4 戦慄の通り名! 恐怖のサビたんと青虫の贈り物(テロ)
「オ〜レ〜は、ダイフク~、ダイフクだ~に お餅じゃな〜いだ〜に〜 お猫様~だ~に~よ~」
「ダイフク、凄い歌だにゃ」
「にゃにゃ! だって、今日はリーダーと一緒に、パトロールダニよ 嬉しいに決まってるダニ」
「だけど、歌詞のセンス最悪だニャン」
「クロッチ、うるさいダニ!」
フサフサの真っ白な尻尾をピンピンに立てて、ダイフクはオリジナルソングをご機嫌さんで歌う。
その少し後ろをリーダーとクロッチが並んでゆっくりと歩いていた。
昨日、クロッチから今日のパトロールの事をきいたダイフクは、リーダーが一緒に来てくれると聞いて大喜びした。
クロッチに迷惑をかけてしまった事は事実であるが、その迷惑をかけたクロッチから、リーダーとのパトロールのお誘いを受けたのだ。
ダイフクを誘う必要が無いのに、あえてダイフクを選んでくれたクロッチの気持ちが嬉しかった。
「リーダー?せっかくだから、質問しても良いダニ?」
「どうぞにゃ」
「リーダーも、人間が怖いと思ったことあるダニ?」
「あるにゃ、というか今でも怖いにゃ」
「ダイフク、俺も怖いニャン」
「クロッチも怖い時があるってのは、わかるダニ だけど、リーダーも怖いダニ? にゃにゃにゃあ 信じられないダニ」
「そのうち、ダイフクもわかる時が来るにゃ」
リーダーは、いつでも凛とした態度で、ニャンダバーのお猫様たちをまとめている。
ダイフクは、リーダーが人間を怖がっているとは、到底思えなかった。
突然、クロッチが脚を止め、公園の側に植えられている橙の木をジッと見つめていた。クロッチの真っ黒なお耳とお髭が前にピピピンと出ている。
「リーダー、いいもん発見しましたニャン」
「にゃにゃにゃにゃにゃ! これは、なかなかのもんだにゃ」
「何? 何を見つけたダニ?」
クロッチは、お尻をフリフリ、狙いを定めてピョーンとジャンプした。リーダーもニヤニヤとして、クロッチを見ていた。
バシッと橙の木の枝を、クロッチが勢いよく叩くと、ボトっと青い色した何かが落ちてきた。
「リーダー、久しぶりにアレやりませんかニャン?」
「はうぁー! 青虫ダニ! ウネウネの青虫ダニ!」
「クロッチ! ひさびさにアレやるかにゃ」
青虫だって、お猫様には大事なタンパク質だ。しかし、リーダーはその場で青虫を食べずに、口へ咥えて持って行く。
「クロッチ、何が始まるダニ?」
「面白いモノが観れるニャン! ダイフク、リーダーについていくニャン リーダーのすごいところ見れるニャン」
スタスタとリーダーは、青虫を咥えたまま歩き出した。そして、ある家の玄関前に青虫を置いた。
「ダイフク、上から見るニャン」
スタッと近くの木の枝に登っていくクロッチを、ダイフクが慌てて追いかけた。
リーダーは、クロッチとダイフクが、木の上から見ていることを確認してから、可愛らしい声で鳴き始めた。ダイフクは、リーダーのひかる手腕に釘付けだ。
「ニャロン、ニャロ~ン」
「出た、必殺! お猫様メロメロなで声ニャン」
「うわー、めっちゃリーダーのお声、めちゃめちゃ可愛い声ダニ!」
リーダーは、尻尾をピーンと力強く立てて、もう一度誰もがメロメロになりそうな甘い声で鳴いてみせた。
玄関の扉が開いて中から、一人の女性が顔を出した。クロッチとダイフクは、グッと首を伸ばしてリーダーの技術を見逃すものかと見続ける。
『あら、【サビたん】いらっしゃ.......ギョエーーー!」
「【サビたん】って、リーダーのことダニ?」
「そうニャン! 人間たちが、リーダーの恐ろしさにつけた恐怖の通り名ニャン カッコいいニャン」
人間にとって悪の限りを尽くし、怖がられているお猫様には恐怖の対象として通り名が名付けられる。
ニャンダバーのリーダーもそのお猫様の一匹だ。恐怖の象徴として、【サビたん】と人間たちになんとも恐ろし気な通り名が名付けられていた。
「ダイフク、よく見とけニャン」
リーダーは、人間の前でゴロンと横になり、お腹を見せた。
『やだ、やだ、【サビたん】、青虫はダメなの。プレゼントでも青虫だけは、ダメなのよ!』
「アレもリーダーの必殺技、腹見せだニャン」
「にゃにゃにゃにゃにゃー! 何という恐ろしい作戦ダニ! めちゃめちゃ悪い行動ダニ! 流石我らのリーダーダニ」
『【サビたん】気持ちだけ、貰っておくから......青虫どっかやって! お願いだから どっかに持ってって〜』
リーダーは、人間の前にちょこんとと座る。じっと人間の顔を見つめる。長い沈黙が更なる恐怖を人間たちに与えていた。そして、極め付けに、首を傾げて「ニャン」とリーダーが小さく鳴いた。
「完全に堕ちたニャン」
「リーダー、超クールダニ カッコいいダニ!」
リーダーは、青虫をパクッと咥えてゴクリ飲み込んだ。人間は、ふらふらとその場に座り込む。
そして、リーダーに屈服した人間は、許しを乞うために貢ぎ物をリーダに捧げた。
リーダーは、貢ぎ物の煮干しを数匹貰って、クロッチとダイフクの所に戻って来た。
「ダイフク、面白かったにゃ?」
「シブいですにダニ、リーダー 超、超、超、カッコよかったダニ」
改めて、リーダーの凄さを知った。尊敬の眼差しでリーダーを見つめるダイフクだった。




