20 合言葉はモフッと!チャイロの深夜お仕置き大運動会
チャリチャリチャリチャリチャリ。
チャイロは、自転車のカゴの中のバッグの中で、じっと様子を伺っている。
「くそ~。白い人間には、もう会いたくてないニャン。女店員もオレッチの下僕のくせに、酷い仕打ちニャン。お仕置き確定コースニャン」
チャイロが一人ごちていることなんか、全く気づかず、女店員は自転車を漕いで行く。赤信号で止まるたびに、女店員はチャイロに話しかける。
『【モカ】頑張ったね』『凄く良い子だったよ』
「女店員なんか、ぷぷんのぷーん」
無視、無視、無視。チャイロは、ご機嫌最悪で自転車に揺られていた。
自転車は、喫茶店の裏口に停められた。チャイロ自身もバッグが持ち上げられ、何と無くの浮遊感を感じ、喫茶店に戻ってきた事に気がついた。
「オレッチを出すニャン、出すニャン、出すニャーン」
バッグの中で、バインバインバインと大暴れしてみた。
『【モカ】は賢いねぇ。おうちについたの判ったんだ』
【モカ】に反応して「にゃーん」と返事をしてしまった。バッグの中を覗き込む女店員と目があった。
バイン、バイン、バイン、バイン、バイン。
バッグの入り口を巾着のようになっている編み編みネットに、顔やおでこを何度も何度も押し付ける。
「【モカ】には悪いけど、超キュート」
必死なチャイロと違い、生暖かい眼差しを女店員はしていた。
『仕方ないなぁ、おうちの前だけど、出してあげよう』
巾着の紐を指先で解くと、緩んだ入り口におでこをめいいっぱい押し付けていった。女店員は両手で、ぐいっと、入り口を広げた。
勢いよくチャイロは飛び出した。裏口の扉まで、猛ダッシュ。女店員が、扉を開けると、体を滑り込ませ、喫茶店に中に入っていった。
「逃げろ、逃げろ、逃げろニャン。とりあえず、落ち着きたいニャン。オレッチの匂いのする方向へ進むニャン」
『【モカ】お帰り!病院、どうだった?』
「男店員!どけニャン。今は構ってられないニャン」
チャイロは、男店員を無視して、2階の居住スペースを目指す。扉が閉まっているため、前脚でカリカリ引っ掻いた。
「開かないニャン!合言葉がいるニャンか?モフッとモフモフ ニャンダバー!モフッとモフモフニャンダバー!んなーーーーー!開かないニャン」
カリカリカリカリ、カリカリカリカリ。
『おい、早く開けてやって。【モカ】安心できる場所に行きたいのか、トイレがまんしているかじゃないのか?』
『【モカ】今開けるからね。ちょっと待って』
女店員が、居住スペースへの扉を開けたと同時に、チャイロは中に滑り込んだ。
チャイロが目指す場所は、ソファの後ろ。ダッシュで逃げ込み、体がすっぽり入る。
「よーし!オレッチの勝ちだニャン。女店員め、お仕置きしてやるから、覚悟するニャン」
何の勝負か理解不能だが、チャイロはお仕置きに思いを馳せる。
「今夜、決行ニャン」
その夜、男店員、女店員が眠りについた後、チャイロは行動に移る。
「にひひ、寝てる、寝てるニャン」
女店員は、自室でクークーと、規則的な呼吸を繰り返していた。
ダン!と大きな音を出し、部屋を走り出した。
チャイロは、部屋の角から角に猛ダッシュをした。
「チャイロ選手!走った、走った、走ったニャン」
ドタドタドタドタ。
そして床にころりんと転がり、勢いのまま壁に到達。後脚を壁につけ、ビヨーンと勢いをつけて蹴り出す。
びよーーーーーーんと、背中を床につけ、チャイロは床を滑る。
走って、転んで、見事に滑って.......。
真夜中のチャイロだけが参加するお猫様大運動会が始まった。
『【モカ】お願いだから寝かせて~』
お猫様極意、夜中の大運動会。
チャイロからのお仕置きが決行されたのだった。




