とある雨の日のビデオレター
こんばんは、人類の敵です。
今日も天気は雨、です。こっちでも天気予報は優秀です。明日も雨。明後日も雨。その次も雨。雨のバーゲンセールね。仕入れ値はいくらかしら。薄利多売はどこの世でもおんなじか──
──ごめん。ふざけすぎた。実はあんま、時間ない。
姉さんには──悪いと思ってる。なにを言っても言い訳にしかならないけど、所詮、自分のためだけど、ごめんなさい。今はこう言うしかないです。
そっちの天気はどう? こっちでは今も聞こえてる。痛そうな、すごく──痛そうな声。いつも鶏の声よりも早く、救急車のサイレンの音で目が覚めます。昨日もまたひとり、知らないひとに──ここ、TVならピーって入れられるんだろうけど、まあいいや。
人の噂は七十五日っていうし、世の中もっと大事な事件があふれてるんだから、いずれ忘れてくれるだろう、気づいたら元に戻ってるだろう、って、思わなかったといえば嘘になります。だけど、いつまでたっても雨はやみません。
私も、やめられません。
今朝、すれ違うひとがこぼしてた。こんな毎日もう嫌だ。
そこで、おばさんが不安そうに話してます。一刻も早くなんとかしてほしい。
それは私も同じだけど、くやしいけど、私は未だ他にいい方法を見つけられない。
他人の声がこわいです。TVからは連日私の名前が連呼され、どこに行っても知らない街なんてない。私は、私以外になりえない。
もういいか、と思います。
所詮、行き着くところまできたのだから。これ以上下がることなどないのだから。もう、全部うっちゃったっていいんじゃないか、って思います。なにより自分が選んだ路なのだから。
そう、私は、人類の敵なのだから。
──ごめん。いよいよ時間がないみたい。
雨はまだ降ってます。天気予報はほんと、優秀です。
そっちの天気は、どうですか?