後は一兵卒として過ごす。

カラク=イオ成立後、メギ派による幹部勢暗殺の企みを露見させたことで幹部の一人として迎えられ、防諜部隊の編成を命じられる。


[その他]

◆カリン

フウロの副長。

ひたすら喋るのが特徴だが、他の幹部の前ではそんなことをしでかしたりはしない。


◆ミミナ

ユズリハの副官。

ユズリハがほうぼうに出向くこともあり、連絡に駆け回る姿がよく見られる。


◆アシビ

シランの副官。

防諜部隊が出来るまでは旅団の諜報活動を担当していた。


◆ヌレサギ

スズシロの副官。本編未登場。


◆キズノのウズ

防諜部隊唯一の隊員。

元来はメギ派の潜入工作員だったが、ミズキの罠にかかりスズシロの暗殺に失敗。その後ミズキの部下にされた。


◆ウツギ

兵の一人。

スオウを特に慕っている。


[関連人物]

帝:スオウの伯父で義父。スオウが父という場合には彼を指す。現在、消息不明。

サラ:諡は思宮(おもいのみや)。スオウの父方の従姉かつ亡妻。

アマナ:スオウの母。故人。

アカナ:シランの母、アマナの妹。



○魔界

◆ヤイト

スオウの血縁上の父。息子のメギと共に謀反を決行。

スオウとも繋がろうとすり寄ってくるも、メギの部下によってその企みを妨害される。


◆メギ

魔界の新皇帝。スオウの腹違いの兄。

父であるヤイトもあまり信用していないふしがある。



○人界

[ショーンベルガー]

◆エリ

エルザマリア・ショーンベルガーを名乗り、スオウたちに降伏を申し入れてきた少女。

スオウと正式に婚約を果たした。



[戦王国群]

◆ヴィンゲールハルト・ミュラー=ピュトゥ

通称、足萎えの雷将。

戦王国群の北辺の一国、ショーンベルガーから見ると南南西にあたる地域を支配する戦王。

ソウライの隣接地域に支配を確立しようとしている。


◆ローザロスビータ・ミュラー=ピュトゥ

ヴィンゲールハルトの娘。金緋の髪と青い瞳を持ち、その髪の色合いから旭姫とも呼ばれる。

神石リンガムで稼働する鎧を身にまとう。


◆ティティアナ・タバレス

ソフィア修道会の女教皇。

地域の安定を乱すことになる魔族とその周辺の動きに対し、近傍の騎士団に対処を命じている。


◆カールフランツ

聖鎚の守護者団団長。

聖鎚の守護者団は元々ヴィンゲールハルトの戦王国に派遣されていた騎士団だったが、ティティアナの命に従い魔族との戦いに備えている。



[ゲール帝国]

◆リディア・ゲルシュター

ゲール帝国第十一皇女。

スオウたちと密約を交わし、伝説の存在である『船』の共同開発を取り付けた。

世界を変えるためならば、ゲール帝国と己を差し出すことを厭わない女傑。


◆オリガ・ゼラ=ゲルシュター

リディアに従う女性。リディアの義理の従姉妹で、ゲール帝国の貴族家出身。

左の額から右頬にかけて目立つ傷痕がある。




■以下はお休みをいただいている間、予告編として掲載していた文章です。■




「僕らとしてもさ。こんな脅しみたいな事はしたくないんだ。でも、人間たちと没交渉になったとはいえ、彼らを守るって約束は有効なはずなんだ」


 真龍の言葉は、軽い調子で響く。

 だが、その内容は、けして軽視できるものではない。


「だから、示して見せてよ。僕らが君たちを敵にしなくて済む理由を」


 突きつけられた要求。

 それをかなえることが出来なければ、ソウライ全土は火の海に沈むだろう。



                    †



「御旗を掲げよ! ヴァイシュラヴァナの加護ぞある!」


 魔族を絶対の悪と見なす姫は、白銀の輝きを放つ鎧をまとい、神々の加護を得て、戦場を駆ける。


「聖ゲオルギウス、カールフランツ!」


 その手助けをするのは、いにしえの教えを守る騎士。

 彼らが目指すのは、安寧か、それとも混沌か。


「七つぞなえほむらの形」


 そして、戦王国群の北辺を制した雷の将がついに出陣する。



                    †



「スオウ様。あなたに打ち明けなければいけないことがあります。真龍たちを納得させる方法は、あるのです。そして、私はそれを知っています」


 明かされる秘密。

 その秘密を胸に、スオウは一つの決断を下す。





 己を慕う女一人守れずに、なにが三界制覇か、なにが万民の主か。





   「俺のために生き、俺のために死ね!」




三界大戦記―好色皇子と三界の姫たち―

 第三部 人界侵攻・龍玉編



2015年8月末 開幕

予定通り、あらすじと登場人物紹介に差し替えましたが、おやすみをいただいている間に掲載していた予告も、最後に残しておきます。

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