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ただいま?
「……貴女のあの場所を、世界を。私達は【臨界】と呼んでいます。【臨界】は遠くて近い、近くて遠い場所です。貴女の居るべき地は【臨界】ではなく此処なのですから、“来た”のではなく“帰ってきた”と言うべきなのです」
「りんかい? ……んー? よくわかんないけど。メリーさん、ここなは“ただいま”って言えばいいの? それが正解ってこと?」
「はい。貴女は“帰ってきた”のです」
「ん~? よくわかんないけど、ここなはわかったにするね!」
「はい。そうしていただけると、メリーは助かります」
と、いうわけで。
ここなは。
「ただいま、です!」
と、とりあえず言ってみた。
「はい。…………お帰りなさい、私の魔王」
そう。
ここなは“帰って”きた。
ここに。
「……メリーさん、まおうって?」
「貴女のことですよ、魔王」
ずっと。
ずっと、少女を待っていた男の住む此処に。
「貴女は、私の」
メリーさんの腕の中に、帰ってきてくれたのだ。
「メリーの、魔王です」