おみやげ?
「……じゃあね、ちがうしつもん、いい?」
目覚めると、母親が連れて来た見知らぬ男が部屋にいることは珍しくないため、ここなはこの男も“そう”なのだと思っていた。
だから警戒心無く話しかけ、存在を受け入れた。
「はい。質問をどうぞ」
中途半端に開けられたダンボール箱には、派手な色のキャミソールとブランド物のスカーフがひっかかり、その横のダンボール箱には新聞紙に包まれた食器類。
引越し後に、それらは使われたことはない。
「あのね、そのケーキ……もってるケーキは、おみやげ?」
男は、ケーキを持っていた。
それは円形で大きく、白いクリームの上には真っ赤な苺が王冠のように並んでいた。
そして、数本の……6本蝋の燭。
6本の蝋燭の灯りが、ゆらゆら揺れる。
「…………今日は2月22日です。あと3分で22時22分になります」
時計の無い部屋で、男は言った。
「あ! わかる! それって、ここなのお誕生日でしょ!?」
ここなは知っていた。
2月22日は、自分の誕生日だということを。
でも、“22時22分”は分からない。
ここなは時刻を理解していない。
母親は、ここなに時刻を教えたことは……教えなければならないと、思ったことがなかったから。