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おうち?
「ここでは駄目です。帰ってから、してください」
「かえる? ここがここなのお家だよ?」
男はここなの視線に合わせるよう膝をつき、身を屈め。
かさついた頬を間近で見た。
「“ここ”は、違います。さぁ、私と…………メリーと、“帰りましょう”」
ここなに触れて、男は知った。
人の身体は、温かいのだと。
「……メリーさんのお家に?」
「いえ、貴女の“お家”です」
この温かさは。
この暖かさは。
この、熱は。
「帰りましょう」
ああ、この熱を……。
待っていた。
「帰りましょう」
ずっと。
「私の」
ずっと、待っていたのだ。
「私の、【魔王】…………」
こうして。
名無しの男は、“メリーさん”になり。
2月22日22時22分。
ここなは。
“メリーさんの魔王”に、なった。