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まおう?
「りぼんの色はピンクね!」
「はい、魔王」
メリーさんに忙しい日々を与えたのは、ここな。
名無しだった男を、メリーさんと呼ぶ小さな魔王。
魔王によって、男はメリーさんとなり。
魔王の小さかったり大きかったりする希望と願いを叶えながら、“メリーさん”として毎日を忙しく過ごしている。
「えっとね! ケーキは今年もいちごのケーキがいいの! 世界一の苺のケーキにしてね!?」
「はい。魔王」
ここなは知らない。
“世界一のケーキ”を作るために、世界一の菓子職人……かもしれない者が、この城へ強制連行、少々強引に招かれるてこられることを知らない。
ここなは、知らないのだ。
ここなの髪を結うためだけに、どこかの街から美容師が腕の良い『消える』ことになる事など知らない……分かっていない。
「うふふっ! お誕生会、楽しみね!」
そうして。
メリーさんの小さな魔王は。
知らないうちに。
気づかぬまま。
「はい。魔王」
この男を。
メリーさんを。
【魔地】を支配する人外の男を。
「全て、魔王のお望みにままに……」
ここなは。
<魔王>に、していった。




