ここ、どこ?
メリーさんとなった男が身をかがめ、ケーキを持つここなの手にその青白い手を添えると。
二人の周りの景色は溶けて……冷たいフローリングではなく、緋色の絨毯の上に立っていた。
「あれ? ここ、どこ? ここな、どこに来ちゃったの?」
「正しくは来たのではなく。帰ってきたんですが……」
天には上弦の月……が二つ。
それを見上げたここなは、まるで夜空が笑っているようだと感じ。
自然と、笑顔になった。
乾いた大地に敷かれた緋色の絨毯は、闇に青白く浮かぶ古城へと続いていた。
「……ほわわっ」
周囲を見回したここなは奇妙な声をあげ、その身をぶるっとふるわせた。
少女の吐く息が白いことに男は気付き、眉を寄せた。
「……もしかして、寒いのですか?」
「うん。ここなはさむいよ、メリーさん」
「それはいけませんね。……これはメリーにお任せください」
男はここなの手からケーキをとり、自分の頭頂部にのせ。
漆黒の外套を脱ぎ、それで魔王を包んだ。
脱いだことによって現れたのは、脱いだものと全く同じ外套だった。
「あれれ?」
ここなはとても驚いたけれど、それ以上にほっとした。
メリーさんが寒くならなくて、良かったとここなは思った。