いそがしい?
あの日から。
男は、日々忙しい。
幼い魔王に“メリーさん”と呼ばれたあの日から。
あの日から、あの時から。
男は。
メリーさんは、とても。
とーっても、忙しいのだ。
「ねぇ、メェメェさん! あさっての誕生会楽しみだね!」
「…………」
ここな明後日で7歳になる。
あれからもうすぐ1年が経ち、ここなは7歳になる……。
「……魔王、もう一度仰ってください。今のは、メリーの聞き間違えかもしれませんので」
「? もう一回ね。え~っと、『ねぇ、メェメェさん! あさってのお誕生会楽しみだね』……でしょう?」
「……」
ここなは男の膝に向かい合わせに座ったまま、男の顔を見上げて先程の言葉をもう一度言った。
「……え~っと……メェメェさん?」
男は白いネグリジェを着たここなを何かから隠すように抱き、その赤い目で周囲をゆっくりと見回した。
「……」
不審者がいないかのように鋭い目で探る男の方が、はたから見れば不審者だった。
成人男性が、天蓋付きのベッドで幼女を膝にのせて抱え込んでいる……不審者を通り越して変態認定されても言い逃れできない状態だった。
男が美形だろうが人外なんだろうが、はたから見たらあやしすぎる光景だった。




