じけん?
ここなは13歳になった。
お城は今日も平和だった。
でも、今日はちょっとした事件がおこった……。
先程、それはおこった。
ここなが一人で入浴中に居眠りし、おぼれる前に救出に向かったメリーさんが浴場に突入して風呂場が少々壊れたのだ。
「メリーさん、あのね」
「……魔王、いつものをお飲みになりますよね?」
「うん、飲む」
「少々お待ちを……」
風呂からここなを救出したメリーさんは、ほわほわのタオルでここなを包んでから、苺牛乳の栓を開けた。
「どうぞ」
「ありがとう。……あのね、メリーさんが目隠しなんてするからだよ? だからお風呂で転んで、湯船に頭からつ激突したから壊れちゃったんだよ?」
瓶入りのそれを受け取り一口飲んでから、ここなは言った。
「直るまで、昔みたいにたらいのお風呂になるの? ここな、このジャグジーのお風呂が好きだったのに」
「…………」
黙りこんでしまったメリーさんの背を、トロ君が軽く叩いた。
トロ君は“みんな”の一人で、“みんな”のなかではここなが最初に名付けた者だ。
「まぁまぁ、メリー様だってあんまり持ち合わせてない気遣いを総動員して、大蛇を頭部にぐるぐる巻きにして目隠しをして行ったわけでしてっ……メリー様、落ち込まないでください! 確かにはたから見れば非常に馬鹿馬鹿しいですが、メリー様の方向音痴気味な誠意は、わかってますから」
大トロ色の髪をしたトロ君は、見た目は甘い顔立ちをした美少年だが……なかなかの毒舌の持ち主だ。




