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はじめて?
「メリーさん、ありがと! でも、歩けないよ?」
長身の男の外套は、ここなには大きく長かった。
これでは、歩くのは無理だった。
「……そうですね。では、こうしましょう」
苺のケーキを頭にのせたまま、男はここなを抱き上げて。
腕に座らせ、ここなの背に手をそえた。
「わわっ! 抱っこだ! すごーい高いね! メリーさん、ありがと!」
父親のいないここなにとっては、これは初めてのことだった。
母親は確かにいたけれど……こんなふうに抱かれた記憶は、ここなには無い。
忘れてしまっただけなのか、されたことが無いのか。
ここなには、分からなかった。
でも、今まで見た大人の男の人の中で。
メリーさんが一番背が高いというのは分った。