番外β【あるお方視点】
【訪問者】に出てくるあるお方の視点少しです。
俺様はかの有名な種族、吸血鬼だ。
俺様の体には誇り高い吸血鬼の純血が流れている。
年々その数を減らしている純血だから、俺様の価値はかなり高い。
例えるならば、空を飛ぶフィーフォイぐらいには高いだろう。
そんな誇り高く、純血で、イケメンな俺様だったが、ちょっとしたミスでいや、向こう側が悪いのだからこの場合はトラブルということにしておいてやろう。トラブルで純血の回復力を持ってしても回復しきれない深手を負ってしまった。
回復するのには血が必要だったのだが、俺様専属のメイドがまたドジをやらかし輸血パックを登山用の水のやつと間違えて家に置いてきてしまい、血が足らず回復が間に合わなかった。
とりあえず残った力でどうにか生物が潜伏してるらしき洞窟までたどり着いた。
中には紐状の何かで体を縛られたゴブリンが一匹転がされていた。
ちっ、ゴブリンか……。といつもなら殺してそのまま捨てるか家畜の餌にするかだが、今は一刻を争う状況だ、非常に不本意で情けなく死にたくなるが、体はもう動けなくなる寸前で、縛られていて動けない、つまり反撃できない獲物などこいつ以外にいなかった。
苦渋の決断として、俺は誇りよりも命を取った。
俺様『お前俺様に血を恵め』
声をかけると虚空を見ていたゴブリンがキョトンとした表情でこちらを振り返る。
?????『めぐむぅ?』
思いがけず視線の強さに圧倒され、半歩退きそうになった。しかし。
何を考えているっ!?相手はあのゴブリンだぞっ!?純血の俺様が恐れることがあっていいわけがないっ!!
そう思うことで、何とかゴブリンなどに退くという醜態を晒すことは避けた。
俺様『そうだ、俺様に血を恵め』
?????『めぐむ……めぐむ……どういう意味?』
ゴブリンが依然変わらない視線の強さでこちらを見つめ続けているが、そんなことはもう些細な問題に過ぎない。
?????『いいから黙って俺様に血を寄越せ!!』
もはや一刻の猶予もない。
俺様は倒れ込むようにゴブリンの首筋に噛みついた。
あぁ、血だ。
血が。口の。中に。
血が血が血が血が血が血がちがちがちがちがちがちがチガチガチガチガチガチガ。
口の口の口の口のくちのくちのくちのクチノクチノクチノ。
そこからの記憶は、しばらく途絶える。