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こんばんは、人類の敵です。  作者: 漣たきをん
第一話 赤い雨
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そのいち


 今日あたり、それはくるのかなと、予感はしていた。


 天気予報は、あいも変わらずはれのち雨だった。時間はまだ下校時刻になったばかりだというのに、昇降口の天窓から差し込む光はどんどん弱々しくなっていく。埃っぽかった空気にかすかに湿った匂いが混じるこの時間が、雪晴はどことなく苦手だった。

 部活へ行くひと帰宅するひと寄り道の算段をするひと、にわかにあわただしくなる生徒の波を遠慮がちに避けながら、雪晴は掲示板に貼られた告知ポスターの内容を念のために確認する。

 市立七瀬中学下校委員会。滲んだ文字。

 少し神経質に過ぎる筆致で書かれた名前の中に、『木桜雪晴』──いかにもとってつけたように継ぎ接ぎされた自分の名前を確かに見つけた。

 いやいや、最初から期待なんてしていなかったけれど、と誰にともなく言い訳しつつ、観念して時間を確認した。まだそんなにあわてるような時間じゃなかったけれど、先に行って休んでいてもいいだろうと思う。向こうにはクラスメイトもいないだろうし。

 浮き足立った昇降口の喧騒を尻目に、校舎東側の非常口へと向かう。

 非常口とは名ばかりの、それは常に開けっ放しのただの鉄扉だ。その向こうには中庭を突っ切る渡り廊下が伸びており、敷き詰められたすのこはこれでもかというほど汚い。

 きん、と張り詰めたような冬独特の空気はないけれど、だからこそ身体の芯までじわじわ浸透する冷たさに、思わず身震いして、こみ上げる咳をがまんできなかった。

 本格的にやられたかな、と思いつつ、見上げた空は嫌になるくらいの曇天で。失敗したなと雪晴は思う。置き傘がない。そんな自分を狙い撃つように今日何度目かの校内放送が聞こえてきた。

『第一下校時刻です。部活動、委員会活動のない方は急いでおうちに帰りましょう。本日の炭素濃度はレベル3です。本日のレベルは3です。コーティングされた傘、レインコートの携帯を忘れずに。みんな一緒に、必ず手をつないで帰りましょう。繰り返します──』

 この国に生まれたひとならば、物心ついた頃から毎日聞いている放送。だけど雪晴はいつも思う。物心ついた頃──その物心ついた頃って、いったい自分にとっていつのことなのか。例えば小学校のとき、この放送を聞いていた自分はなにをしていただろう。

 記憶はある。そのときの光景を言葉にしろというならいくらだって書き出すことができる。

 だけど違う。なにかが違う。自分のものなのに、自分のものじゃない感覚。本当の自分は、ここじゃないどこか別のところで今の自分を眺めてて、

 やめとこう。雪晴は自嘲する。

 また咲良さんに「厨二病、乙」とか言われるのがオチだし、とか、そんなふうに考えていたせいかもしれない。

 噂をすれば、影だった。

「きーざくらー♪」

 振り返ろうと思ったその時にはもう遅かった。

「どーん!」

 やぶからぼうに背中を蹴っとばされた雪晴はなすすべもなくすのこに顔面を打ちつけていた。痛い。とても痛い。ここ一週間はずっと三時の方向だったからすっかり裏をかかれた。不覚だった。

 突然の襲撃者は突っ伏して悶絶する雪晴の頭上へとっとっとっと回り込むと、

「お酒は、二十歳を過ぎてから!」

 ずびしぃ! と気持ちいいまでに人差し指を突きつけて仁王立つ。

 わけがわからない。

 意味不明な勝どきもさることながら、なんの前触れもなくいきなり背後から変形のシャイニング・ウィザード──膝裏を踏み台にされた──かましてくる理由もわからない。だけど今さらそんなことにいちいち頭悩ませていては彼女とはとうていつき合ってはいられない。

 咲良さくら。転校してきて右も左もわからなかった雪晴に、「〝さくら〟つながりだね!」のひとことで瞬く間に最も親しいお隣さんの地位に滑り込んできたクラスメイトそのいちだ。

 ナチュラルに染めた長い髪をぶっといツインテールにしており、ちんまい上に童顔のため、とても同じ中学ニ年生には見えない。が、かといって彼女が通学帽やランドセルを身につけたからといって小学生に見えるかというとそれは違うと誰もが言うだろう。

「ちなみに、〝どん〟と〝呑〟をかけてんのね!」

「えー……っと」

 どこからツッコもう。両肘を支えになんとか彼女を見上げながら、雪晴はしばし沈考する。

 ①あー、苗字。苗字とね、かけてるわけですね。

 ②とりあえず死ぬかと思いました。

 ③てかなんでそこはスパッツなんでしょう。

 ④あとこの角度だとなんだかいろいろとアレです。咲良さんはちんまい。しつこいようですが、顔もとても中学生とは思えないほど童顔です。かといって誰もが小学生と間違えるかというと、決してそうはならないでしょう。ある一部の自己主張激しい身体的特徴──主に胸部のせいで。

 ありていにいうと、乳がでかい。

 ここから見上げるとすごくアレなのです。でかいなんてもんじゃない。乳が七分に空が三分。乳がでかすぎて咲良さんの顔が見えない。それに加えてうちの制服は脇下くらいのハーフジャケットなので、この角度だとその下のブラウスが丸見えだったりするんですが、なんだか第三ボタンあたりがひどい虐待を受けています。というかボタンとボタンの間がはちきれんばかりにホニャララで、さらにその下のアレがですね以下自主規制。まさに歩く目の毒生ける目の保養。昨今ゲリラ的に開催された校内乳トーナメントのディフェンディングチャンピオンの名は伊達じゃないといっても過言ではないというレベルの話じゃない。

 選択肢を選ぶまでもなく、そんな思考がたぶん駄々漏れだったのかもしれず。突然、

「うむ! そうか!」

 とても男らしい返事が返ってきた。

「どきどきしたか!」

「へ?」

「どきどきしたかおっぱいとか!」

「へぁ?!」

 途端、咲良はこれみよがしにシナをつくると、前かがみでのぞきこんできた。

「だからぁー、木桜は好きかなーって。私の──おっぱいとか?」

 ねえさん、キケンです。空が。空さえも見えません。

「いや、その、ええ?!」

「相変わらずウブですね! だがそれがいい!」

「なんにもよくないだろ」

 どかん、音がして、空を覆っていた乳が突然の横Gにけしからん感じに歪みながら吹っ飛んでいった。

 なんの容赦もなくけんかキックでもって咲良の横っ面を蹴り飛ばしたのは往村真太。

 咲良とは幼稚園からの幼馴染で、同じく「ってことは俺は〝ゆき〟つながりか」のひとことでいつのまにか一緒につるむようになったクラスメイトそのにだ。

 ぶっきらぼうで常に斜にかまえており、学ランのホックを止めたことがない。鋭い瞳は三白眼で、よっぽどのことがない限り声をかけてくる者もいない。

 だけどそのへんが受けているのか、レジスタンス的に強行された校内火遊びしたいコンテストの序列第一位だったりもする。

 実際ホックを止めていないのは新しい制服を買うお金がないだけだし、ぶっきらぼうなのも、低く響く声に皆がおびえることを気にかけてのことだし、相手の顔を見ないのも、三白眼に誰もが恐れをなすことを知っているからだ。雪晴にとっても、いつも暴走する咲良を身体を張って止めてくれるいいひとなんだけども。

「くだらん質問してんな。木桜が困ってっだろ」

「く、くだらんくて悪かったわね! あんたにはカンケーないでしょ!」

「んだと?」

 ぎろりと、上目遣いににらむ。近隣の不良どもがあまりの迫力に更正せずにはいられなかった鬼の眼光だ。

「さくら、お前のことはばかだあほだまぬけだぱーちくりんのぷっぷくぷーだとは思ってたが、よもやそこまでとは思わなかったぜ」

「ど、どういう意味よ。ってか、あんたにとって私ってそこまでなんだ?! ぷっぷくぷー!?」

「お前、自分の乳なめんな」

 途端、咲良の顔が耳まで沸騰する。

「なな、なんであんたがそんなこと知ってん、……っ?!」

 激しく恥ずかしい勘違いをしてしまったっぽい咲良が口ごもるも関係ない。ウブな下級生が見たら一発で恋に落ちるに違いない眼光を往村は容赦なく突き立てる。

 往村真太。外見や言動は確かにほめられたもんじゃないかもしれないけれど、本当はいいひとなのだ。件の不良どもにだってなんだかんだで最終的には再就職先を世話してやるくらいいいひとなのだ。とてもいいひとなのだ。

「お前の乳を! 嫌いなやつなんざいるわけねえだろうが!」

 これさえなければ。

「……ん? はぇ? くだらんって、そっち?!」

「いいかさくら、確かにお前は遅刻はするわ今時廊下に立たされるわ、料理をすればブタも食わんし、中学上がるまで『なんとかなるよ、ぜったいだいじょうぶだよ』って寝言なおんなかったし縁日で買ってきたひよこにケロちゃんて名前つけて『なんでケロちゃん関西弁しゃべらへんの?』とか真顔で聞いてくるし、よく聞けさくら、ひよこは関西弁どころか人語を操らねえ。っていっても本気できょとんとするし正直どん引きなんてもんじゃない。誰に見捨てられてもしょうがないレベルだ。だがな、さくら。俺はそうしない。俺はお前を見捨てない。なぜならそこに、」

 びっと、胸元を指さして、

「その乳があるからだ」

 これ以上ないほど決死の表情で言い放つ。

「いいかさくら、お前はもっと、自分に誇りをもっていい。いや、お前の乳に、誇りをもっていい。お前は、生きてていいんだ」

「いやいやいや、なんで私が励まされる展開?! ヘコむわ! 逆にヘコむわ!」

 なんだかいよいよ話の展開が空中分解風味な上、ギャラリーも増えてきたみたいなので、そろそろ止めたほうがいいのかな、と思ったそのとき、

「はいはい、ほらほら、おっぱいは正義おっぱいは正義。無駄な抵抗しないの」

 真打登場、と思ったのは雪晴だけではない。ふたりの間にほんわか割って入った彼女に、だけど咲良は涙目で反論する。

「ちょ、おかーさん?! 私? 私が悪いの?」

「いえいえ。だからおっぱいは正義だってば。つまりさくらちゃんが正義。誇りをもっていいんだよね真太くん?」

「お前は、生きてていい」

「なんであんたの許しがいるんじゃー!」

「生きてていい」

「ぬあー!」

「はいはい、ほらほら、とりあえず、木桜くんびっくりしてるから。放置されてるから」

「どいておかーさん! そいつ殺せない!」

「殺さなくていーの。殺したら犯罪だから。犯罪はそのおっぱいだけでいいから」

「?! さっきおっぱいは正義って?!」

「……さくらちゃん?」

「は、はい」

「いいことを教えてあげる」

「……?」

「正義なんて、どこにだってあるのよ?」

「ひどい!」

 なんだかよくわからない理屈で咲良が轟沈する。ギャラリーからはなぜか拍手が沸き起こり、どこからかおかーさんコールが巻き起こる。

 なんだこの学校。

 いつものことながら雪晴が呆気にとられていると、

「だいじょうぶ?」

 声に見上げて、はっとなる。

 耳元の後れ毛をかき上げつつ、こちらへ手を差し伸べてくれたのはたった今咲良を木っ端微塵に撃破した我が校のおかーさん、冠月 桂。

 いつもほんわか笑顔で物腰やわらか。どこまでもパルチザン的に展開されている校内団地妻選手権で二年連続ぶっちぎりの優勝をさらっている才女だ。

 咲良と往村につられて、「んー、じゃあ私は〝二十歳になってから〟つながりだね」と笑った彼女のあまりのほんわかさに、当時、たっぶり30秒呆けてしまったのはここだけの秘密だ。

 あの時も「あー、でもなんかそれだと二十歳にならないとつながれないみたいだね」と舌を出した彼女に、「だいじょうぶ、都条例でもないわけだし、同意の上であればいつだっておっけーだよ!」とか言った咲良をやっぱりけんかキックで往村がぶっとばしていた。そんなふたりをほほえましそうになだめているのがいつもの彼女のイメージだ。

 ちなみに咲良に「おかーさん」と呼ばれてはいるが、あくまで名前から派生した呼び名であって、通常こんなにでかい娘のいる女子中学生はいない。むしろ誕生月的には最年少だったりするから驚きだ。

「ん?」

 再度促すように冠月が小首をかしげる。

「あ、す、すみません」

 どこか緊張した面持ちで、雪晴はその手をとっていた。

 途端、

「あら?」

 なんですか? 素で返しそうになって、はたと我に帰る。

 とっさに手を引っ込めてしまってから、自分のうかつさを呪った。

 これじゃあ気づけと言っているようなもんだ。熱にうなされて、正常な判断ができなくなっていた。

 じっとこちらを見下ろしながら、冠月がぽつりと呟く。

「……熱っぽい」

「そ、そうですか?」

「それに顔も赤いかも」

 じっと瞳を細めて、こちらをのぞきこんでくる。

 思わず咳き込みそうになる咽喉を押さえつけながらも、雪晴は本日最高の笑顔をでっちあげる。

「……冠月さんの手に触れて、うろたえない男子はいません」

「……っ」

 わずかに、冠月の表情が曇ったような気がした。怒ったような、なんだろう──寂しいような。

 ぞくりとした。自分はまた、なにか間違ってしまったのだろうか。いくらごまかすためとはいえ、調子に乗りすぎたのかもしれない。とにかくなにか言わないと──口を開きかけた瞬間、

「おねえさんをからかうんじゃありません」

 ほんわか、いつもの冠月 桂がそこにいた。

「あ。でもそういえば、誕生日は私のほうが後なんだっけ」

 ぺろりと舌を出す彼女に、さっきの曇りは微塵もない。気のせいだったのだろうか。ただの思い込みが見せた幻だったのだろうか。それともさっきの自分のように、笑顔でごまかされただけなのだろうか。いつもながら、距離感がわからない。自分はどこまで踏み込んでいいのかがわからない。それがとにかくもどかしく、こわくてたまらない。

「どうしたの?」

「え?」

「いつまでもそんなとこに寝っころがってたら、悪化するよ?」

 かなわないな、と思いながら、再度差し出された手をとる。

「すみません……」

「こら、木桜くん」

 びくりとする。今度はなんだろう。

「こういうとき、私たち人類にはとても便利な言葉があるんだよ?」

「え?」

 にっこりと笑って、冠月は謳うようにこう言った。

「ありがとう、そのひとことが、潤滑油。字余り」

 おおおおお、と──まだいたのか──ギャラリーがどよめく。

「いや、余ってないけどな、字」

 容赦のない往村のツッコみにも、冠月はものともしない。

「気持ちはわかるけど、木桜くん、なにも悪くないよ? 悪くない人はあやまる必要なんてないし、ありがとうって言ってもらった方がこっちもうれしいし」

 いつもの笑顔で、諭すでもなく、責めるでもなくほんわか冠月は言い募る。雪晴はたまらず泣きそうになる。こみ上げる咳をこらえるように、彼女の笑顔をまっすぐに見上げることができない。

「そうよそうよ、いっつもあんたあやまってばっかだし」

 いつのまにか咲良が復活したようだった。

「なんかこっちが悪いことしたみたいじゃん」

「いや、お前は悪いことしただろ」

「そうよ咲良ちゃん、人間は普通、真空とび膝蹴りするとふっとぶようにできてるんだから」

 キックの鬼……? さざめくようなギャラリーたちのツッコミ。

「キックの鬼じゃないし!」

 いやでもおかーさんの言うことだし…… ざわつくようなギャラリーたちのツッコミ。

「いやだからシャイニング・ウィザードだし! 閃光魔術だし!」

「どっちでもええ」

 どかん、

「うわ、ちょ、あぶ、だから蹴んな! おにゃのこ足蹴にすんな!」

「おにゃのこゆうな」

「今出てたよ?! 屋根の向こう出てたよ! 雨降ってたらどうすんの! ばしっていくよ?! 大惨事だよ?!」

「それは残念だったな」

「なにおー!」

 怒髪天を衝きいきり立つ咲良だったけれど、

「せえーのっ、ゆっきむっらくーん♪」

 突然ギャラリーの一角から黄色い声が飛ぶ。

「あんま咲良さんいじめちゃだめよーっ」

「いじめてねーよ!」

「きゃあー♪」

「なんで?! なんでそこで黄色い悲鳴?! だまされてるよみんなおかしいよこいつただのおっぱい魔人なのに!」

「おっぱい魔人とかゆうな」

「だっておっぱいだろお前!」

「俺はおっぱいじゃないけどまあそこは否定しない」

「しろよ否定! しなきゃお前なにやっても許されるとか思ってんだろ!」

「思ってねーよ」

「うそつけ! なら隙あらばもむとか脇乳間に手添えてたぷたぷとかすんなよ! 気持ちいいっちゅーの! どうにかなっちゃうっちゅーの!」

「き、きもちいいんだ……」

「……へ?」

「どうにかなっちゃうんだ……」

 予期せぬ衝撃的な咲良の告白に女の子たちはちょっと赤面しつつ引いていた。

「え、いや、ちょっと? ここ、私が引かれるとこ? 普通このセクハラおっぱい魔人が抹殺されるとこなんじゃないの主に社会的に?」

「でも、きもちよかったんだよね……?」

「いやそれは……」

「どうにかなっちゃうんだよね……?」

「あ……あうあうあー!」

 キレた。

「はいはい、ほらほら、どうどうどう、泣かないの」

「だ、だって、だってあいつが。おっぱいが」

「はいはい、まあまあ、おっぱい違うでしょ。真太くんでしょ」

「そうだぞ、おっぱいはむしろお前だぞ」

「あうあうあー!」

「はいはい、ほらほら、真太くんもあんまりさくらちゃんをいじめないの」

「いじめてねえよ」

「いじめられてないし! こんなやつにいじめられるわけないし!」

「はいはい、そうね、いじめられてないね」

 やっぱりおかーさんねえ。

 おかーさんは違うねえ。

 しみじみとギャラリーたちがうなずく。路ゆく人々が微笑ましそうに、どこかうらやましそうに自分たちのやりとりを眺めている。

 カオスだった。

 まったくむちゃくちゃででたらめだけれど、これ以上ないほど楽しかった。

 いいな、と雪晴は思う。改めて思う。

 誰もがうらやむこの三人。七瀬中が誇る各コンテストの覇者であることはもちろんのこと、決してそれだけじゃないことを誰もが知っている。だからみんな笑ってる。みんなの笑顔の中心にはいつだって三人の姿がある。だからこそ思う。雪晴は笑顔の裏で思う。

 自分なんかが、この輪の中にいていいんだろうか。




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