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テロ部のネコというもの

どうも、初めての方がいらっしゃればシロ月カサネです。


前話の「テロ部の規定的日常」からは時と場所を移して他の学校に存在するテロ部という展開で近未来のテロ部を舞台にでテロ部に導入されたインターフェース通称”ネコ”と新入生の少年のお話となります。


よろしくお願いします。


第一印象として、その部室はキレイだった。

白を基調とした内装でこの前まで通っていた中学と同じような感覚で足を踏み入れたら予想外で、これなら内情を知らなければ入って見るのも悪くないと思わせる雰囲気はあった。問題は、この部の「リア充爆破テロ部」という名前がどうかと言うことだ…。


俺がこの「リア充爆破テロ部」なる部に来たのには訳がある。

新入生として入った学校には姉貴がいて、勧誘のつもりか一度遊びに来いと言われたからに他ない。

しかも、姉貴がこの時間に来れば面白いモノが見れると言って誘った割りに当の本人どころか誰もいないというのはどうしていいやら迷う。

もう姉貴などほっといて帰ろうかと思わないでもないが、後々ゴネられても面倒なだけだからと、部室の中へ入ったのが結局は運の尽きだったと悟るのは後の事だった。

いまの自分はただ「リア充爆破テロ部」という痛い部活名に多少の興味を抱きつつも敬遠するつもりのただの新入生だ。


とりあえず、中に入って姉と先輩達を待つつもりで部室の中に入った訳だが、やはりというか部室内はいわゆるオタクの部室と言えた。まず目を引いたのは左右の両壁面を飾る棚だろうか、右手はフィギュア用のガラスケースで占められていて、その飾り方にも手が尽くされているのが分かる。

対面の左側は書架だが収められた本がオタクらしいコミック類からライトノベル、さらには同人誌までが棚一杯を占領しているのだ。

俺もけして嫌いじゃないから思わず見入ってしまう物も多々ある。

これだけなら普通に漫画にもある現代誌研究会とかでも良いのではと思ってしまうのだが・・・

やはり「謎だよなリア充爆破テロ部って・・・」

誰に対して言った訳でもないつぶやきだったのだが静かな部室に反応が引き起こされることになる。

インフォメーションの様なポンっという電子音が響き目の前の部室中央部に音と共に女の子が飛び出したのだ。

「……!?」声にならない言葉を飲み込む。

どう形容すればいいか、とにかく現れたのは美少女然とした女子で学校の制服を着ていた。


「――テロ部へようこそにゃん!」

「…………」

 登場に驚いたのが、その言葉遣いにちょっとがっくりだ。

おまけに招き猫のような猫手を動かし片足を上げながらの挨拶を受けてどう反応していいやら…・・・


「………………」

 黙ったまま見つめ合う事になっていると、またピょコっと猫手を動かした。


・・・なんとも力が抜ける。

これが多分、姉貴の言ってた面白い事なのか・・・?

戸惑いながら訊ねてみる。

「…ええっと…キミは……?」

「ああ、良かった。ちゃんと見えてますね?。反応が無かったから見えて無いかと思いましたにゃんよー」

いや、見えてるんだけど言動に面食らってる訳だよ。

「…そうでした。自己紹介をしますね」こっちの反応は置いて勝手に自己紹介をはじめるのか・・・。

「自分はテロ部の仮想アバターで名前はまだなくて、ネコと申しますにゃっ」勢いよく一礼するが、一部聞き慣れない言葉と言葉がおかしいのが気になる。

「……仮想アバターって?…」

「はい、先頃から運用され始めた仮想アバターとは、言ってしまえばインターフェースの一種で各部活動をする学生を補助する支援コンピューターシステムにゃんです」

 要するに、語尾はにゃんらしい。

いや、そうじゃなくてつまりはどう言う事なんだ?

「よく分からないです・・・ネコ…さん」たぶんその語尾が名前の由来だと思う仮想アバターに聞いてみる。


「―主として仮想アバターは、各部活動に際しての様々な手続き等を顧問となる先生を介さず代わりに受理し、学生の話し相手からカウンセリングまで行います。ただし、各部によって仕様が異なるのでご注意下さい。また、現在の自分は常に学生方と同じ容姿を選択され、部室内に仮想投影されています」


「・・・・・・なんだ?」

急に違う人格になった様に固い口調になるネコに戸惑う。

「どうしたんですネコさん?」

「……はい。どうしましたか少年」

少年って、どうなってしまったんだこの支援コンピュータ。

心なしかさっきまでのネコ語を使ってた顔と違うように見える。


「あの、そのネコさんでいいんですよね?」

「そうです、ここの部員方からはネコと呼ばれています」

 急に溝ができたみたいに受け答えがそっけない。

 いったい、これは何がどうなっているんだ?

 何かのシステム障害が起きたのか?。でも、俺は関係ないよな。ただ、一方的にアバターの方で何か問題が起きたとしか考えられないし。

 どうしたらいいのか悩んでいるとまたネコが話しかけてくる。


「―そうだ、キミちょっと机の下をのぞきなよ」

「はあ?」

 いきなり、何の事か分からないがまた言葉使いが変わっている。

「いいから、見てごらんよいい物を見せてあげるからさ」

まったく、俺の疑問など気にしない様に脈絡のない言葉をネコが言う。

 さらに微妙に面白がる表情を湛えつつ椅子へと落ち着く様は気まぐれなお嬢様といった風で、なんかホントにそんなお嬢様に振り回されているみたいに思う。

相手は人ではなくただのシステムだと言うのに・・・。


――で、言われるままに机に潜り込む俺はなんだかな。

一応、部室の中央に配された机は一枚板の大きなもので特にこれと言った面白いものがある訳でもない普通の机でしかなかった。

「何もありませんよネコさん?」

「ふむ、そうかな何も無いかな」含む様な言葉を返すネコの方へ視線を送ると、ネコのきっちりと上履きを履いた足先とニーソックスに包まれた膝を見る事になる。

 空間投影とは言え、こんな普段は見えない位置でも忠実に再現されたアバターの足に感心していると、再現された足の線が動き膝が動くのに目線が行くと並んだ両膝の間から見えるモノが…………!!?。


 ガンッ!


 打った頭の痛みより目の前の光景の方が衝撃があった。

「ちょっーーまッ!!?」

 何を考えてるんだあいつは、こんなモノを俺に見せてどうしようって言うんだ。そして、俺は何を考えているんだ相手はただの映像にすぎないんだ。いや映像だからヤバいというか……

 

と、とりあえずいつまでもこの状態は不味い。

動揺のまま頭を何度か打ちながらどうにか机から這い出した俺にネコが追い打ちをかける。

「――何か良いものは見えました?」しかも、含み笑いさえ浮かべて…。

―知られてる。

「…………っ」ヤバい。いま、どんな顔してる俺っ!。

ぜったい、顔が赤い気がする。

こんなハズい事無い気がする。泣きそうだ。

落ち着こう、相手は女といえただの映像だぞ。べ、別に見たからって責められる事は何も無い!・・・はず。だよな。

 そんな混乱の極みに達している俺に最悪の展開が待っていた。


「よっ!。どうだ、テロ部は?」

「わぁーーッ!?」こんな状況で、いきなり肩に手を回され声を掛けられたら驚きもする。

「おいおい、驚きすきだろ」

「…姉貴っ!。いつから」

「いや、今さっきお前が机の下から頭打ちながら出て来た時からな」

姉貴の態度に、まだあの事はバレては無いと踏む。

「で、机の下で何をやってたんだお前?」

「ちょ、ちょっと。ご、ゴミがね・・・」

 苦しいがネコとのやり取りを知らなければ大丈夫だと自分を納得させる。

「それで、いい物ってなんだ?」

 そこは、聞こえてたか・・・


「ふーん、まいいや。そうだ、ネコ。こいつ私の弟だから仲良くしてやってくれ」

「ふふっ、もう仲良しですから大丈夫ですよね?」

「ぐはっ」や、やめてーネコさん。何その言いまわし。ホントにシステムですか貴方は・・・

「・・・・・・そうか。もうそんなに仲良くなってたとはなー。じゃあウチに入ってくれるって事だな弟」

「はぁ?、何勝手な事を言って・・・るん・・・」

 姉貴の顔が醒めた様な眼つきに変わっている。

「――お前、見ただろ」

「な・・・、何の事でしょうか…」・・・ば、バレた。

「しらばっくれるの訳か? ふーん、だったらネコに聞いてみるか」

「や、止めてくれ姉貴。それだけは・・・」

もしネコに聞かれたら、ありのまま喋るに決まってる。一切の憶測もなく。そんなの喋られでもしたら、俺一生・・・

「よし、新入生も決まった事だし皆を呼んでくれネコ。こいつを紹介するからな」

「はーい、じゃあテロ部の皆にメール出すちゃ♪」

そう言いネコは空中でキーボードを打つ動きをしだした。また、言葉遣いが変わっている。

「なあ、姉貴。あのアバター壊れて無いよな。さっきから言動がおかしいんだけど」

「ああ、あれで正常だよ。ただ、ウチのネコってか仮想アバターは特殊でさ、特定のキャラクターに固定化されてないのさ」

「それって、どう言う事?」

「うーん、何ていうか一言で言えば性格の変転性を持ったキャラなんだよ」

「それって、つまり“気まぐれな性格”のシステム?」

 そんなシステムありなのか?

「開発者に言わせれば、仮想アバターは二次元に置いて定型化されたキャラクターの性格及び言動を模倣して投影させているに過ぎないらしいんだ。だが、ウチの仮想アバターにはそれら全部のキャラの言動を余すことなく投影させているそうだ・・・」

「なんで、そんな事を・・・」

「それは、決まってるだろ。ウチはリア充爆破テロ部だぞ。その方が面白いからに決まってる」

 そう言って笑う姉は本当に楽しそうに見える。

「・・・・・・・・・」対して俺はあきれて言葉にもならなかった。

 

 ホント、俺この部に付いていけるのだろうか・・・



終わり

  

今回のテロ部シリーズ「テロ部のネコというもの」いかがだったでしょうか?

前話とはだいぶ毛色の違う感じとなっていますが自分の中で書きたいものを書いてしまったなという所がありこのような作品となってしまいました。


楽しんで頂けたのなら幸いです。


また、感想などいただけたら嬉しいですm(__)m



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