なつめく
掲載日:2026/07/11
蝉時雨降る真昼の刻
ぼやける日差しとあなたの横顔
暑いね、って
微笑み交わす午後四時半
弾けるラムネを口に運べば
舌の上に夏が広がる
瓶を空に透かしても
揺れる青は変わらないまま
清かな風に乗った草の匂い
遠くでじんわりと歪む陽炎
手を伸ばせば触れられそうで
触れてしまえば
すっと壊れてしまいそうな
決して届かない距離に
胸の奥が静かに響く
言葉にできないまま
ラムネと一緒に飲み込んで
ただ隣で
同じ季節を見つめている
同じ蝉の声を
肌を焼く暑さを
そして
瓶のなかで揺れるビー玉を
あぁ、今年も
何も変わらないまま
時間は少しずつ遠ざかってゆく
夏らしい世界に染まってゆく
ご覧いただきありがとうございました。
やまない蝉時雨。
誰かに届きますように。




