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くるくるくる~ん??
「メリーさんのひつじって歌があるでしょ? だから、メリーさんなの!」
ここなの言葉から、すぐに理解した。
「……羊…………なるほど」
男には、角があった。
渦巻き状の角が、頭部左右にあった。
「くるくるくる~んなこれは、ひつじさんだよね! テレビでみたよ!」
人にはあるはずの無いモノがあっても。
ここなは、怖れなかった。
“違うモノ”、“異質なモノ”を怖れることに必要な知識も教育も与えられていなかったのだから……。
漆黒の長衣を纏った男の黒髪が、床に着くほど長かろうと。
恐ろしく端正な容姿だが、異様に青白い肌をした男の瞳が、ケーキを飾る苺以上に赤かろうと。
ここなは、怖いとは思わない……思うことが、できなかった。