10 継承の儀! 兄の背中と喫茶店(ミッション)の受託
「チャイロ! お前はまだ独立したばかりニャン」
潜入に立候補したチャイロに、クロッチが待ったをかけた。母のもとから旅立ったとはいえ、チャイロに潜入任務は、重すぎる。
「今すぐに潜入する訳じゃないニャン ムーンさんだって、若いお猫様が潜入するのが、一番効率的だと言っていたニャン この中で一番若いお猫様は、間違いなくオレッチだニャン!」
「確かに潜入は若いお猫様の方が、成功率は高いってムーンさんがいつも言ってるダニ」
「だけど、チャイロは今日ニャンダバーに入ったばかりニャン」
「アニキは、オレッチが信用できないニャンか?」
「違うニャン」
「チャイロ、クロッチは経験値が足りないと言いたいなもし」
「誰でも最初は未経験ニャン」
「リーダー、俺はチャイロでも良いと思うなもし 先入観が無い方が、癖も無く人間家庭に馴染みやすいことは確かなもし 俺が諜報員としての技も多少は教えれるなもし」
「チャイロ、クロッチもムーンも言っていることは一理あるにゃ クロッチ、お前が1か月間ニャンダバーのノウハウを叩き込むにゃ ムーンも協力頼むにゃ その結果で判断するにゃ」
「リーダー、了解ニャン」
「アニキ、よろしくお願いしますニャン」
「潜入した後の注意点などは、俺が教えてやるなもし」
「ムーンさん、ありがとうニャン」
チャイロの指導に、兄のクロッチが抜擢された。会議も無事に終わり、翌日からチャイロとクロッチは、ノウハウを教えるため、一緒に行動することになった。
「まずは、パトロールで3丁目の喫茶店から、ニャンダバーまでの道順を覚えるニャン」
心配性のクロッチは、近道を始め、危険な道も安全な道も全て教えていった。
最初は土地勘も無かったチャイロだが、自分から、進んで安全確認をするようにまでなった。
「道を覚えたら、次は知り合いを増やすニャン」
「アニキ、どうして知り合いを増やすニャン?」
「一人でどうにもならない時、いざという時に、助け合ったり、相談したり、またニャンダバーに連絡してもらったりできるニャン」
クロッチは、自分が知る限りのお猫様たちに、チャイロを紹介していった。ついでに、自分達が下僕化した人間たちも教えていく。青虫攻撃がよく効く人間についても忘れない。
「チャイロと言いますニャン」
「はじめましてニャン」
「新参お猫様ですが、ご指導、ご鞭撻の程お願いしますニャン」
チャイロもクロッチに恥をかかせる訳にもいかないため、しっかりと挨拶を交わしていった。身体を擦り合わせ、お互いの匂いを記憶に刻む。
チャイロの指導を始めて半月が過ぎた。いつものように、チャイロに人間と付き合うにあたって、注意点など説明していたが、どうもチャイロの様子がおかしい。
「チャイロ、どうしたニャン?体調が悪いのかニャン?」
「アニキ、オレッチと再会してもう半月たったニャン」
「あっという間だったニャン」
「オレッチ、クロッチのアニキを追いかけて良かったニャン。アニキ......ありがとう」
「何、今生の別れみたいなこと言ってるニャン。これからも一緒にニャンダバーでやっていくんだろにゃん!」
「そうニャン!オレッチ、アニキと一緒だニャン」
前脚で今にも溢れそうな涙を拭ったチャイロ。せっかく再開出来たのに、また離れ離れとなってしまうかと思うと、まだ若いチャイロには限界だった。
「チャイロ、潜入したら寂しいとか思う暇はないニャン。しっかり叩き込むから覚悟するニャン」
「はいニャン」
その後もチャイロは、クロッチとムーンに1か月に渡り潜入捜査のイロハを叩き込まれていった。
ごろにゃんのタイミングや甘いメロメロ攻撃の効果など、ムーンもスパイ活動として、基本の技を叩き込む。
「ムーン、クロッチ。チャイロはどうにゃ?」
「リーダー、弟という贔屓目を除いても大丈夫ですニャン」
「クロッチの言う通り、若いだけあって吸収力が半端ないなもし また、柔軟性に富んでいるので、1匹でもやっていけるなもし」
2匹からの報告を受けたリーダーは、チャイロを呼び出した。
チャイロは、緊張を隠しきれず、前脚で顔を洗ったりお腹をゾリゾリと舐めたり落ち着かない。
しばらくすると、リーダーはムーンとクロッチの2匹を連れてやってきた。背筋をピンと伸ばし、チャイロはリーダーの言葉を待った。
「チャイロ、お前に3丁目の喫茶店を託すにゃ」




