13 沈黙の四週間! 兄の涙と強気な瞳の帰還
「おぉ、2匹とも瞼が腫れとるにゃあ」
「チャイロが居ないところを見ると、無事潜入が成功したみたいだなもし」
チャイロを見送り、泣き腫らした顔をしたクロッチとダイフクを、シロジとムーンが優しく出迎えてくれた。
「モフッてモフモフ...」
「合言葉はいいから、早くリーダーの処に行くにゃあ」
「そんな元気の無い合言葉を聞きたくないなもし」
「リーダーの前で、そんなしょぼくれた面をするんじゃないぞにゃあ」
二匹は、お互いの顔を見た。クロッチもダイフクも確かに酷い顔をしている。
「にゃああああ!」
改めて声を出して気合いを入れる。2匹はリーダーの元へ足を運んだ。
「ただいま戻りましたダニ!」
「チャイロは、無事3丁目の喫茶店に潜入致しましたニャン」
「うにゃ! 報告ありがとうにゃ」
クロッチたちから報告を受け、リーダーは拠点にいるお猫様を集めた。大きく息を吸い込み、大きく瞳を開き、全員に呼びかける。
「みんな、チャイロが無事潜入を成功させたにゃ!」
お猫様たちから、喜びの鳴き声が上がる。
「チャイロが落ち着くであろう約1カ月 3丁目の喫茶店から物資の供給はストップさせるにゃ」
「そうだズラ! 我々がチャイロの足を引っ張ってはいかんズラ!」
「俺たちも、チャイロからの報告を待つネイ」
「ありがとう、みんなチャイロを信じて見守ってくれるんだにゃ」
リーダーは、頭を下げてお猫様たちにお礼を言った。お猫様たちも、1匹で潜入したチャイロが、一番しんどいことを解っていた。
この日から、クロッチとダイフクの耐え忍ぶ日々が始まった。
チャイロが潜入し、1週間、2週間と過ぎていく。ニャンダバーも日常を取り戻しつつあった。
ただ、クロッチとダイフクは、代わる代わる喫茶店まで通い続ける。リーダーからは、待つことも大事だと言われているが、遠くからでもチャイロの様子が少しでも分かればと通ってしまう。
最後にチャイロを見送った高い木の上から3丁目の喫茶店を覗いて見たりするのが、ダイフクとクロッチの日課の一つにもなっていた。
リーダーが見守ると決めてから一度も物資の供給は受けていない。
だから側まで行くこともできない。そのかわりパトロールをする時は、様子をついつい見に行ってしまうのだ。
3週間経ってもチャイロは報告に現れない。
そして、4週間目に突入した。
未だにニャンダバーの拠点にチャイロは現れない。
クロッチにとってチャイロは血の繋がった弟である。小さな体で勇気を見せたチャイロの知らせがないことが、無事である証拠だと信じているが、何かあったのではと考えてしまうのだ。
「リーダー?3丁目の喫茶店はいつまで様子を見るのニャン?」
「そうだにゃ!もう1ヶ月経つにゃ....」
リーダーも心配であるには間違いないが、ただ待つこともリーダーとしての役目だとも思っている。
「リーダー、チャイロは俺たちを忘れてしまったらどうしようニャン」
クロッチが、とうとう堪えきれずにポロポロ泣いてしまった。いつも気丈なクロッチが、お猫様の目を気にせず泣いている。
ダイフクも必死で顔を舐めて慰めるが、大きな瞳にいっぱい涙を浮かべている。
「クロッチ! 連絡が無いのは元気な証拠ダニ! もうすぐ、生意気そうな顔をして、報告に来るダニよ」
もう少しの辛抱だとクロッチを宥めた。
「にゃにゃん!今日は辛気臭いニャン?」
「にゃーーーーー!」
クロッチもダイフクも声がした方を見てビックリし飛び上がった。
「アニキ、ダイフクさん。お久しぶりニャン にゃにゃ? 尻尾がボアボアになってるニャン 何かあったニャン?」
「チャ、チャイロ~!」
クロッチは涙が止まらない。チャイロの無事に頭からゴチンコとチャイロに飛びついた。
「クロッチのアニキ、ただいまニャン」
「無事で何よりにゃ よく戻ってきたにゃ」
「ニヒヒ、リーダー ただいまニャン! チャイロ、潜入捜査の報告に帰って来ましたニャン!」
ニンマリとしたアメリカンショートヘアぽい柄の赤茶色したお猫様が入り口に立っていた。
小さな体が、約1カ月で少し逞しく成長していた。生意気そうな顔をしているが、紛れもなくそのお猫様は、チャイロであった。クロッチと似た強気な瞳で立っている。




