22 三段目の特等席。幻のタワーと窓の外の友だち
「おぉぉぉ!箱の中ニャン!窓いっぱいある~。あっちもこっちもちっちゃな窓ニャン」
シュタタタ!パスパスパス!ピシピシピシピシ!カリカリカリカリカリカリ!
「ムムム。ぬぬぬぬぬ。窓からお顔が出せないニャン。前脚は出るニャンね!トゥオウ!」
絶賛、ダンボールの中で大暴れ中のチャイロ。刺激的な小窓から前脚が出てきて、小窓の周りをタシタシ探っては引っ込み、別の小窓から前脚が出て、再び探っては引っ込んで行く。
「むぉ!こ、これは、ピンポン玉ニャン!コロコロコロリン!転がすニャン」
ピンポン玉を見つけ、大興奮継続中のチャイロ。男店員は、騒がしいダンボールを優しい眼差しで見つめていた。
「さて、【モカ】のために、これを組み立てますか」
ドライバー片手に、説明書を読みながら、男店員はパーツを一つ一つ繋げて組み立てて行く。
1段目、2段目、3段目、4段目、段差の板が並び、お猫様が喜びそうな隠れ家的なボックスが途中に備え付けられ、ハンモックや羽根のおもちゃなども付いている。
男店員よりも背の高いそれは、天井と床を突っ張って倒れないように対策され、少々の衝撃では倒れない、安全性が抜群のものだった。
男店員は、パーツを取り付けるごとに、その場所で遊ぶであろうチャイロの姿を思い馳せ、組み立てる作業自体が楽しかった。
『このネジを締めて完成かな?』
チャイロを入れていたダンボールは、既に静かになっていた。
『【モカ】眠ちゃったかなぁ~』
箱の中にいたチャイロは、自分を呼びかける男店員の声で目が覚めた。
「うぉっと!ちょっと休憩と思ったら寝ちゃってたニャン!」
箱の中で反応するチャイロ。男店員は、小窓の側で、お猫様じゃらしをプラプラさせた。
「おぉぉぉ!オレッチを誘惑する、お猫様じゃらしニャン!欲しいニャン、頂戴ニャン、むき~」
小窓からチャイロの前脚が、タシタシタシタシと出てきた。
『ご機嫌治ったかな?【モカ】くーん』
男店員は、チャイロを閉じ込めたダンボールを再び開封した。チャイロは小窓から前脚を出しながら男店員を見上げた。
チャイロを抱き抱え、ダンボールの中に組み立て作業で出てきたゴミを入れる。
チャイロ自身は、男店員の腕の中で突如現れたソレを凝視していた。
危なそうな物を全て片付け、チャイロを床に降ろした。そっとソファに腰を掛け、様子を見守る事にした。
「こ、これは..........」
恐る恐るソレの側による。真ん中の棒は爪がしっかりと研げそうなロープがぐるぐる回されている。
ぐるりと周りを回ってみる。だんだんがあって、お昼寝ポイントがいっぱいある。
上の方からは、誘惑のお猫様じゃらしを思わせる羽のおもちゃがぶら下がっていた。チャイロは、全貌を見渡した後、ゴクリと唾を飲み込んだ。
「もしかして、もしかしなくても、ムーンさんから聞いた幻のお猫様タワーなる物ではないのかニャン?」
ぐるぐる、ぐるぐる回りを回るチャイロ。男店員は、そんなチャイロの様子が可愛くて仕方がなかった。
男店員は、チャイロを抱き上げ、先程からチャイロが凝視していた、羽のおもちゃを鼻先に持っていった。
『【モカ】は、これが気になるのかな?』
目の前でプラプラされ、思わず両前脚で掴みにかかる。そして、チャイロを羽おもちゃに届く段にそっと降ろし、そのおもちゃを揺らした。
「男店員!これは、チャイロの秘密基地にしていいのかニャン?ニャンダバー、チャイロ支部でいいのかニャン?」
大喜びのチャイロは、段を登ったり降りたり、羽おもちゃを引っ張ったり、隠れ家にもなりそうな小部屋に入ったりした。
「最高ニャン!中でも一番ここが好きニャン」
チャイロのお気に入りの場所は、3段目の段だった。
「ここは、お外が一番良く見えるニャン。あの木は、クロッチのアニキとダイフクがオレッチを見守ってくれた木だニャン」
お別れの日を少し思い出したチャイロ。
「アニキたち、オレッチのこと忘れないで、覚えてくれてるかニャン」
お外を見て、ちょっぴり寂しくなったチャイロ。側に男店員がやってきて、頭を撫でてくれる。
『最近、遊びに来てくれてた猫が来なくなったんだ。【モカ】の知り合いのニャンコなのかな?いつか来たら、合わせてあげるね』
チャイロは、男店員としばらくお外を見つめていた。




