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追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!  作者: 奈津みかん
【4章】元聖女を追い出した元王子が謝罪に来ました。

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第92話

 私たちはスライムの核がたくさん入った袋を持って山を降りて冒険者ギルドに戻った。


「エイダン様! お帰りなさい!」


 私たちがギルドのドアを開けるより先にハンナ様がエイダン様目掛けて駆け出してくる。


「戻ったぞ、ハンナ。初めての魔物退治だったが、僕にかかればこんなものだ」


 エイダン様がじゃらりと袋の中に入ったスライムの核を見せた。


「これは、今日退治したスライムから出たものなんだ。――これを君にあげよう」


 エイダン様は別の袋からきらっと光る綺麗な核――スライム真珠(パール)を取り出してハンナ様に渡した。


 ――ちょ、ちょっと、あれ、私が見つけて別の袋に入れたやつなんですけど……っ。


「まぁ、綺麗……」


 うっとりそれを見ているハンナ様の横で呆然としている私に、ステファンが苦笑しながら囁いた。


「……あの分、報酬は僕らの取り分多くしてもらうよ。……まぁ、今日はエイダンの依頼の手伝いって形だからね」


 綺麗だからもらおうと思ってたのに……残念。


 私ははぁ、とため息をつきながらエイダン様とハンナ様を見つめた。


「それよりハンナ――、宿屋の手伝いは? 今、夕食時で食堂が忙しいだろ。何抜けてきてるんだ」

 

 人の姿に戻ってるライガが眉間に皺を寄せて聞く。


 そう――エイダン様は冒険者の仕事を、ハンナ様は宿屋の仕事をすることになったんだけど……。


 ハンナ様は痛いところを突かれた、みたいな顔になって止まった。


「エイダン様のお迎えにと思って……抜けてきたのよ」


「――女将さん、怒ると怖いぞ」


 宿屋の手伝いをすることが多いライガが実感のこもった声で言うと、ハンナ様はびくっとしてから、回れ右をしてぴゅーっと宿屋の方に向かって走って行った。


 ***


「お疲れ様。アンタたち全員揃ってるから――報酬渡すついでに、話いい?」


 ナターシャさんに呼ばれて、私たちはカウンター奥の小部屋に入った。


「――この前、キアーラについて聞きたいって言ったけど――いいかい? エイダン」


 報酬のお金を手渡しながら、ナターシャさんがエイダン様を見る。


「僕でわかることであれば、答える」


 ナターシャさんは私を見た。


「大司教はレイラを親から引き取ったって言ってたけど――、アンタはあいつが、どこからこの子を連れてきたか、何か知ってる?」


 スライム退治で疲れて、ぼんやり欠伸(あくび)していたら私の話だった……。

 私は慌てて表情を正した。エイダン様は怪訝そうな顔をしている。


「――大司教がレイラを親から引き取ったという話が嘘だと言いたいのか? 大聖堂は昔から国内外から孤児を引き取って育てて、神官にしていると聞いている。キアーラの神殿は光神教の大本山だから、国外からも参拝者は多いし――頼ってくる者もいるだろう」


 エイダン様は苦笑した。


「僕は最初、レイラは大司教の私生児だと思っていた。神殿がいつの間にか彼女に聖女の役職を与えて祀り出して――僕らはようやくそこで、レイラの存在を知ったんだ。それからも……大神殿で祈ってる姿を遠目に見るくらいで――大司教が勝手に彼女を僕の婚約者に決めやがったから、顔を見に行ってみれば――子どもじゃないか。――大司教が自分の子どもの年齢を偽って、無理やり僕の婚約者にしたんじゃないかと思ったね」


「……そんな風に思われてたんですね。初耳です」


 確かに私は神殿の外に出て王族や貴族の人と直接話す機会なんてなかったから、外から見ればそういう風に見えるかもしれない。


 ナターシャさんは腕組みをした。 


「別に嘘だってはっきり思ってるわけじゃないよ。ただ、キアーラは冒険者ギルドがないからね。内情がわからなくて。例えば――この子をどこかから買ってきた可能性はない? 魔力が強い子どもが欲しいとかでさ」


「神殿が人を買ってるだと? ――そんなことが、あるわけ……」


 エイダン様は途中で言葉を飲み込むと、しばらく黙ってから口を開いた。


「人の売買ではないが――、大神殿は多額の金を使ってるんだ。最近になって、予算の内訳を見るまで知らなかった。あいつら、国外の教会からも金をもらって独自の収入があるくせに、国の予算をたくさん使って贅沢しやがって――」


 悔しそうな表情で言ってから、私たちを見回す


「ただ、贅沢してるって言っても――式典を派手にしたり――その程度じゃない額を使ってて――、何に使っているかは父上も知らなかった。あのクソ父上、大神殿のことは大神殿に任せておけば良いの一点張りで……。あいつら、何にそんなに金をかけてるんだか」


 ナターシャさんは耳をいじりながら呟いた。


「推測でしかないけどね――大司教……怪しいんだよねえ」


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