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三界大戦記―好色皇子と三界の姫たち―  作者: 安里優
第四部:人界侵攻・征西編
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第14回:提案(下)

「三界制覇か」


 真龍の長となった男――その片割れの人身――は、小さめの、だが居心地のいい天幕の中、ゆったりと座椅子に寝そべりながら、同盟相手となった指導者に問いかける。


「……本気?」

「本気だとも」


 カラク=イオ、すなわち『万民』の首長、スオウの返答によどみは無い。

 二人きりの場とて、彼もまた公式の場よりはずっとくだけた態度と姿勢ではあるが、その覚悟に変わりがあろうはずもない。


「まあ、そうなんだろうね」


 呆れたように、あるいは諦めたように、ディーは竜血酒を呷る。

 真龍の長が、竜の血と名のついた酒を飲むのもなかなかに面白い、などと内心思いつつ、スオウもまた酒で喉を湿らせる。

 そこで、彼は相手の態度に改めて疑問を覚えた。


「しかしな。考えてみたことはないのか? 魔族と真龍の種族的使命は共通している。その理想を突き詰める時、全ての統一ということも、頭をよぎるものだろう」


 たとえ、冷静に考えれば到底無理だと判断するとしても。

 たとえ、子供の思いつきだと否定するにしても。

 一度は全ての『人類』の統一を夢見たことは無いのかとスオウは問う。


 その問いかけに、真龍の若長は苦笑いを浮かべるしかなかった。


「そこなんだよ」

「ん?」

「僕たちは、揃って内乱を起こされた後継者候補だったわけだけど」

「嫌な共通点だな」


 スオウが混ぜっ返すのには苦笑で応じて、ディーは続ける。


「幸いなことに、僕のほうは内乱が起きた時にその場にいることが出来た。そうして指導者の地位に就いたわけなんだけど……。そこで気づいちゃったんだよね」

「ふむ?」

「僕が、真龍の長の地位を到達点として考えていたってことに」

「ふうむ?」


 ディーの意図をはかりかね、スオウは先を促した。


「一族の運営とか、内部の政治について考えていたことはいくらもある。食糧をもっと安定して確保しようとか、居住についてももっと計画的に考えてもいいんじゃないかとかね」

「指導者たらんとする者としては、真っ当な思考だろう」

「うん。だけど、僕はそこ止まりだった」


 ディーは目を伏せ、躊躇うように声を震わせた。


「君は、ユエリにどれくらい聞いてるのかな?」

「真龍のことはさほど聞いていないな。彼女が真龍の出であることと、君と同巣の兄妹という関係だということは聞いたがね」

「それだけ聞いていれば十分だね」


 杯を揺らしながら、ディーは覚悟を決めたように話し出した。


「僕らの常識じゃあ、人身と龍身が別々の男に嫁いで子を産むなんてことは、滅多に無い……。ああ、いや、正直に言おう。滅多に無いどころか、前代未聞、歴史に特記されてもおかしくないくらいの話なんだ」

「非常に稀だとは聞いていたがね」

「稀なんてものじゃないよ。驚天動地の出来事だよ。だから、それに対する反応も、ちょっと大変なものになってしまったんだよね」


 大げさに肩をすくめるディー。その言葉の響きは軽いものではあったが、実際の所、真龍の間では、大騒動となったのであろう。


「具体的に言えば、僕たちの父には指導者としての資格がないって話になったわけ」

「部外者には、よくわからん話だな」

「それが真龍には通用しちゃうんだよ」


 ディーはぐいと酒を呷り、杯を乾した。

 スオウが身を乗り出して酒を注いでくれるのに礼を言ってから、彼はため息を吐くように言葉を放った。


「真龍は人身と龍身で一心二体だ。……ずっと、そう考えられてきた。だから、番うなら、人身と龍身が共に番うべきだと考えられている。ところが、僕たちの父は、人身の番い……ユエリたちの母上を得ることが出来なかった。これは、おかしいとなったんだね」

「妻を得なかった偉大な指導者なんてのは、いくらもいただろうに」

「真龍の歴史にはいなかったんだよ」


 スオウは苦り切った顔付きで首を振る。

 男女のいざこざで地位を追われた指導者は数多い。これもその一つと言えるかもしれない。だが、実に愚かな話だと彼は思う。


 エリの話を合わせて考えれば、エリの母親が真龍としては異端児であったからこそ生じた事象であろう。

 ディーの父に責任がある話とは思えない。


「父が襲うべき地位は奪われ、叔父の手に渡った。そして、僕は、いつか僕自身が真龍の長となることで、父の名誉を回復しようと心に決めた」

「見上げた心意気じゃないか。しかも、それを実現しているのだからな」

「親子の範疇で言えば、その通りだろう。僕はその点に関しては誇って良いと思う。けれど」


 言葉の通り、誇りに満ちた表情を見せたディーは一転、真剣な顔で確認するように尋ねた。


「長になるということは、終着点じゃない。むしろ、それこそが始まりだ。そうだろう?」

「それはそうだな」


 その後は幸せに暮らしました、めでたしめでたしと終わるのはおとぎ話だけだ。

 現実は、地位を手に入れた後から、戦いは始まる。

 現状を維持するだけでも大変だというのに、より良い状況となるように、四苦八苦せねばならないのだから。


「僕はたしかに長になってからのことも考えてはいた。だけど、所詮それは長の地位を簒奪した相手の政を否定するものでしかなかったんだよ。僕たちなら……父の息子である僕たちなら、もっといい統治が出来る。そんな感覚だよ」

「その自負は、けして間違ったものではないと思うがな」

「うん。間違ってはいないと思う。平和な時代なら、なにも困らなかったろうとも思う。最初は前任者の政治の否定でも、学んでいく時間があったろうから」


 だが、そんな時間はないのだと、ディーは示していた。スオウはそれに小さく肩をすくめる。


「内乱後という混乱の時期ではな」

「そう。叔父の政治を否定してるだけじゃ、真龍の未来はとても見えない」


 ディーはそこでふっと透明な笑みを見せた。なにかを吹っ切ったようにも思える微笑みだった。


「そこまで理解したところで、ようやく気づいたんだよ。僕が見ていたのは実に狭い世界だって」


 からからと笑いながら、ディーはなんでもないことのように言い放った。


「それこそ、僕は大陸全土を統一しようなんて思ったことがない。夢想してみたことすらないんだ」


 だが、若き指導者という同じ立場に立つ者として、それらの言葉を口にすることの重みを、スオウは理解している。

 苦悩もし、否定もし、そして、最後には決断を下したということを。


「君とは違う」

「ふうむ」


 しばらくの間沈黙が落ちる。

 二人はお互いにお互いの瞳の奥をのぞき込むようにしながら、何事か考えている様子だった。


「だけど、なにも皆が同じ事を目指す必要は無い」

「当然だな」

「三界制覇をやりたい君がここにいて、僕は協力できる立場にある。狭い世界しか知らなかった僕が……僕たち一族が、広い世界を知る機会がある。だったら、賭けてみようって思ってもおかしくはないだろう?」

「人界とは決別しているし、神界はそもそも敵だから、俺たちに味方しても、目に見えた損はない……か?」

「もちろん、そういう計算もあるね」


 スオウは微笑みを浮かべるディーを身ながら、ぐいと杯を乾した。手酌で酒を注ぎ、ゆっくりと杯を回す。


「危ういぞ? 皆の前では、鬱憤晴らしだとか、真龍にとって良い面を強調したが、負担がないわけじゃない。戦死する者も出る。反発もあるはずだ」

「そりゃあねえ。僕には見えない反発もあるだろうね」

「それでも、か」

「それでもさ」


 飄々と言い切るディーに、スオウはふっと笑みを見せた。安心したような、心配した自分を咎めるような、そんな表情。


「……変事の後には派手なことをぶちあげるのも必要ではあるからな」

「そうそう」

「だが、長期化すれば、様々な問題が噴出する。君たちは我々と違い、故郷にいる。落ち着いたときが危ないだろう」


 その推測に、ディーは言葉を返そうとはしなかった。

 スオウも返事があるとは想定していなかったのか、よどみなく次の話に転じている。


「真龍の部隊についてだが」

「うん」

「しばらくは、偵察を中心に働いてもらう」

「それでいいのかい?」


 真龍の機動力と破壊力をもってすれば、強烈な戦果を上げることが出来る。

 それは、心理的にも、戦略的にも非常に強烈で、使う側にとっては実に魅力的なはずだ。

 上空からの偵察が非常に有利であるとはいえ、それだけではもったいないのではと思うのは、おかしなことではない。


「真龍の力は強大だ。魔族と比べてすらな。軍として、一体の動きが出来ると確信するまでは、軽々に用いるべきではないと考えている」

「なるほどね。でも、それで、他のみんなが納得する?」


 いかに強力であるとはいえ、真龍たちが、カラク=イオ内の新参勢力であることは間違いない。

 すでにカラク=イオに吸収された、あるいはカラク=イオと盟約を結んだ者たちが、それで不満をもたないものかとディーは心配しているのだった。


「偵察は楽な仕事じゃない」

「こき使われそうだ」

「そうだとも」


 二人は笑いあい、互いに杯を掲げる。

 それから、ディーはなにか言いにくそうに口ごもり、そして、スオウに視線で促され、ようやく口を開いた。


「一つだけ言っておかないといけないことがあるんだ」

「なにかな」

「今回、ここに置いていくみんなは、本当に頼りになる。普段は、君たちの言うことをきちんと聞いて、忠実に職務を果たすだろう。でも、ただ一つ。最初に神族に出会う戦場でだけは、彼らを統制することを考えない方がいい」


 その言葉に、スオウは自分の顎をなでる。

 会談の折、こちらに預ける真龍たちが激発しやすいと指摘したのは、どうも大当たりだったらしい。

 少なくとも、神族に関わる事に関しては。


「話が通じそうなのは?」

「ラー=イェンくらいだろうね」

「ならば問題はないだろう」


 少なくとも、部隊の責任者は、冷静さを保てると保証を得た。

 後はその激情にしっかりと向かうべき先を与えてやればいいだけだ。


「本当に?」

「ああ。任せておけ」


 深く頷くスオウに、ほっとした様子を見せるディ-。

 彼は体を起こすと、陽気な声を放つ。


「よし! それじゃ、お近づきのしるしに飲み明かすとしようか!」

「お手柔らかにな」


 秘蔵の酒を取り出すことにするかと考えながら、喜んでその言葉を受け止めるスオウであった。



                    †



 カラク=イオと真龍の間に盟約が結ばれてから十日あまり。

 ようやく、真龍たちの居住地域など、細々としたことも定まり、本格的に軍の編成についての話し合いが始まった頃。


 ラー=イェンの人身たる人物は、打ち合わせの合間の時間を、陣城の外周を散歩することに用いていた。

 自分たちの本拠地となる場所の地形を――地上から――把握しておきたかったというのもあるし、断続的に続く話し合いの気分転換をしたかったというのもある。


 正直、次の連絡事項について考えていたために、ぼーっとしていたのは否めない。


「散策ですか?」


 だが、まさか声をかけられるまで、他人が近づいてきたのに気づかないとは。


「あ、え……」


 しかも、声のほうを見やれば、見慣れた顔がそこにある。

 栗色の瞳を輝かせ、亜麻色の髪を布に包んだ少女こそ、シン=ユエリ・ロン=フェル・クル=クルル・セロ=ローゼ・サリ=クランド・ディー=ロン。


 ラー=イェンの敬愛するツェン=ディーの同巣の妹にして、ラー=イェン自身の幼なじみでもある人物――その人身だ。


「ああ、ご挨拶が遅れましたね」


 一方、ユエリのほうは彼女の驚愕などお構いなしに、恭しい態度で言葉を続けている。


「私は、エルザマリア・ショーンベルガー。当代ショーンベルガー公爵の娘にして、名代を務めます。以後お見知りおきのほどを」

「あ……。ええと、な、なるほど」


 ユエリが姪の影武者をしているという話は、ラー=イェンも耳にしていた。

 いまここにいるのは真龍の『同胞殺し』ではなく、ショーンベルガーの代表であり、カラク=イオの同盟者なのだ。


 少なくとも表面上はそういうことでなければいけない。

 ぼんやりとしていた頭がようやく回転し、ラー=イェンはそのあたりのことを了解した。


「エリ、とお呼びください」

「あ、はい。よろしく……お願いします。ラー=イェンです」


 これが故郷であれば、もっと気安く話しかけるところだが、ここではそうもいかない。

 あくまでも彼女たちは初対面に近いことになっているのだから。


「はい、よろしくお願いします」


 そこで会話は途切れ、奇妙な沈黙が訪れる。

 なにか言わなければ、とラー=イェンは焦るものの、なにを言っていいのかどうにもわからず、言葉が出てこない。

 そんな彼女の様子に、エリはゆったりと微笑んで問いかける。


「一緒に散歩しません?」

「あ、はい。そうしましょう」


 二人は連れ立って歩き出す。

 そこでも、ラー=イェンは会話のきっかけを見いだせなかった。

 ユエリがこの陣中にいることは理解していた。それなのに、どうも自分は、彼女と二人で話す機会があることを想像していなかったらしい。

 ラー=イェンは自らの精神の働きを不思議がる。


「ラー=イェンさんは」

「は、はい?」

「……ラー=イェンさんは、ツェン=ディーさんと婚約なさったそうですね?」

「あ……」


 ラー=イェンは息を呑む。

 ツェン=ディーとの婚約は、内乱終息後に申し出られたもので、つい先日正式に発表された。


 当然、スオウたちにも通達されており、ラー=イェンは名実ともに真龍の代表者として遇されることが約束されていた。


「ええ。婚約者ということにはなっております。ただし、これは形式的なものでしょう。この同盟関係を円滑にするためと、後継者問題について不安を抱かせないための処置かと思います」


 ラー=イェンは言葉を選びつつ、ゆっくりとした調子で応じた。

 その様子に、エリは横目で睨むようにしてから、低い声で呟く。


「……それ本気で言ってるの?」

「ちょっと、ユエリ!」


 いきなり口調を変えたユエリに、思わず叱責するように言葉をたたきつけてから、ラー=イェンは慌てて口元を覆い、あたりを見回した。

 幸い、周囲で耳をそばだてているような人影は無かった。


「あのねえ? あの兄貴が、冗談や形式でそんなことすると思う?」


 エリは、今度は真龍の言葉を用いてそんなことを言ってきた。

 真龍を除けば、この言語を理解する者はこの陣中にはほとんどいないし、いたとしてもエリの正体を知っている。


「だって」

「だってじゃないわよ」

「いや、でも、私なんて……。ツェン=ディー様にふさわしいかというと……」


 ラー=イェンが暗い面持ちで言うのに、深々とため息を吐くエリ。


「じゃあ、兄貴が他の人と婚約してもいい?」

「駄目。無理」

「でしょう?」


 なんとも言えない顔で小さなうなりを上げるラー=イェン。

 彼女は赤面しながら、エリの横を歩き続けた。


「……まあ、スオウ様に手を出させないためってのはあるんだろうけどね」

「へ?」

「いや、そこは気にしないで」


 ぼそりと漏らした呟きを聞き返され、今度はエリのほうが赤面する。彼女は小さく首を振って、真剣な顔付きに戻って言った。


「ともあれ、あの兄貴がちゃんと発表したんだから、そこは信じてあげて」

「……うん」


 しばらく黙ってから、ラー=イェンは小さく頭を下げた。


「ごめんね」

「うん」


 そこで一度会話が途切れ、再びエリが口を開いたときには、その態度は最初の堅苦しいものに戻っていた。


「ところで、ラー=イェンさん」

「はい」

「今後の事につきましては、スオウ様はじめ、色々とお話があったものかと思います。それについてですが、今後はぜひわたしたちショーンベルガーとの関係も……」


 そこまで言ったところで、エリは口を閉じた。彼女たち二人に駆け寄ってくる細身の人影を見つけたためだ。


「ライ姐!」


 茶色い髪を短く切ったその女性は、彼女だけが呼ぶ呼び方でラー=イェンに呼びかける。

 そのままものすごい勢いで二人の前にやってきたイー=シェンは、勢いのままに、言葉を放つ。


「大変、大変! 西方の獣人が同盟を求めてやってきたんだって! ライ姐にも会議に出て欲しいっ……て……」


 そこまで一気に言った彼女の言葉が途切れ、その目がまん丸に見開かれる。

 その視線は、真っ直ぐにエリを捕らえていた。


「シン=ユエリ!?」

「お、おい」

「いえ、残念ながら」


 慌てて止めようとするラー=イェンに対して、エリは落ち着いたものであった。彼女は余裕の微笑みでイー=シェンの言葉に対する。


「私はエルザマリア・ショーンベルガー。ユエリは私の叔母にあたります」

「え? 違うの?」

「違いますね」


 にっこりと笑いかけるエリに、イー=シェンは小首を傾げ、次いで、勢いよく頷く。


「そうなんだー。へえ……姪なんだね?」

「ええ」


 ラー=イェンははらはらして二人のやりとりを見守る。

 当然だが、ここでイー=シェンにユエリの正体を明かすわけにはいかない。

 エリや幹部たちがどの程度までユエリの正体を明かすよう考えているか、ラー=イェンは承知していなかったが、少なくともそうそう示していい話ではないはずだ。

 イー=シェンに知らせるにしても、スオウたちの了解を得てからにするのが筋だろう。


「いやあ、びっくりしたよ。おばさんそっくりなんだなあ。ほんと、もうあのシン=ユエリが出たかと思って、焦ったよ」

「……『出た』?」

「イー=シェン」


 エリの声に不穏な色を見て取り、ラー=イェンは妹分に警告の声をかける。

 だが、イー=シェンは驚きから立ち直った勢いで、その声が耳に入っていないようだった。


「だって、シン=ユエリっていったら、もう化け物みたいなもんだからさ」

「化け物」

「そう。伝説の存在みたいなもんだよ。あたしらからしたら、怖いの怖くないのって」

「イー=シェン!」


 もはやラー=イェンの声は悲鳴に近い。

 さすがにそれにはイー=シェンも反応する。


「なんです?」

「用事があったのだろう? そうだろう?」

「あ、そうでした」

「そうだろう? そうだよな?」


 背筋を冷や汗が流れるのを感じながら、ラー=イェンはイー=シェンにそもそもの目的を思い出させる。


 これ以上、ここで会話を続けさせるのは危ない。

 実に危ない。


「はい。魔族の人たちがライ姐を呼んでて」

「そうかそうか。それは急がねばな。じゃ、じゃあ、そういうことで、エルザマリア様、私は……」

「いえ、私も参ります。きっと、私も呼ばれるでしょうから」


 イー=シェンの手を引き、急いでその場を離れようとするラー=イェンの腕を、がっしと掴み、エリは微笑みを浮かべる。


「一緒に参りましょう? ラー=イェンさん?」

「……はい」


 もはやラー=イェンは観念するしか無かった。

 そして、その横ではイー=シェンが全く事態を把握せず、首を傾げているのだった。

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