14 スパイ・モカの帰還! 玉ナシ回避と愛の告白
チャイロが、3丁目の喫茶店に潜入をしてから、最初の報告にやってきた。
たった、それだけで、ニャンダバーは活気付いた。
「これで、クロッチもゆっくり眠れる」
「アニキ、オレッチがいなくて、眠れなかったのかニャン?」
「にゃにゃにゃにゃ! うるさいニャン」
「クロッチは、心配性ダニ」
ダイフクは、自分だって泣きそうになっていたくせに、自分のことは棚に上げて、クロッチを揶揄った。
「おぉ、相変わらず賑やかだなもし」
「ムーンさん! お久しぶりですニャン」
「ムーンさん、タイミング良いニャン」
「俺の情報網を、甘くみるんじゃないなもし」
「流石ダニ」
「チャイロの顔を見て確信したなもし 立派なスパイになったなもし」
若いお猫様は、えっへんと胸を張った。ダイフクは、ふとチャイロの後ろに回り、お尻の穴に顔を近づけた。ぶらりと存在感溢れるものがしっかりと付いている。
「..........チャイロ? お前、まだ玉があるダニ どうしてだ?」
「玉ナシの儀式が、終わっていないのかニャン?」
玉ナシの儀式とは、所謂【去勢手術】のことである。スパイとして人間の潜む家に潜入する場合、潜入から約1カ月以内に、玉ナシの儀式を受けることが、基本の通過儀礼の一つである。
スパイの先輩であるムーンも、既に玉ナシの儀式を受けている。チャイロも覚悟をして潜入捜査に挑んだことをお猫様たちは知っていた。
しかしチャイロには、二つの立派な玉がぶら下がっていた。
チャイロは二ヒヒと笑い、後で説明すると言って、今は理由を教えてくれなかった。
「むむ 気になるダニ、気になるダニよ」
「ダイフクさん、オレッチのお尻ばかり見ないでニャン」
「変態なダイフクはほっといて、早くリーダーのところに行くなもし」
「にゃにゃにゃ! ムーンさん、酷いダニ」
「ダイフクが悪いニャン」
「そうだ、ダイフクが悪いにゃあ」
チャイロは、おバカな発言をするダイフク、それを嗜めるクロッチ、シロジ、ムーンを見て、改めてニャンダバーに帰ってきたことを実感した。
「よかったニャン」
チャイロの小さな呟きは、誰にも聞かれることは無かった。
ただ、クロッチが心配していたように、チャイロ自身も、ニャンダバーに自分の居場所がなくなっていたらどうしよう、という不安に駆られていたのだ。
ただでさえ、ニャンダバーでは、一か月しか過ごしていなかったのだから。
そして、お猫様たちは、リーダーの元に集まった。チャイロは、すぐ様リーダーの側へ走って近づいた。
「お久しぶりですニャン!」
「チャイロ、おかえり。よく無事に帰還したにゃ」
チャイロとリーダーは、おでこをゴチンと合わせて挨拶を交わした。お互いに記憶に刻んだ匂いが蘇る。
「チャイロ、潜入に無事成功しましたニャン 1カ月たちましたので潜入の進捗報告に参りましたニャン」
ビシっと胸を張るチャイロ。成長期のお猫様だからであろうか、最後に会った時よりも一回り体が大きくなっている。
3丁目の喫茶店に潜入したチャイロの報告を、お猫様たちは待ちわびていた。
ぞろぞろとニャンダバーにいるお猫様がチャイロの報告を聞きたくて集まって来る。
「それでは、報告をするにゃ」
「オレッチ、チャイロは、人間たちによって、通り名を名付けられましたニャン」
通り名とは、人間付けられる名前だ。スパイとして潜入した場合や人間社会で悪猫として顔が売れた場合に名付けられる。
リーダーは後者のパターンで【サビたん】。エリートスパイお猫様の【ムーン】は前者パターンで通り名が名付けられた。
「オレッチは【モカ】と名付けられたニャン ニャンダバーでは今まで通り、チャイロで構わないですニャン」
【モカ】の名前の由来までは、お猫様にはわからない。
潜伏先が喫茶店であるため、人間たちであれば由来に気づくだろう。ただし、その由来が、お猫様に伝わる日が来るのかは、定かではない。
「クロッチから報告を受けたが、見事な【腹見せ】だったらしいにゃ」
「リーダーのおかげですニャン おかげさまで、人間たちをしっかりと虜にする事が出来ましたニャン」
「そうか、よく頑張ったにゃ」
リーダーとの秘密の特訓は、他のお猫様には内緒にしてもらっている。
実際には、クロッチ、ダイフク、シロジの3匹は知っているが、敢えてそんなことで水を指すようなお猫様は、ここにはいない。
「最近、人間はお猫様が、物資を受け取りに来ないとボヤいていますニャン 近々、3丁目の喫茶店のパトロールを再開して欲しいですニャン」
「了解したにゃ クロッチ、聞いたかにゃ?」
「リーダー、明日からでも再開するニャン」
3丁目の喫茶店へのパトロール再開は、他のお猫様たちも喜んだ。
チャイロもみんなの笑顔が見れたことで、お猫様たちが、自分のために影ながら応援し、潜入任務の協力してくれていたことが解って、とても嬉しかった。
そして、チャイロは最後の報告をした。
「にゃ、にゃあ.......................オレッチ、お嫁さんできたニャン」
恥ずかしかったので、最後は早口で一気に言いきった。
「名前は、ミントちゃんって言うニャン」
「ミントちゃんってのはどこの誰ダニ?」
「捨てお猫様ニャン。潜入してから半月たった頃に、女店員が連れてきたニャン」
捨てお猫様とは、人間都合により捨てられてしまったお猫様のことで、そのお猫様1匹では生活が困難な立場のお猫様のことである。
「人間の犠牲になったお猫様にゃ」
「雨に濡れて、弱りきった状態の時に、女店員が見つけて連れて帰ってきたニャン」
「今は、元気になったダニか?」
「すっかり元気だニャン リーダー、確認したい事があるニャン」
「..........オレッチ、お嫁さんもらって良いかにゃん? 後、ミントちゃんにニャンダバーのこと教えても良いかニャン?」
リーダーは、黙って目を閉じた。長い沈黙が続き、お猫様たちに緊張が走る。
お猫様たちはみんな息を飲んで、リーダーの発言を待った。
「チャイロ、ミントちゃんが好きなんだにゃ 幸せになって良いに決まってるにゃ ミントちゃんさえ良ければ、ニャンダバーに連れて来るにゃ」
ぱぁーっと明るい表情になるチャイロ。
おめでとうと言葉をかけるお猫様たち。
「みんな、オレッチのお嫁さんとこれから産まれるであろう子供共々、末永くよろしくお願いしまニャン」
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