ふてきせつ?
メリーさんはここなに、「【臨界】に、のです貴女は行くことはできない」と言っていたので、テレビ入手の詳細を訊かれると非常に……すごく、とても、とーっても困るのだ。
「……羊はメェメェ……なるほど」
「だからね、メリーさんはメェメェさんなの!」
ここなの目は彼女を見下ろす男の目よりずっと大きく、真ん丸でキラキラしていた。
その星が瞬くような黒い瞳を見つめると、男は満天の夜空を見上げているような気分になった。
見下ろしてるのに見上げているような、奇妙であるのに不快ではない不思議な感覚だった。
「ですが……メェメェは鳴き声なので、それを名に使うのは不適切かと思います」
「ふ、ふ、ふてきせつって?」
「あまり良くないということです」
「ふ~ん、じゃあメリーさんはメリーさんでいいってこと?」
「そうです」
「おしえてくれて、ありがとね! メリーさん」
「いえ」
ここなが此処に来てから。
「そうだ! メリーさん、寝る前にご本読んで! 昨日の続きからじゃなくて、最初からねっ」
「はい、魔王」
「あ! お誕生日会の日の髪の毛は、くるくるでおりぼんでお花もね! お誕生日はおしゃれするの!」
「髪の毛…………はい。魔王に相応しい最高の美容師を『用意』致します」
男は。
メリーさんは朝から晩まで、毎日とても忙しいのだ。




