第9話
「一件落着……ですか?」
私はステファンさんとライガの顔を見て聞いた。
二人は顔を見合わせて、「ああ」と頷いた。
「その人はどうなるんですか?」
私は縄で後ろ手に縛られているおじさんを見て聞いた。
竜の卵を売るのってそんなに悪いことなのかな……。
「冒険者ギルドに連れて行きます。キアーラ王国にはギルドはないし……、このまま目的地のマルコフ王国かな」
ステファンさんが答えて、ライガと目を合わせると、彼も「そうだな」と頷いた。
マルコフ王国、はこの街道を真っ直ぐ行ったところにあるキアーラ王国の隣国で、私のとりあえずの目的地でもあった。
そっか、目的地一緒なんだ……。
「それより、君、キアーラ王国の大神殿の聖女様って言ってなかった?」
ステファンさんが思案する私に聞く。
「――『元』です。王太子様に出て行けと言われまして、隣国まで兵士さん方に送って頂く最中だったんです」
私はそう言って、兵士さんたちを振り返った。
すると――、
「せ、聖女様、なんだか、体に力が……」
兵士さんたちが地面にへたりこんで倒れていた。
ついでに私の乗ってきた馬車の馬も足を折って休んでいる。
「か、体中の筋肉が痛くて……」
私は背筋がさーっと冷たくなる感じがした。
まさか、私が疲れてそうだと思って祈って、3日の距離を1日で完走したせい……でしょうかね、これは。
「ご、ごめんなさい……」
慌てて手を組みなおすと、祈りの呪文を唱え始める。
「私はこれから先、自分で行きますので、皆さんはお帰り下さい……女神様、我は……」
ふわっと光が兵士さんたちの上に舞い降りて、みんな次々に立ち上がった。
「ああ、元気になってきましたので、大丈夫です」
私はぶんぶんと首を振った。
「お気持ちだけで充分です。それ、あの、一時的みたいなので、家に帰ってよく休んでください……」
「そんな……」
「いえ、本当に」
そんなやり取りをしていた私たちのところに、ステファンさんが来て言った。
「マルコフ王国までなら、僕たちが彼女を送っていきますよ」
――いい人、やっぱりステファンさん、すごくいい人だぁ――




